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伝説の女武術家が美少女エルフに転生したらこうなる  作者: コインチョコ
四章 日の国
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42 ニシノミヤコ探索



石や雑草を取り除かれ、丁寧に平らに舗装された土の地面の通りを歩くアヤカの横では、アヤネが身ぶり手振りを交えて都の説明をする。


「この町は将軍のお膝元で、武装した武士が常に警らしているんでスよ。 この町では犯罪が少ないのはこれが理由でスね。

僕みたいな盗賊にとっては嫌な町でスよ! なにせ、ここの質屋は明らかな盗品は絶対に買ってくれやしないんでスから!

全く、僕が住んでた掃き溜めだったらそんなみみっちいことしなかったのに! それもこれもあのノブナガとか言う堅物がいけないんだ!! この!この!」


「そうなんだ。 わたしには窮屈な場所ね」


町の説明がだんだん為政者への愚痴に変わり、アヤネが通りにある茶屋の旗に八つ当たりにキックし始める。


「(ん? ノブナガってあの織田家の?)」


アヤカはそれについては無関心だったが、将軍の名前に関心が湧いた。

スラム出身の無知無学を地で行くアヤカでも、元日本人なら言わずに知られた名前だ。


アヤネが街中で始まった奇行に、当然人目は集まる。

そして昼間ということもあり、その旗を挿すお店は開いている。


「なにやってんだてめえコラァァァ!!!」


「ぴゃあああああ!!!」


「ひぃ!!」


激怒した店主に追い出されるのは必然。

アヤネは悲鳴を上げて逃げ出し、考え事に夢中だったアヤカですら店主の怒号に一瞬で現実に引き戻されて怯んだ。


「待てやてめぇぇぇ!!」


「来ないでぇぇぇ!」


二人の楽しい鬼ごっこをお天道様が暖かく見守る春先の出来事だった。


アヤカは我関せずと座って、勝手に淹れた茶屋のお茶を啜っていた。


「うん、美味い!」


これまた十数年ぶりに飲むお茶の味と香りを楽しむのだった。


「姉御ぉぉぉ!! 助けてくださぁぁぁい!!」


「てめえ、うちの看板蹴っ飛ばしといて生きて帰れると思うなよ!!」


ナモナキ村を思い出す長閑な午後だった。





アヤネが火事場の底力を出してなんとか店主から逃げ切り、路地裏のゴミ箱に身を潜めてから店主は怒り心頭と言った顔で帰ってきた。


禿げ上がった頭から湯気が出そうなほど顔は真っ赤だ。


その顔がゆでダコのようで、アヤカは吹き出しそうになるが、太腿を全力でつねってなんとかこらえた。


力を籠めすぎてつねった場所が内出血を起こしてアザが出来たが、どうせあと数分もしないうちに回復するのだ。構うものか。


店主が「おう、ゆっくりしていきな!」と気さくに声をかけてから店の奥に消えていくのを見送り、ようやくアヤカは腹を抱えて笑いだした。


「アハハハハハハ!!! 今の顔、面白すぎでしょ! それにアヤネと鬼ごっこって! しかも逃がしてるし!」


思い出すだけでおかしいのか、腹筋がよじれそうなほど笑っている。笑いすぎてもう声が出せてない。


補足させてもらうと、アヤカが店主の前で笑いを我慢していたのは、本人の目の前で笑うのは失礼という、極めて常識的な感性・モラルから来たものではない。人間としての心が欠落しているアヤカにそんな精神構造はないのだから。

ならば、なぜ笑うのを堪えていたかと言えば、口の中にお茶があったから。

それだけだ。


「店主さーん、お団子くださーい!」


「はいよ! ちょっと待ちな!」


アヤネのことを完全にスルーして、アヤネの言っていた『ノブナガ』のことも忘却の彼方へと追いやり、アヤカはマイペースに美味しい食べ物を味わうのだった。

お金なら山賊から奪ったお金がいくらでもある。

当分の旅費にはなるだろう。


「あと注文表のここからここまで、全部十個ずつね」


「……食いきれんのか?」


無駄遣いしなければの話だが。







「アヤカ殿はどこまで行ってしまったのだろうな?」


「さあ? 僕らよりもずーーっと足が速いみたいだからね」


アヤカがお茶を啜ってたいた頃、ミステリアと森林竜はアヤカと合流すべく、その足取りを追っていた。


緑髪の幼児を連れているミステリアは傍目には親子にしか見えない。実際は旧知の友だが。


「匂いからして、この方角に進んだことに間違いはないのだがな」


「僕も感じるよ! こっちから強い波動をね!」


ミステリアは匂いを、森林竜はアヤカの〝気〟の波動を知覚して居場所を探り当てていた。

かなり遠くにいるのは分かったが、遠すぎて正確な居場所が分からん。


「このたった二時間弱でどんだけ遠くにいったのさ」


「それがアヤカ殿のスピードじゃ。 強すぎて引くじゃろ?」


「でもけっこーおバ………頭を使うのはそんなに得意そうじゃなかったよね」


「まあそれで釣り合いはとれてるじゃろう」


本人の目の前で話したら問答無用で拳の雨が飛んでくる話をしながら歩いていると、倒れている男たちと出会った。


なぜか全員追い剥ぎにでもあったかのように服や武器などを盗られていた。


「うぅ……死ぬ……」


「おい、どうしたのじゃ? しっかりせい」


「聞こえますかー? もしもーし?」


まだ息があった男がいたのでミステリアが助け起こし、森林竜が治癒魔法(ヒール)をかけて傷を治す。


状況からして犯人はアヤカのようだし、なにか行き先について聞き出せるかも。


「お主、この傷は誰にやられた?」


「あの金髪のクソ女さ。 クソ! あいつ、急に俺の仲間を殺しやがって!」


もちろん嘘だ。アヤカが仲間を殺したのは事実だが、襲いかかったのは彼らだ。

アヤカがやったことは過剰防衛だが、少なくともアヤカだけが責められる謂れはない。


それはミステリアも察していたが、敢えて騙されてやることにした。

ただ追いかけるのも退屈だし、どうせアヤカだって楽しんでいるに違いない。

どうせなら、自分もこの哀れな盗賊を使って楽しもうと。


「ほう、それは気の毒じゃのう。 その女がどこへ消えたか案内してくれぬか?」


「へ? でも僕たちだけのほうが……むがっ!」


ミステリアは冷静に余計なことを言いそうになった森林竜の口を塞ぐ。


「要らぬことを言う悪い口は塞いでしまおうな~」


「(僕の口は悪くないもん!!)」


盗賊は気にする様子もなく、「おう、着いてこいよ」と歩きだした。


「(この人のペースに合わせてたらアヤカちゃんと合流するまで何週間もかかるよ? いいの?)」


「(よいよい。 アヤカ殿一人では色々と心配だが、まあ、死ぬようなことは無いじゃろうて)」


この二人も二人で、ぶらりとしたのんびり旅を決めるのだった。



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