表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

青の騎士と天の遣い

 コニア=メルコウリはふと剣を振る手を止めて、吐いた白い息の流れる方を見やった。

 森の斜面にいたのは子狐だ。銀色の毛皮の、珍しい種である。

 首を傾げながらコニアを見ている。


「あっちへ行きなさい。でないと食べられてしまうよ」


 すると子狐は、ちょいちょい振り返りながら去っていく。どこか名残惜しそうに。


「――必要以上の食事も、殺生も要りませんからな。コニア殿の振る舞いは誠に信徒たるべき姿」

「これは……グレイヴィ様」


 慌てて片膝をつくコニアをグレイヴィが止める。


「この私めにそのような堅苦しい挨拶は不要だと何度も申しているではありませんか。――それより、そろそろ食事ができるようですのでいらしてください」

「はい」


 去っていくグレイヴィの背を見送りながら、コニアは銀色の狐のことを思い返した。



「……白銀の貌(シルバーフェイス)は今、なにをしているのかしら」


 コニアを獄中から救い出し、グレイヴィとともに国から逃がした。さらにはビオス宗主国の教皇による悪事を暴き、地方司祭が聖都に押し寄せるきっかけを作った人物。

 グレイヴィは地方司祭たちから、教皇を下ろすための旗印になってくれるよう頼まれているようだが、グレイヴィはこうして数少ない信徒とともに各地を回って聖人たちの教えを広めるほうがいいと言っている。


「あのままいなくなったシルバーフェイスは本当に天の遣い……だったりして」


 グレイヴィはそう信じ込んでいるので、信徒にも平気でシルバーフェイスのことを話している。

 多少なりとも接点のあった――手をつないで結構な距離を歩いたりしたコニアからすれば、シルバーフェイスはふつうに人間だし、年下の男の子という感じだ。

 彼が握ってくれた手を見つめる。

 あの手が、ビオス宗主国をひっくり返してしまった――そう思うには頼りないほどに小さな手だった。


「……天の遣いなら、こうして何度も考えてしまうのは仕方ないよね、うん」


 グレイヴィに相談すれば、どんどん思い、どんどん考えてもいい、むしろ考えなさい、と免罪符を与えてくれそうだったが、そうはしなかった。

 手をキュッと握りしめて、コニアは炊煙の流れてくるほうへと歩いていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