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異世界出稼ぎ冒険記 一億貯めるまで帰れません (旧題 命の対価はあといくら?)  作者: 黒月天星
第二章 牢獄出たらダンジョンで

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第六十二話 ダンジョンコア


「……ダ、ダ、ダンジョンコアですって!?」


 異世界生活十日目。


 俺は自称ダンジョンコアを周りの皆に見えるように持ち、昨日夢の中であったことを皆に説明していた。するとジューネがやたらに興奮してこちらに詰め寄ってくる。時折手にある石にチラチラと視線を向けながらだが。


「本当ですかトキヒサさん!? 本当にダンジョンコアとそう言ったのですか!?」

「あぁ。確かにそう言ってた。一応聞くけど、ダンジョンコアって言うのは()()()()()()()()()ってことで合ってるよな?」

「その通りです。各ダンジョンに必ず一つ存在していて、それが有る限りダンジョンは成長を続けるとか。それを壊すかダンジョンから持ち出すことで、そこのダンジョンマスターは消滅し、そのダンジョンは力を失っていずれ崩壊するとされています」


 そこら辺はライトノベルでもよくある話だな。それを放っておけばどんどんモンスターが増えていく動力炉であると同時に、どんな凄いダンジョンでもそれを壊されたらおしまいというまさしく急所とも言える。しかし異世界風に言えば、


「じゃあもしかして……高く売れたりするのか?」

「それはもう!!」


 ジューネがもう爆発しそうな勢いで言う。というか近い近い!? 顔がぶつかりそうなほどの至近距離だ。分かったからもうちょい離れてくれ! アシュさんもやれやれって顔で見てるぞ。


「まずダンジョン自体がそこまで多くはありません。加えて攻略されることも数年に一度程度です。以前一度だけ実物が売りに出されるのを見たことがありますが、その時の値段ときたら……」

「いくらくらいだったんだ?」

「……私が見たのはそこまで大きな物ではありませんでした。ダンジョンも出来てからあまり間がなく、攻略難度もそう高くないものだったそうです。それでも一つで十年は遊んで暮らせる額が付きましたよ」

「それにダンジョンコアと言ったら冒険者にとって一種の目標だ。金になるだけじゃなく、ダンジョンを踏破した証でもあるからな。一生自慢できるレベルだぜ」


 十年って……いまいち値段が分からないが、ジューネがそう言うのだから相当な額なのだろう。成程。確かにこれなら一攫千金を狙って冒険者がダンジョンに潜るのも分かる。今は少し調子が良いのか、バルガスも起き上がって補足説明をする。


「しかし、そんな大事なものが何であんな場所に有ったんだ? 普通ダンジョンコアと言ったらダンジョンの最深部、あるいはダンジョンマスターの傍にあるはずだ」


 アシュさんがもっともな疑問を口にする。確かにダンジョンコアが有った部屋は罠だらけだった。しかしそれにしたって絶対安全かと言えばそうでもない。隠し部屋の有った場所は隠されてはいたが、良く調べれば分かるくらいのものだ。


 それにアシュさんによれば、ここからダンジョンの入口までそこまでの距離はない。地図とある程度の人員と装備が有れば数時間くらいで辿り着けるような場所に、ダンジョンの重要な物を置くことは考えづらい。


「そう。その理由が問題なんです。コイツは夢の中で言っていました。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って」


 その瞬間、集まっていた皆は何とも言えないような顔をした。目の前の奴は何を言っているんだろうという空気が漂う。それも当然だな。しかしそう言われたのだから仕方がない。俺は夢の中での会話を再び説明する。





 夢の中で自称ダンジョンコアが言うには、元々このダンジョンは自分と自分のダンジョンマスターが管理していたという。


 マスターが戦いを好まない性格だったのもあり、ダンジョンのコンセプトは俺の予想した通り人が入りたがらないダンジョン。入口を巧妙に隠し、ダンジョンをとにかく広大かつ複雑にしたという。モンスターもスケルトン系に限定し、人を引き寄せるための宝箱も置かず、旨味らしい旨味のないダンジョンを徹底した。


 それでは人が来ないからポイントも貯まらないだろうと訊ねると、ほんの少しずつではあるけれど毎日ポイントが入るので、地道にコツコツ十年ほどかけてポイントを貯める予定だったという。非常に気の長い話だ。


 それでポイントを貯めてどうするのかと聞けば、どれもこれも防備に当てるつもりだったという。外に攻め入ろうなんて考えは微塵もなく、只々そこに在り続けたいというだけだった。


 その計画は順調に進んでいた。実際このダンジョンが出来て一年間誰も入らなかったという。よほど入口の隠し方が上手かったのだろう。ダンジョンの拡張も進み、ただ最深部に辿り着くだけでも相当な時間を要する大迷宮となりつつあった。しかし、そこで事件が起きた。


『……奴らは突然現れた。隠されていた入口から入ってきたかと思うと、ほとんど迷わずにダンジョンを突き進んで最深部に辿り着いたんだ。そして…………ボクのダンジョンマスターを、殺した』


