19 アヤカの蹂躙
「アハハハハハ!! 弱すぎでしょー!」
「くっ、クソが!」
邪気のシャワーをたっぷり浴びて元気に復活したアヤカは現在、縦横無尽の蹂躙劇を見せつけていた。
小脇にランを抱えたまま男たちの目の前で意味もなく高速反復横飛びまでして挑発する。
動きがキレ過ぎて無数の残像が見えている。
ちなみにランは嘔吐した。
「ほら、一発だ!」
瞬間移動ばりの速度と鉄よりも硬いアヤカの拳が大男のみぞおちを撃ち抜く。
衝撃は背中まで貫通し、鎧通しの要領で余計な力を逃がしてやることで本気の一撃でも殺さずに仕留めることを可能としていた。
大男は声もなく伏せる。
うめき声などあげる暇もなく意識を刈り取られたからだ。
「バルクがやられた!」
「怯むな! 数で押し潰せ!」
最高戦力が倒されたことで動揺する男。
リーダーの男が彼らを鼓舞して指揮をとる。
「右脇は空いてるんだ。 こいつは無視してターゲットを狙え!」
男たちの狙いはランだ。ランさえ殺せればアヤカを倒せなくても目標は果たせる。
ターゲットが自分から自分の脇で吐いてるランに移るのはアヤカとしては予想外のことで、面白くないことだった。
「(チッ、うぜえ)」
遊んでくれないなら終わらせてやる。
ヤンキーのような内なる部分を心の奥に引っ込めてといて、アヤカは〝気〟を練る。
心臓から体内の血管を通して充実した〝気〟がアヤカの細胞を満たす。
「わたしを狙わないと………潰す」
ドッッ!!と灼熱のオーラを滾らせて男たちを威嚇する。
〝気〟とにらみにあてられた男たちは白目を向いて気絶した。
気を失って倒れてるバルクとかいう大男すらアヤカの〝気〟にあてられてびくんびくん痙攣してる。きもい。
「に、逃げるぞ」
「えっ?」
本能的に勝てないと悟ったリーダーはアヤカ顔負けの速さで一人だけ撤退していった。バルクや他の男は置いていかれた。
「………おい!」
にらんだだけで敵を怯ませたと言えば聞こえはいいが、アヤカは戦いたかっただけだ。
本気を出して威嚇した結果、残念なことになってしまったのは御愁傷様としか言えない。
ともあれ、今のでミステリアもアヤカの居場所を知っただろうから、アヤカの元にすぐに駆けつけてくるだろう。
「ここで待つわ。 わたしの仲間がくる」
「ランさまの仲間ですか。 挨拶しておきたいです」
自分の育ちが悪いからか、アヤカは行儀の良すぎる奴は苦手だと思いつつ、待った。
迎えはすぐにきた。
「アヤカ殿~。 今のはなにがあったのじゃ?」
「ま、色々あってこの子を守ってたのよ」
「ほほう。 ………浮気か?」
「浮気?!」
大量の食べ物を抱えて能天気に駆けつけてきたミステリアはアヤカの浮気にずいぶん立腹しているようだ。
食べ物をかなぐり捨ててアヤカに詰め寄る。
浮気じゃないと言い張るアヤカ。
「わたしは戦いたかっただけだからさ」
そう言われると、ミステリアはなにも言えなくなる。
「(こいつ頭ドラゴンじゃ)」
ドラゴンであるミステリアにすら罵倒されてるのかよく分からないことを思われる。
アヤカが聞けば褒め言葉だと思うだろうが、バトルジャンキー脳だと言われているだけだ。
「あの、アヤカさま。 この方はどうします?」
「あ、こいつを叩き起こしてアジトまで行こうと思ってるんだけど、あんたもくる?」
「いくのじゃ!」
世界最強レベルのミステリアと、そのミステリア以上のアヤカのコンビが裏社会に牙を向けた。
裏組織終了のお知らせ開始だ。




