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幕間:メイドの私服姿はまだ見せない

どうも皆さん。緒蘇輝影丸です。

今回は短いながらも幕間回です。

楽しんで頂ければ幸いです。

 行ってしまわれました……。人間時代含めて苦節約405年(厳密には407年)の片想いを持ち続ける時を経て、ようやくクロード様とのデートにこぎつけましたのに、まさかの一時間足らずで強制終了されるとは思いませんでした。……どなたがやったのかは知りませんが、神々の皆様。私は貴方達に何か罰当たりな事をしてしまったのですか?それでしたら普通に謝罪致します。……ですが、このような形で折角手に入れた楽しみを取り上げるだなんて……酷いです。

「え、えっと、ミリーク様……?」

 というか、クロード様もクロード様ですっ!無意識なのか知りませんが、ロスト様からの依頼(?)が来た途端に活き活きとした感じで言うだけ言って、私とのデートを放り出すなんて……仕事人とは言え、もう少し私の事を考えて欲しいです。

「ミリーク様ー?」

 ……いいえ。違いますね。クロード様は、上司の城主であり親友とも言えるロスト様を始めとした、このディザストレの皆様の事を考え、そこから優先順位を自分なりに付けて、出来る限り滞りなく仕事をこなそうとしているだけ。本当に私の事を考えていないなら、仕事とは全く関係のない私用に埋め合わせするという言葉は出ませんし、緊急の仕事を放り投げるクロード様なんてクロード様ではありません。……なんて事を考える私は……自分で言うのも何ですが、都合の良い女性なのかもしれません。

「ア、アノ……ミリーク様?」

 ならば、今の私に出来る事は、クロード様が去り際に言ったご厚意に甘えるだけです。

「あぁ。失礼致しました。……改めましてアンムス様。シュピナ様。ニオ様のついでで構いません。私に似合う服を見繕って下さい」

「あっはい。分かりました」

「……ドノヨウナ服ヲゴ所望デ?」

「私用の服、平服として使える物として、最低でも動きに支障をきたさず、露出も過剰過ぎない物をお願いします。一つは必ず青色系統の物で……あの鈍感仕事人骸骨でも、ドキドキさせられるのなら最高です」

 とりあえず、私はクロード様の意見を含めたいくつかの要望を、シュピナ様達に伝えました。……少しの願望も添えて、ですが。それが聞こえたのかどうかは分かりませんが、シュピナ様は喜んで引き受けていただけました。逆にニオ様は少し申し訳なさそうにしていましたが。

「畏マリマシタ」

「アタシのついでって……良いのですか?」

「構いませんよ。ヒトの格好と見比べるのも、一つの醍醐味ですから」

 普段から侍女(メイド)服しか着てこなかった自分に似合う服の参考にしたいですから。……ただし、クロード様には、次のデート当日までご覧に入れてあげません。デートを中止にした事へのちょっとした意趣返しです。


 シュピナ様もといハンネットの店員の見解の下で一通りの組み合わせをしてみて、私とニオ様の両者が納得いくような服をいくつか買いました。内容は、デート当日まで伏せておきます。

「……あ、あの、店員さん///」

 私はようやく私用の服が買えて一安心したのですが、ニオ様がコソコソとあの徘徊鎧(リビングアーマー)族の女性店員、アンムス様に近付き、何やら恥ずかしそうに小さな声で話しかけていきました。ズボンが脱げなくなって困っていた所で、置いてけぼりされたというのに……何故店長のシュピナ様ではなく彼女に?と思いましたが、立ち位置的にたまたま聞こえた声に、私は衝撃を受けてしまいました。

「……彼氏が喜びそうな()()ってありますか///?」

「はい。ありますよ?」

 したぎ……下着……失念していました……!そうですよ!仮にクロード様と仲を深めようといくらお洒落した所で、いずれ訪れるであろう機会に、身につけている下着が当時から愛用しているのと同種の一般的な下着、飾り気のない白のブラジャーとドロワーズなんて、昔ならいざ知らず、様々な商品や文化の発展がある今を生きている方々からすれば、色気がないにも程があります!ただでさえクロード様を惚れさせるのに難航しているというのに、自分で難易度を上げてどうするのですか!?

