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伝説の女武術家が美少女エルフに転生したらこうなる  作者: コインチョコ
一章 黒鉄竜編
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10 旅立ちの時


起動用魔力が充填し終わり、黒金竜は仰々しい仕草をして高々と叫ぶ。

絶世の美女なだけに、芝居がかった仕草もなかなか様になる。


「刮目してみろ! 光のアートが見られるぞ!」


伝説の古竜(エルダー・ドラゴン)種の一体をして「刮目せよ」との言葉。


アヤカも珍しくワクワクした様子だ。


「それは良いわね。 面白そう」


スタローン姉弟にもアヤカと同じ気持ちが伝わっていく。


「なになに? なにが始まるの?」


「面白そうだな!」


「ふっふっふっ。 一秒たりとも見逃すな。 この私の光のアートを! 来い!! 雲よ!」


黒金竜が召喚した分厚い雨雲で空が暗くなり、夜のように暗い曇天となる。

光のアートを見るならば、これ以上ない天候だ。


急激な天候の変化に村人たちが「なんだ、なんだ」と家から出てくる。


彼らも光を目撃するだろう。


「準備は整った! では起動だ!!」


幾何学模様の魔法陣が淡く、青い幻想的な光を帯びる。

暗い空に淡い光を放つ魔法文字(ルーン)が空中を飛び交うのは、アヤカが前世で見たホタルの群れのように美しかった。


「………綺麗ね」


アヤカの期待度も否応なしに高まり、これから起こることに期待の眼差しを向ける。


「第一、第二魔法障壁展開せよ!」


ブオン!とホログラムのように立体的になった魔法陣がナモナキ村の周囲を二重に覆い被さり、外側は赤、と内側は青の光が点滅しながら回転し、赤と青の軌跡を描く。

赤がモンスター避けの障壁。青が天災避けの障壁だ。


ナモナキ村全土を包む光のアートの美しい光景に、村中の人々が歓喜する。


「なんですか、これ! 綺麗すぎです!」


シスターに至っては感動で涙さえ流している。


「あ、あのドラゴンの姉ちゃんだ! あの姉ちゃんがやってるんじゃねーの!」


孤児院の子供の一人が黒金竜を指差す。

村中の視線が黒金竜の背中に集まり、彼女はどこか気まずそうに作業に没頭する。


「次じゃ! 第三陣、展開!」


最終層は、ルーンだけで構成された魔法陣だった。

それは金色に輝き、稲妻のようにスパークしている。


「お主から承った雷気の力。 ここで解放するぞ」


壮大なショーの終わりが始まる。


「ゆけい!! 大気中の魔力を集めるのだ!」


金色のルーンは全てが崩壊していく。

それは赤と青の魔法陣へと溶けるように消えていき、魔法陣に金色の上品な装飾を施す。


そして次第に光は消え、また曇天の闇が戻ってきた。


「これで最後なの?」


「あぁ、終わりだ」


「ふう」と一息ついた黒金竜からは少しだけ鉄の匂いがした。


「綺麗だった~~!! 素晴らしいです!! あなたは最高です! あなたなんなんですか?! ドラゴンて最高(さいっこ~)!!」


黒金竜の手を無理矢理つかんで握手して興奮のままにぶんぶんと振り回すジル。


「ジル、やめなさいよ。 黒金竜もちょっと疲れてるみたいだからさ」


「あっこれは失礼しました!」


パッと手を離すジル。次に古竜相手への無礼に顔を青くして身を震わせた。


「すいませんっしたーー!」


抜群の運動神経でクルリと宙返りして、華麗なジャンピング土下座を決める。


「お主にはアヤカのことを知らせてもらった。 このくらい良い、許す」


「ハハー、寛大なお心に感謝します!」


アヤカはこのやり取りを見てこう思った。


「おいおい。 時代劇かよ」


思えばジルは商人の卵だった。案外、悪代官に媚びるたちの悪い商人とかが似合うかもしれない。

そして、最後には将軍さまとか、黄色い門の人とかに成敗されるのだ。


などと親友で失礼な妄想を膨らませていると、黒金竜とジルの寸劇も終わっていた。


「アヤカよ。 これでお主の心配ごとは消えたな。 私と共に旅に出ようぞ!」


