45 地図読めねぇorz……
前世から大の苦手だった心霊現象に遭遇して一晩明けた。
「ゆき、まだわたしたちになんか憑いてたりする?」
「ううん! 誰もいないよ!」
ゆきは変わらず無邪気な笑顔。幽霊が怖くないのか?
「ただでさえ余計なことに首突っ込んでんでスよ。 まだ憑いてたら、ボクの心臓ストレスで止まっちゃいますよ!」
「あんたの心臓今すぐ止めてやろうか!?」
「ひぃぃっ! 冗談でスよ」
ゆきのことを〝余計なこと〟と言ったことが気にさわったのか、割りとガチトーンで脅した。
アヤカなら本当に実行することを考えれば、脅迫というよりは警告だろう。
「それで本当にどうするんでスか? もう行くところないでスよ?」
「ツテならあるわよ。 国外に行けばいいの」
「国外って………。 ここが唯一の国なのに?」
火の本の人間は海外に行ったことがない。当然だ。
世界最速の生き物であるドラゴンでさえ、この大陸に来るのには何週間もかかるのだから。
外の世界とは通信も移動の手段もないこの大陸育ちには、この統一国だけが居場所なのだから。
「あるわよ。 海の外の世界。 わたしの世界まで行けばいい」
「海の外の大陸なんて、そんなのただの迷信じゃないでスか?! 子供だってそんなの作り話だって知ってるっスよ!」
「じゃあわたしの雷鳴拳の力はどこで鍛えたと思うの? そもそもわたしはエルフなんだけど。 この大陸にはいないはずのね」
「姉御のその耳はただの趣味悪いだけの気持ち悪いつけ耳じゃ………」
「てめぇ殺すぞ」
エルフの特徴的な耳をさらっとディスられ、ついでにファッションセンスもディスられて黙ってるほど、女を捨てていなかったアヤカは指を鳴らして威嚇する。
口は笑ってるが、目は笑ってない。というか据わってる。
「さーせんでした!!」
いつか幼なじみのくそったれパツキン爆乳エルフが見せたダイナミック土下座を披露されてようやくアヤカの心は均衡を取り戻した。
「ねえアヤカおねーちゃん! ゆきもおねーちゃんの国にいきたいなー」
「いいわよ。 一緒に行きましょ…………あっ」
「あっ、てなんでスか。あっ、て」
そういや、足役のあいつはどこに行ったっけ?
自分から迷子になったことを棚上げして、アヤカはミステリアのありもしない非を責める17歳児がそこにいた。
「わたしの足、失くなってたんだった」
ミステリアがいなきゃ火の元からも出られない。
ついでに帰る道も、アホのアヤカにはわからない。
だって地図なんて読めないんだから。
そもそも、この国の文字や記号など外国人のアヤカには知らぬ存ぜぬだ。アヤネとゆきに読んで貰おうにも、彼女たちも教育を受けていないから期待できない。
「じゃあダメじゃないでスか!!」
おバカトリオ三人娘の逃亡劇は続くのだった。