「すみません。私もお願いします」

「ミリーク様もですか?」

「お恥ずかしながら私は、この仕事用の服数着しか持っていないどころか、下着すらも飾り気のない物しか許されないという決まり事が、昔からの職業の関係で根付いてしまっており……」

「えぇ!?それはいけません!こちらへどうぞ!」

 これはいけないと、ニオ様に便乗してお願いしてみたら、アンムス様は驚きを隠すことが出来ず、すぐさま私とニオ様の手を引っ張り、服の絵に斜線が入った標示の扉の先へと連れて行きました。


 扉が開いた先にあったのは、扇情的な別世界と言われても可笑しくない空間でした。

「こ、これは……ッ///!」

 私がたまに寄っていた支店では、ドロワーズといった一般的な下着が半数以上あったのですが、此処(ほんてん)にはそういった下着がパッと見ただけでも一枚もありません。むしろ布面積が小さいのもあれば、所々透けているのもあります。酷い物では紐しかないのもあります。下着売り場にしてはあまりにも衝撃的な光景に、私は言葉を失いかけました。思わず顔も熱くなってきました。何やらニオ様がこちらを見ており、アンムス様は持ち場に戻られてしまいましたが、今の私には、それを気にする余裕がありませんでした。

「いらっしゃ~い☆」

 少し立ち往生したところで、この場所を担当している身長はやや子供寄りですが、それに合わない大きさの胸を持つ淫魔(サキュバス)族の女性店員がフワフワと浮いたまま、こちらに近付いて来ました。彼女の見た目よりこの場の雰囲気の方が驚きだったので、驚きというより「あっこの方、エルダ様に殴られそうな体型」という感想が浮かび上がりました(勿論口には出しませんが)。しかし、そのおかげで気持ちがようやく落ち着いた私は、改めて挨拶をしました。

「こんにちは。ミリーク・ビナンシュと申します」

「おカタ~い。でもご挨拶ドーモ☆あちしはラジェンナ☆ヨロシク☆」

 少し馴れ馴れしい……いえ、友好的な態度に少し眉をひそめてしまいましたが、此処は女性用下着のお店、ラジェンナ様のような店員がいてもおかしくないと自分に言い聞かせ、話を進める事にします。

「……ニオ様は、こちらへは何度か訪れた事がおありで?」

「えっ?あー……二、三回程」

「すみませんが、どう注文すればよろしいのか、お手本を見せて貰っても?」

「えぇ!?……本当に初めてなんですね……分かりました」

 とはいえ、残念ながら私はこのような形式の注文の仕方が分かりませんので、先駆者のニオ様を見習ってから、自分の下着の注文をしようと考えました。……私の侍女服も下着も、昔から支給品でしたから。

「じゃ、じゃあ、まずはアタシからで良い?」

「はい~☆どのような商品をお望みですか~?」

「えっと、普段着用の金具が壊れにくいブラとナイトブラと普通のショーツ……あと、誘惑用のキャミソールとショーツをお願いしたいです。サイズは――――」

「は~い☆ワンサイズ上げておきますね☆彼氏さん、お客さんのお胸が相当好きなんですね~☆」

「んなっ///!?」

 あっ。この店員さん、女性同士だからといってデリカシーを考えない方ですね。ニオ様も驚いて(?)いるじゃないですか。……ただ、一応仕事はこなしているようですね。ご注文に沿った商品を勧めて試着させて……あれ?採寸は?

「……あ、ありがとうございます///」

 そんな疑問を抱いている内に購入を決めたニオ様は、私とラジェンナ様に一礼をして早々に立ち去ってしまいました。……あれ?そういえばニオ様、お代は渡したのでしょうか?