 夢の中でそう言った自称ダンジョンコアの声は、その時とても悔しそうに聞こえた。もし肉体があれば、涙を流しながら手を血が出るまで握りしめているんじゃないかと思える。


「ジューネ。つまりその瞬間は、ダンジョンにダンジョンマスターが不在となるわけだ。そしてこの石はその瞬間を突かれた」


 普通の冒険者ならその場でダンジョンコアを持ち帰ろうとするだろう。あるいはこの場で壊してしまうという選択肢もあった。


 コアが壊れた時点で、コアの力で生まれたモンスターは全て消滅する。とても帰り道で戦う体力がない場合、苦渋の決断で壊していくという話が無い訳でもない。事実コアもその覚悟はしていたという。だが、襲撃者の行動はどちらでもなかった。


「そいつらは自分達が持っていた石をダンジョンコアと入れ替えたらしい。つまりこの石の言葉を信じるなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことになる」

「そんな…………前代未聞です! それにそんなことをやる理由が分かりません!」

「ジューネの疑問は当然だ。しかしこう考えたらどうだ? ダンジョンマスターのいないダンジョンに、自分の所有するダンジョンコアがある。つまり擬似的にだが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………ちょっといいか?」


 ジューネの言葉に対し、俺は夢の中で自称ダンジョンコアと話し合った考えを述べる。それに対して、アシュさんが軽く腕を組みながら声をあげた。


「いくつか気になったことがある。一つ目。成程、もしその入れ替えたコアが自分の命令を受け付けるのなら、確かに擬似的にダンジョンマスターの真似事が出来る。金、兵力、その中であれば相当やりたい放題が出来るだろう。しかし、それはあくまで命令を受け付けたらの話だ」

「ダンジョンコアの話では、入れ替えたのはコアに近いけれど別物という話です。どうやって作ったのかは分からないけれど、自分の意思もなく性能も本物には及ばない。しかしその分制御は容易いって」


 聞き出したところによると、そのもう一つの方は自分の代わりにこのダンジョンのコアになっているものの、性能の差と元々このダンジョンのコアではないことから、()()()()()()()このダンジョンの部屋やモンスターにはほとんど手出しできないらしい。そのため今は下に下にと新たにダンジョンを増築しているという。


「俺が次に気になったのはそこだ。トキヒサが言っているのは全てその自称ダンジョンコアから聞いたことに過ぎない。そいつが嘘を吐いている可能性だって十分あるわけだ」


 ……だよなぁ。問題はそこだ。俺自身も言われたことの全てを信じている訳じゃない。いきなり夢の中に現れた石の言葉を全部信じられる奴はあまりいないと思う。だけど……。


「…………夢から覚める直前、俺はコイツに聞いたんです。色々話は分かったけど、お前の目的は何なんだ? 俺を利用してマスターの敵討ちでもしたいのか? それとも今のコアを追い出して元に戻りたいのかって。……コイツはこう答えました」


『どちらも少し違うよ。このダンジョンは……ボクとマスターが造ったものだから、ボク達以外の誰かに好き勝手にしてほしくない。……ダンジョンが踏破されて消えるのは仕方がない。だけどマスターの思いが、願いが詰まったダンジョンを……穢されたくない』


 言葉こそとぎれとぎれだったが、それが逆に真実味があった。自分の気持ちを少しずつ、でもしっかりと言葉として吐き出すこと。それは簡単なようで意外に難しい。


「コイツにとってはダンジョンが消えることよりも、ダンジョンが勝手にいじられることの方が問題なんです。だから少なくとも、ダンジョンを勝手に変えようとしている何かがいることは間違いないと思います」

「ダンジョンを勝手に変えようとしている何か……か」


 アシュさんが再び目を閉じて何か考え始める。これはアシュさんの癖のようだ。





「……あの。話が脱線してきたので確認したいのですが」


 そこに再びジューネの発言が飛ぶ。


「話は分かりましたが、結局のところその石を売り払って終わりなのではないですか? ダンジョンマスターとダンジョンコアが変わったというのも、私達にはあまり関係のないこと。……確かに事実なら少しは同情しますが、それだけのことではないでしょうか?」


 そう。多分それが正解だ。このままさっさと持って帰って売り払ってしまえば、仮に山分けしたとしても相当な額になることはまず間違いない。目標の一千万デンに大きく近づくことだろう。まず失敗のない手だ。…………だけど、本当にそれで良いのだろうか?


「多分それが一番なんだろうな。……だけど、俺はあえて別の選択肢を提案したい」

「…………何? まさか私達でダンジョンの最深部に挑んで、そのダンジョンコアを入れ替えようなんて言うんじゃないわよね」


 今まで黙っていたエプリが、微妙に皮肉げにここで初めて発言した。ちなみに今はフードをまた被っている。バルガスにはまだ混血のことは話していないためだ。おいおい。また俺が何かするって思ってるのか? 残念ながら今回は違うぞ。


「いやいやまさか。俺達だけでは流石にキツイって。いくらアシュさんやエプリがいても、全員を護りながらじゃどうにもならないだろ? だからやれる奴にやってもらう」


 俺はそう言うと、手に持った石を再び掲げて見せた。


「もう一つの選択肢は、コイツがダンジョンを踏破するのを手伝うこと。()()()()()()()()()()()()()()()()()()って言うのも…………面白いだろ」


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