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伝説の女武術家が美少女エルフに転生したらこうなる  作者: コインチョコ
四章 日の国
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44 逃亡劇再び

久しぶりすぎて急展開連発しすぎて急展開のマシンガン状態です。


「で、マジで連れてきちゃったっスね」


「わたしは嘘も冗談も言わないから」


「お菓子おいしい」


ボロい宿屋の部屋。 窓からこっそり出ていって、窓からこっそり戻ったから店の者には怪しまれてはいないだろうが、泊めた覚えのない子供(ゆき)がいたら即通報ものだ。


ゆきはアヤカが与えた羊羹を四苦八苦しつつも爪楊枝で突き刺して食べている。


どうやら今まで、爪楊枝など使ったこともないらしい。


どこに刺せばいいのかも分からず、羊羹をオモチャにして穴だらけにしてる。


「こらこら、食べ物はオモチャじゃないわよ。 ほら、お茶も飲んでね。 美味しいから」


「んー! んまいぞー!」


「姉御はすっかりこの子にぞっこんのようでスしね」


ミステリアが見たら「誰じゃお主」と言いそうなほど、いっそキャラ崩壊的なレベルで献身的に尽くすアヤカなど、もはや天然記念物のイリオモテヤマネコにお目にかかれるよりも貴重なことだ。

ただし、茶化した瞬間に雷鳴拳の奥義が雷速で飛んでくるだろう。


「しかもお金もないし、食いぶちが増えたし…………姉御キモいし」


「死ね!!」


キレたアヤカによってぶん投げられ、壁に突っ込んで気絶するアヤネ。

最後は聞こえぬように小声で言ったつもりだったが、アヤカの耳にはしっかり聞こえていた。


耳のいいエルフでも特に五感の鋭いアヤカの前では、そんな陰口は面と向かって言うの大差ない。


「おねーちゃん強ーい!」


「まあ、これからのことはおねーちゃんに任せておきなさい」


ゆきはアヤカの強さに大興奮だった。壁に埋められたアヤネには眼もくれない辺り、この歳にしてドSの才能がある。恐ろしいことに。


誰かが扉をノックする。かなり乱暴で、ドアを壊しかねないほど強い。


「出てこい人浚いめ! いるのは分かってるぞ!!」


男の怒鳴り声もする。というか、昨日の今日でもう居場所が割れたのか。嘘だろ。


都の警ら隊は前世の警察並みに優秀な捜査能力を持っているようだ。


「アヤネ、起きろ!」


「ぐっふぅ!?」


まだ寝てるアヤネの腹を蹴って起こす。

寝かせたのもこいつだが、そんなことは今どうでもいい。


「速く荷物を纏めなさい! わたしが時間を稼ぐ、いや! 倒す!!」


扉が破られるよりも先に、内側からアヤカが殴り砕く。


生身の拳が空気を膨張させて真空を発生させ、その後、また周囲の空気を人や物までまとめて引き寄せる。


警ら隊からすれば、正体不明の爆発に吹っ飛ばされた直後にまた引き寄せられたものだ。しかも抗いようがないパワーで。


それを行ったのが一人の少女の力だとは、到底信じられないことだろう。


彼らは自分の身になにが起こったのかも理解できずにアヤカの鉄拳で完全にノックアウトされた。


この流れで部屋中に砕けた木片が飛び散ったが、ゆき()()はアヤカがガードして守った。他の連中など知らん。


「これでよし。 はやく行くわよ!」


「姉御もうやること滅茶苦茶じゃないっスか!? もうボクら都には居られませんよ!?」


「いいから速く来なさい! 置いてくぞ!」


ゆきを抱いて窓から飛び出すアヤカを追いかけるアヤネ。


「待ってくださいよ~」


ちゃっかり警ら隊の財布をくすねていく辺り、彼女は生粋のこそ泥だ。





逃走中に馬を盗んでさらに罪を重ねたクライムガールズは、山中やら森やら渓谷やらでカーチェイスならぬホースチェイスを繰り広げ、最終的には飽きたアヤカが雷気で敵全員を感電させて痺れているうちに、なんとか逃げ切れたとか、なんとか。



そんなアクション映画劇場はさておき、盗んだ馬を走らせること一日。


都からはかなり離れたし、民家もろくにない辺鄙な場所にたどり着いた。


ボロボロで今にも壊れそうな家屋が立ち並ぶその土地は、廃村と言うべき不気味な雰囲気を匂わせていた。


時間帯が夜なのもあり、アヤネは一刻も速くこの場所を去りたかった。


「ねえ姉御? もう行きませんか? ここなんか変ですよ?」


「そうねぇ。 なにか気持ち悪い〝気〟が漂ってるし」


「ねぇねぇおねえちゃん! あそこの人にきいてみようよ!」


アヤカもそれには賛成だった。

前世と今生で鍛えられた超人的な勘と、修行によって磨かれた神秘的感覚が『ここから速く出ていけ!』と叫んでいた。


そして、ゆきが指さす場所には誰もいない。廃村だから当然だ。


「え? え?? この子は急にどうしちゃったの? アヤネ、あんたなにかしたの!?」


「ボクなにも言ってませんよ! やっぱここヤバいでスって!」


アクション映画の次は急にホラームービーチックな展開になってきた。


ゆきはあれか? 妖精の友達でもいるのだろうか?


「ねえ、ゆき? あなたは妖精のお友達と喋ってるんでしょ。 そうだよね? そうだと言って、言ってくださいお願いだから」


幽霊とか、悪霊とかが怖くて拳法家も旅人も務まらないが、やはり感じるのに見えない相手への嫌悪感や恐怖は拭えない。


「ううん。 だって、いっぱい血を流してて痛そうだもん。 お薬がひつようかな? みんな、いたいいたい、って言ってるよ!」


想像以上に怖い。


「「……………………失礼しました!!!」」


アヤカとアヤネは自分の乗っている馬を逆向きにして走らせる。


とにかくここから離れないとヤバいという意見は一致していたので、とにかく逃げる。


背中を向けると、ゾクッと背筋に悪寒が走る。全身が泡立ち、鳥肌と正体不明の恐怖がアヤネの心を支配した。

なにかがいる。

隣のアヤカに助けを求めようにも、声すら出せない。

出せたところでアヤカも同じ状態だから助けるのは無理だ。


妖怪や悪霊なんぞ比にならんほどの、なにかがいるのだ。


「おんてきたいさーん!」


パニックを起こしそうだったが、そうなる前にゆきが指を組んで、なにかした。なにかの術の印を結んだようだ。


すると気配は去り、悪寒が消え、恐怖が無くなった。


警ら隊とのホースチェイスなら遊び、楽しむ余裕があった二人でも、さすがにこれは怖かったらしく、顔を強ばらせて朝まで必死に逃げたのだった。


そして落ち延びた村に身を隠した。当座の金はある。

村社会にありがちな閉鎖的な村だったが、私物の酒と力自慢のアヤカとコミュ力抜群のアヤネはあっという間に信頼を得ることができた。ゆきも同世代の子どもたちと上手くやっている。


……………ゆきは一体なんなんだ。もしかして、これが軟禁されていた理由なのだろうか?


アヤカとアヤネは川で無邪気に遊ぶゆきを見守りながらも、ゆきの正体不明の能力と、あの廃村のなにかの関係を考えていた。











アクションだといつも最後にアヤカ無双で単調なので、今回はホラー風味を加えることにしてみました。

書いてて少しだけ後ろが気になった。

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