薄闇に飛ぶ影
フィクションやファンタジーでは良く出てくるが、全く実在しない、または実在する物の方は一気に迫力と言うかグレードが落ちてしまうモンスターは結構ある。
スライムはかなり酷いと思っていて、DQのスライムなどは完全にマスコットのようになってしまっている。DQのスライムと言えば、某人が、スライムをキモチワルイなんていう人はいないヨー、と嬌声を上げながらDQに興じる姿を何とも言えない気持ちで眺めていたのを思い出してしまう。
元来スライムはダンジョンに潜む得体の知れないモンスターで、溶解液や毒液を冒険者に吹きかけてきたり、装備や身体を溶かして吸収してしまうという、気持ち悪いを通り越して、シュールで無機質な感じの存在だ。現実で言えば巨大アメーバーやマクロファージみたいな化け物だろう。まあDQの方のスライムはRPGのスライムというよりも、いわゆるゲル状のオモチャのスライムの方を起源にしているのかもしれない。あれを適当な形に固めたヌイグルミみたいな感じだ。多分形はあの橋の欄干にのっている奴をパクッたんだと思う。
実際DQのスライムは溶解液を吹きかけてもこないし、体当たりが基本攻撃になっている。そういう意味ではFFのスライム系の方がオリジナルに近い。溶かす的な攻撃をしてくるし、死んだ冒険者の装備なども全部喰ってしまうことから、報酬額が強さの割りに著しく低く設定されていたりする。ただ、こちらはマシュマロやらプリン、ゼリーなどお菓子の名前をつけて、妙な所を可愛らしくしている。やはりスライムのような、無機質で殺伐としたモンスターは、子供もやるようなゲームには相応しくないため、このどうしようもない毒をなんとか中和しよう、という感覚が働いた結果かもしれない。
今回の話は、スライム同様なぜかRPGなどで良く出てくる雑魚モンスターのコウモリについてだ。コウモリと言うと吸血鬼とか、魔女や魔法使いの手先・使い魔などのイメージがあるが、実際のコウモリはおよそ人間に害を及ぼすような生き物ではない。
確かに洞窟に住んでそうだし、何かの理由で洞窟内に立ち入る必要があって、あんなのが大量に天井に張り付いていたらギョッとするだろうし、こちらを恐れて一斉に逃げわめき始めたら、SAN値を持っていかれる怖れはあるかもしれない。
コウモリも吸血種のある生き物の例に漏れず、草食だったり昆虫などを喰っている種類がほとんどで、吸血コウモリはかなり限られている。それだけ他の動物の血で食いつなぐのはリスクが高いのだろう。
コウモリはご存知のように超音波を発して反響定位を使い、暗闇でも正確に周囲の状況把握ができるので、自由自在に空中を飛び回ることができる。この優れた能力から考えても、飛ぶ昆虫などを捕らえて食べるほうが理にかなった生き方だと思う。ただ、大型のコウモリはエコーロケーションは使わないらしい。多分大きくなりすぎると、いくらエコーロケーションで状況がわかっても、それにあわせて素早く動き回ることが難しくなるので、あまり意味がなくなるのだろう。体が大きくなることによるメリットは多いとは思うが、残念ながら反響定位は使えなくなくなってしまうようだ。オオコウモリの系列は主に果物などを食べて生きているらしい。吸血コウモリはかなり特殊な進化をした種のようで、日本には生息していない。
私もコウモリというのは、テレビの影響か、何となく吸血鬼と結びついていて、海外の生き物と言うイメージがあった。だが、ある時、そこら中にいて、実は普段から良く目にしていたことにようやく気づいた。
日本の場合最も簡単に目にすることができるコウモリは、おそらく小型の、エコーロケーションができる、蛾を主食にしているタイプだろう。このコウモリ達は、夕方ちょうど自分達の姿が見えにくくなった良い時間に現れる。夕暮れのまだ完全に夜にはなっていないし、空に赤い日がわずかに残った、ぐらいの時間に出現するというか、見つけやすいと思う。
なんとなく自分の周りを全体的にぼやっと見る感じでものの動きを捉えていると、薄闇に飛び交っている影が見えるだろう。寝ぐらへ帰るのが遅れた小鳥が飛んでいるのかとも思うが、良く見ていると、この影が超絶な動きをしていることに気付くだろう。進んでいた向きと全然違う方へ、ものすごい速さで動くことがある。空中を文字通り自由自在に方向転換して素早く飛び回っている。
これが昆虫を捕まえて喰っている小型のコウモリだ。シャイな性格と言うか、自分達がはっきりとは視認されないぐらいの明るさになってから出てくるのと、エコーロケーションができるので、人間にぶつかったりなどという間抜けなこともまあしないので、意識して見ていないと気がつかないかもしれない。田舎だからいるんだろうと思うかもしれないが、結構な都会でも、堤防などを歩いていると簡単に見つけることができる程たくさんいる。夏場に蛾の湧かないエリアは日本にないから、当然と言えばそうかもしれない。
虫のいない冬場は洞窟やら木のウロやらで冬眠しているのだと思うが、昭和の木造家屋なら、雨戸の戸袋や屋根裏にいても不思議ではない。大掃除していたら見つけた、という方も結構いると思う。
海外ではオオコウモリが病気やウィルスを媒介した、という例はあるようだ。コウモリも人間と同じ哺乳類であり、共通の病原体がある。それだけが唯一人間に及ぼす危険性だが、それはネズミや犬猫も変わらない。
夜行性だからか、そのシャイな性格や不思議な能力のせいか、人間のフィクションの世界ではあまりいい役をもらえていないコウモリだが、実際は優れた飛行能力を持った面白い生物だ。私もその存在に気付いてからは、夏の夕暮れに飛んでいるのを見つけては、その不思議な飛行を眺めて楽しんでいる。




