20 裏組織壊滅
「ほら、とっとけ歩け!」
「痛てっ! 蹴るなよ! 案内してるだろ!」
「アヤカ殿には敬語を使え、殺すぞ」
「殺すのはやりすぎなのでは?」
アヤカ、ミステリア、ランの三人は置き去りにされた男たちをビンタで叩き起こして連れ回し、アジトまで案内させようとしていた。
アヤカとミステリアではどんなに手加減しても首や顔面の骨をへし折る危険があったので、ビンタはランにやってもらった。
令嬢に叩かれて「ありがとうございます!」と目覚めた変態もいたという。
案内役の男が街の外れで足を止める。
「ここが入り口だ」
「え? ここって………」
「………わたくし帰ってもよろしいでしょうか?」
「待て、お主もいろ。 守るのはその方が都合がいい」
彼女らが突入を躊躇っているのは、アジトまでの入り口が問題なのだ。
「まさか、ホントに下水道とはね………」
アヤカの言った通り、その道は地下の下水にあった。
入り口は街の外れにある汚水処理場の近くだ。
本来の出入り口は路地裏のマンホールとかだったらしいが、そこからの出入りはアヤカたちが全力で拒否った。
「このお嬢様の親父のせいで、俺たちは地下に追いやられたんだ」
反社会勢力をここまで衰退させるランの父親はかなり遣り手のようだ。
そこにドラゴンのミステリアとドラゴン以上のアヤカが加わることで、もはやいじめを通り越してリンチになっている。
彼らが何をやったというのか。
今まで悪いことをしてきた。
「じゃ、じゃあ、気を改めて行くわよ」
汚水と匂いに若干ビビりながらも、アヤカは先陣を切って突入する。
ミステリアとアヤカは感覚も超人だ。
人の数千、数万倍もの嗅覚で、不快感に耐えて進む。
ミステリアの魔法は戦闘にのみ特化していたので、消臭とかは出来なかった。
「楽しんでる場合じゃないわね………」
「速く終わらせて帰るのじゃ…………」
見るからにテンションも落ちている。
アジトにいる裏の連中は不幸にも金髪と黒髪の美少女美女の手によって全滅することが確定しているが、幸いなことに一瞬で片付けてもらえることも確定した。
男が分厚そうな金属の扉の前で足を止める。
「ここだ……です」
「よし、お主は帰ってよいぞ。 どうせなにもできぬじゃろう?」
「は、はい!」
ミステリアが男の首根っこを離して自由にしてやると、男は逃げるが勝ちだと言わんばかりに逃げていった。
「わたしが突入するから、ミステリアは逃げようとする奴らを好きにして」
「了解じゃ」
その背中を見送り、アヤカは金属の扉を思いっきり殴り飛ばす。
分厚い合金のひしゃげる音。
蝶番がぶっ飛び、扉は変形しながら石造りの壁に激突して壁と天井の一部が崩れて埃が舞う。
一人が扉の前にいたので扉に押し潰されて倒された。
死んではいないようだが、もう戦えない。
「なんだ?!」
「侵入者だ殺せ!」
「殺されるのはあんたらだ、このボケ」
埃の煙が晴れる前に、高速で突入したアヤカが一人の胸を掌底打ちする。
本気だったら心臓を破壊しかねない一撃だったが、アヤカの手加減のおかげで気絶ですんだ。
「ランの言うとおり、殺すのはやりすぎだったからね。 あんたらみたいなのがいくら集まってもどーせ塵芥だしね」
「ナメやがって!!」
激昂する数十人はいるだろう男たち。
手には全員が刃物を持っている。
「ナメてるわよ。 ナメまくってるわよ? ま、アイスクリーム以外はナメたくないんだけどね」
口を開けば煽りの言葉。
そんな余裕綽々なアヤカの態度に、男たちはますます怒り狂う。
「殺………」
「もう勝負着いてるから」
アヤカの姿が一瞬ぶれる。
次の瞬間、全員が大気と汚水を通して雷気に感電する。
黒焦げとなって気絶した男たちをロープで縛って引きずりながら出口に向かうアヤカ。
ミステリアの方には何人かが逃げていたらしく、気を失っている男たちがミステリアの尻に文字通り敷かれていた。
なぜかランも勝ち誇っている様子で胸を張っている。
「わたくしも一人だけやっつけましたのよ!」
「そう、偉いわね」
ほめて欲しそうだったので、素直にほめてあげるアヤカだった。