「うん。 そうするわ」


だがそこに待ったをかける者がいる。


「あたしは認めないよ!」


「俺もだぜ!アヤカ姉ちゃん!」


なんだなんだと集まってきた村人たちも、事情を察したらしく口々にアヤカを説得しようと試みる。


「アヤカちゃん、せめてお婆ちゃんが死ぬまで待っててくれないかい?」


「私、まだアヤカちゃんになんのお礼も出来てないんですよ!」


「それに危険が大きすぎる! 死んじゃうかもしれないんだよ!」


「この村の華も無くなっちまうしな」


「ちょっと、ここにジルちゃんがいるんですけど!」


村人たちはアヤカを求めていた。心配もしてた。

しかし、当のアヤカは「私愛されてる」とか能天気なことは思わない。


むしろ、なんとかしてこの過保護な村人たちから逃げ切り、冒険の旅に出たいとさえ思っていた。


「お主、案外愛されてるな」


「案外ってなによ!」


「そりゃあ、あんな森に一人で暮らしていればのぅ………」


この村人たちをなんとか逆説得し、説き伏せる言葉を考えるが、思いつかない。


なんも思い付かない!!


「こうなったら仕方ないわね………」


「はー」とデカいため息をつくアヤカに、村人たちは納得してくれたと顔を綻ばせる。

安心したのも束の間のことだった。

アヤカは黒金竜に命令する。


「黒金竜!変身しなさい!」


「了解じゃ!」


アヤカの思考パターンを読んでいたらしい黒金竜は空に向けて大きなジャンプ! 一瞬のうちに変身する。


その背中に軽く飛び乗り、アヤカは村人たちに伝える。


「みんなー!! しばらくは帰ってこないからねーー!!」


「「「「行かないでーーー!!!」」」」


「ばいばーい!!」


アヤカを乗せた黒金竜は颯爽と風を切って飛び去っていく。


村人たちの姿を豆粒よりも小さくなっていき、最後にはアヤカの視力をしても見えなくなってしまった。


誰も追いかけては来ない。というか、追いかけられない。


竜の背中は硬い上に激しく動くので以外と居心地が悪く、動きの少ない首の後ろにアヤカは腰をおろした。

それでも、空を飛べるだけで車や馬よりもずっといい乗り物だと思った。

鉄の冷たさと竜の体温が混じった奇妙な感覚が無性に癖になる。


『これで良かったのか?』


「良いのよ。 私が選んだ道だもの」


『あんな去りかたをしてしまえば、お主、しばらくは帰れんな』


クククと笑う黒金竜。


そう言えば、とアヤカは切り出す。


「あんた、名前はあるの? いつまでも黒金竜じゃ呼びづらいし、いらんトラブルとか持ってきそうじゃない?」


『確かにな。 だが、我々古竜には名前がない。 我々は天地開闢以前の文字も言葉もない時代に鉱物と天災から生まれた原初の竜だからな』


「なんかムダに壮大な話ね………」


『竜の伝説とはそういうものじゃ』


黒金竜がどれだけ年を取っているのか興味がわいたアヤカだが、空の上にいる今、それを聞いたら振り落とされる気がしたので聞かないことにした。


女性はいくつになっても乙女。それでいいのだ。


しばらく頭を捻って無い知恵を絞り、黒金竜の名前を考えていたアヤカだったが、ピン!と閃いた。


「あんたの名前は〝クロ〟にしよう! 理由は黒金竜だから。 それでいいでしょ」


『お主、私を犬かなにかと勘違いしとらぬか?』


「気に入らないのね。 残念」


『ま、名前はおいおい考えていくとしようか』


そんなことよりも、遠くの方に街が見えてきたことの方が今の二人には大切な話だった。


「思ったよりも速かったわね」


『そうだ! 私は風を操る竜でもあるのだからな。 嵐と暴風を味方にするなど容易いわ』


「で、あの街の名前は?」


『む、無視だと………』


自慢話を華麗にスルーされて、黒金竜は軽くショックを受けたが、アヤカに頭を小突かれて「はよ言え」と急かされる。


『エルフのお主が知らんのに、私が知るわけ無いだろう?』


とごもっともなことを返された。


着いてみてからのお楽しみということだ。

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