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マン・イーティング・ベア

 クマは存在自体それなりにレアで、日本の山野でもそう出くわすことはない。私もクマの爪痕などは見たことはあるが、実際に遭遇したことはない。


 クマはテディベアなどのぬいぐるみの人気も高く、よくマスコットになっている。確かに小熊はかわいいが、どう考えてもペットに適した動物ではない。畑正憲も自らのミスとはいえ、飼っていたヒグマに殺されかけたことがある。最近でもクマを飼っていて喰われた話は時々ニュースになったりしている。ロシア人などにどういう訳かクマを飼う物好きがかなりいて、たまに殺されたりしている。


 マスコットと言えば、第二次世界大戦時にポーランド軍に所属し、伍長にまでなったヴォイテクの話は面白い。ヴォイテクはシリアヒグマだが、人間を仲間だと思っていた可能性はある。もしかすると自分も人間だと思っていたのかもしれない。兵士と相撲レスリングをして遊んだらしいが、わざと負けたりもしていたらしい。イギリス海軍の船に乗って移動する際に、家畜や動物は乗せないという決まりがあったため、ヴォイテクは置いてけぼりになるところだったのを、ポーランド軍が階級も与えて人間扱いで同行させた。終戦後ポーランドは東側になったため、ヴォイテクは、その人気もあって「帰国」が認められず、イギリスの動物園で最期を迎えた。エジンバラの動物園にはかつての同僚達がヴォイテクに会いに訪れることもあったらしい。


 ヒグマはその身体能力から、人間視点ではモンスターと言ってもいいと思うが、日本では北海道にしか分布していない。本州や四国に生息するツキノワグマは、比較的小型とはいえ、ヒグマ同様人間をなぶり殺しにできる程度のパワーはある。しかしながら性質は臆病で、モンスターという言葉からは程遠い。山の隠者といったところだろう。九州には今ではクマはいないことになっているが、内海は泳いで渡れるので、本州や四国から移動している個体はいるかもしれない。


 ツキノワグマは本来は人間側がそれなりに気を付けていれば、それ程危険な動物ではない。クマには死んだふりという俗説があるが、あれは効果があるか疑わしい。目を見て話しかけると去っていくらしいが、実際はどうかわからない。視線の位置を高く保った方が、クマからするとこちらが大きく見えて、ある程度牽制になるのは本当のようだが。大勢で話をしながら歩くとか、荷物に鈴などを付けて鳴らす、ラジオをつける、などは現実的な対策で、実際それで襲われることはないらしい。


 ところが、このひっそりと山で暮らしている隠者のクマが、文字通りモンスターになる条件がある。子連れだと攻撃的になる、というのもあるが、ヒトを喰って味を覚えてしまった場合だ。


 こうなると、人間を食料と見るようになるので、遭遇したら即襲い掛かってくるかもしれない。先に見つけられたら、そっと後をつけて襲ってくる可能性もある。目力で威嚇しても効果は薄い。大きく見えても弱い、というのがもうヒト喰いグマには経験でわかっているからだ。


 最近でもタケノコやキノコを取りに山に入った中高年がツキノワグマにやられてニュースになっている。中には不運な事故もあったかもしれないが、捕食目的で人間を襲っているケースもあったらしい。キノコはクマも食べるので、人間がクマの縄張りを侵していると思われる場合だが、近年はクマの方もあまり人間を恐れなくなってきているらしい。ゴミの始末などがいいかげんだと、それをクマが食べるようになる。逆にクマが人間の領域に入ってくるケースだ。おそらく近年個体数が増えていて、エサを求めて人里へ降りてきている傾向もあると思う。


 私もクマが出没する可能性のあるエリアでは、杖に見せかけた槍とか、刃物でも帯びた方がいいかもしれないと思い始めてはいる。


 槍はキャップみたいなものでも付けてごまかしておけば、杖に見えるしいいかもしれない。マサイ族の人は長い槍でライオンを追い払う。投擲とうてき技術もあるので、ライオンは自分の間合いに入る前に大怪我させられてしまう。投槍は難しいと思うが、近距離で急所に突きささる可能性を考えれば、素人でもワンチャンはあるだろう。まあ無用の長物、とか、生兵法は大怪我の素、という言葉も浮かぶが。


 刃物は日本刀が望ましいが、使いこなせる人はあまりいないと思う。普段から素振りでもしていないと、あんなものを振り回すことは難しい。結局槍と同じようにカウンターで突き刺すことになるのかもしれない。脇差やサバイバルナイフもあるが、もう少しリーチが欲しい気がする。こちらの攻撃が届く前に、クマの殺人パンチでふっ飛ばされそうだ。まあ素手で抵抗することを考えれば、多少ましではある。


 ただ、警察に職務質問されたり、手荷物を見せるはめになった時に、なんで刃物なんか持っているのか、と聞かれて、クマが怖いから、と答えても通用しないとは思う。


 ゴミ等の管理等もきっちりとして、クマが住む山と人間の領域をはっきりと分けることができなければ、これからも人喰い熊は生まれてしまうだろう。人喰い熊は恐ろしいが、最後は人間に狩られる事を思うと哀れなものだ。


 人喰マン・イーティングベアは案外身近な、遭遇してもおかしくない現実リアル怪物モンスターだ。別にハイキングやきのこ・たけのこ採りに行かなくても、クマの方からエサを求めて山を降り、あなたの前にもやってくるかもしれない。


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