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伝説の女武術家が美少女エルフに転生したらこうなる  作者: コインチョコ
二章 御令嬢ラン・ゴールドシュミット
24/58

22 そしてアヤカは街を去る



アヤカがエルフガイムに来てから一週間が経過した。


この街の食は十分堪能したし、ランという心強い新たな友人も得た。


心のなかでは、この街でやることはやりつくした………という気がする。


「この街にももう用はないわね」


夜の風景も美しいし、食べ物も美味しいし、道行く人もエルフも皆気立てのいい者ばかりだったが、ここはアヤカにとっては平和過ぎた。


前世から受け継いだ魂のせいで本能で血と闘争を好む好戦的な戦闘狂(アヤカ)にとって、争いの種が駆逐されたこの街は好ましくなかった。


ドラゴンであるミステリアもその点は同類だった。


「私も速くこの街を出て強いやつらと戦いたいぞ」というのがミステリアの主張だ。


そして、それはアヤカの主張でもある。


「そうね。 速く出ましょう。 ランに見つかる前に」


ランはアヤカたちがこの街を出ようとすると、毎回必ず見つけて抗議してくる。


居候している身としては、家主の言うことにはなかなか逆らい難かった。


彼女は見張っているのか、それとも偶然出会っただけなのか。


アヤカは視線や気配には敏感だ。


だから、見張っているなら必ず気がつく。


ランの意地と根性が成す偶然だとアヤカはにらんでいるが、真実は闇のなかだ。そんな真実どうでもいいが。


「今は朝早いからね、今ならランも寝てるわ」


「そうだな。 今のうちに速く行こう」


身支度を整えた二人は誰にも見つからぬよう、気配を殺して屋敷を出ていく。


時刻は日が顔を出した頃合いだ。


この街だって眠りについている時間だ。


人で賑わう場所がこうも静か賑わうなっていると、不気味な気もしてくる。


街門まで、誰ともすれ違うこともしなかった。


「エルフガイムを出るんですか?」


「そうよ。 手続きをしたいの」


マフィアを引き渡す一貫で顔見知りとなった守衛と言葉を交わす。


寝ずの晩だったのか、彼はかなり眠そうだ。


「はいここに判を押してくれればそれで手続きは完了だから」


「はい完了っと」


ランには内緒で外出の処理を終えた二人は、そのまま街を出ていった。


もう二度と……ではないが、しばらくは戻ってこないつもりだ。


次にこの街に寄るのは一年後か、十年後か、それとも百年先か。


それは当のアヤカたち本人にも分からない。



街を出てしばらくは歩き、街が見えなくなるほど遠くまで来たらミステリアに変身してもらって空を飛んだ。


雷鳴拳でも空を飛ぶ奥義はないので、アヤカは自由に空を飛べるミステリアが羨ましかった。


「それで、次はどこへ行くのじゃ?」


そうだなー、とアヤカは考える。

お腹を満たしたら、次は戦いが欲しくなった。


そうだ。確か、ミステリアは古竜だった。


伝説によれば、古竜同士は目には見えないなにかで繋がりがあるとか言われていたことを思い出した。


「ねえ、他のエルダードラゴンの居場所って分かる?」


「わ、分かるがどうするつもりだ? まさか………!?」


「そう、そのまさかよ」


他の古竜を倒しに行く!!


アヤカの旅の最初の目標は竜退治だった。


座り心地の悪い鉄の背中の上で、その目的を果たしてやると意気込んでいた。


「ならば、まずは大陸を越えた東の果てにある人間の国に行こう。 そこには〝森林竜〟の奴がいる」


「森林竜………。 青金竜のことね」


「そうじゃ」


青金竜。別名〝森林竜(グリーンドラゴン)〟。


体が青金で出来ている鉛の竜で、緑を操る力を持つとされている伝説の五体の古竜種の一体。


青いのに別名が緑なのは、彼、もしくは彼女の魔法が自然の植物、昆虫、動物を操ることからきている。


争いや血を好む古竜としては比較的穏やかな気性で、日向ぼっこを好む習性があるとか。


アヤカは知らないがハイマンズ王国の歴史書では唯一、人と共に暮らしていた記録が残っており、人を愛し、平和に生きている竜だ。


「でも、戦うと言っても手合わせ程度の話だろう?」


「そうよ? まさかお命ちょうだいとでも言うと思ってたの?」


「ま、まぁな」


アヤカなら言い出しかねないとミステリアは思ったが、流石にそこら辺の良識や分別はあったようで安心した。


「だが、一つ問題がある」


「なに?」


「東側の国ではエルフやドワーフのような亜人は存在しない土地で、人間一強の世界だ。 お主とてエルフの一人だろう? 謂われもない迫害を受けるかも知れんぞ」


「なら全員潰すだけよ」


「そうこなくてはな!」


アヤカはエルフである以前に一人の戦士だ。


そこに戦いがあるなら戦うだけだ。


武道家として、殺法家として、戦士として、立ちはだかるものは全て蹴散らす。


その果てにこの身が朽ち果てようと受け入れる覚悟は雷鳴拳を学んだ瞬間からとっくに出来ている。


ならば進むだけだ。


世界の果てへ、地獄の底まで。


「ならば行こうか。世界の果ての国、〝日の国〟へ!」














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