「は~い☆……さ・て・と、お次はあなたね☆ふむふむ……」

 疑問が重なっている間に、ラジェンナ様は私の体を舐めるように見続けた。意味も分からずに見られてる私は、彼女が何をしているのかが分からず、思わず自分を抱くようにし、身を捩ったり少し距離を取るようにした。

「あっごめんなさい。あちしは見る女性の体型、スリーサイズが分かる()()()()なの☆」

 私はそれを聞き「まさかワウル様以外で魔眼を持っている方がいるなんて」と少し驚きました。このディザストレに限らず、世界中で魔眼を持っている方は珍しいですから。その魔眼だって、ワウル様のように実戦で使える効果もあれば、失礼ながら今回のラジェンナ様のように実用的ではあるが効果が地味なモノもあります。更に言ってしまえば、それが先天的なモノであれば尚更です。ワウル様はクロード様の手によって出来た、いわば後天的なモノ。恐らくラジェンナ様は、種族の関係によるものかどうなのかは知りませんが、先天的な魔眼持ちなのでしょう。

「あっお代はもう頂いてるから、遠慮しないでね☆」

 お代。クロード様がシュピナ様に渡した二種類の皮の事でしょうか?

「それにしても、あなたの()()、ちょ~美味☆ごちそうさま☆」

「恋心!?ちょっ、ちょっと待って下さい!超危険種の皮の事を知ってたのではなくて///!?」

「それは()()代金でしょ?此処は確かに同じ店だけど、管轄が違うわよ?」

 知らぬ間に払っていた、というより払っていない筈の物を貰ってご機嫌なラジェンナ様に待ったをかけました。とはいえ、取られた物は形のない物故に取り返せません。それでもなんとかしようとしたところで、ラジェンナ様が私の唇に人差し指を当てました。

「だいじょ~ぶ☆あなたの恋心って言っても、あなたから漏れ出てる部分、有り余っている恋の感情をちょこっと頂いただけ☆あちし達淫魔族は、普通の食事以外にも、好みの感情、特に恋愛感情のエネルギーを摂取してお腹を満たす事が出来るの☆城主様の妻であり、あちし達と同族のイリアス様だってロスト様から色々頂いているでしょ?それと同じよ☆」

 イリアス様がそんなことをしてるのを、私は知りませんし知りたくもありませんでした。流石に冗談かと思いますが、少なくともイリアス様の秘密をこんな形で知った事は、墓場まで持っていきます。

「それはそれとして、ミリーク様のスタイル、素敵ですね☆肌の手入れはもちろんだけど、出てる所は出てて、引き締まっている所は締まってますね☆胸も良いですが特にお尻☆垂れず締めすぎず、理想的な安産型です☆好きな方と何人子供を産んでも支障はありませんよ☆」

 喧しいです。女性同士だからと言えど、これは明らかにセクシャルハラスメントというものですよね?あまりにデリカシーがなさ過ぎる言動に後退りしました。というか帰ろうかと思いました。

「あー!ごめんなさい!ちゃんと下着は選びますから帰らないで下さーい!」

 私の雰囲気を感じ取ってか、先程までの態度は何処に行ったのやら、普通の態度で謝罪と引き留めをされました。普通の接客が出来るのなら最初からやって下さいよ。そうすればニオ様が恥ずかしい思いをしなくて済みましたのに。

「……えー、コホン……それでは、こちらは如何でしょう?」

 それからラジェンナ様は、改めて私に商品を勧めてきました。……態度は戻っていれど、言葉を慎重に選んでいるのか、少しぎこちなかったです。この様子からして、恐らく淫魔族っぽい事を言っておかないと誰かに怒られたりガッカリされたりしたのでしょうか?そう考えるのであれば、ラジェンナ様の根は真面目なのですね。それからすっかり怒る気がなくなってしまった私は、クロードが興奮してくれそうな下着を何点か選んで買いました。

(……クロード様。帰りは遅くなるかもしれませんね……)

 それらが入っている紙袋を抱えながら店を出て、これからやる事、クロード様の帰りを待ち続ける憂鬱さと心配、きっと大丈夫という信用も抱えながら、クロード様が帰るデッドオーパーへと足を運びました。

如何でしたか?

ミリークは何の服、下着を買ったの?という質問は受け付けません。イメージでどうにかして下さい。

自分、水着は他作品のラノベなり参考になる物があるからまだしも、ファッションとかサッパリなので(笑)、女性下着なんてもっと分かるわけないでしょ(やや怒)。


まぁ、何はともあれ、今年もあっという間でしたね、恐らく今年最後の投稿です。

次回はクロードが聞き受けた緊急事態もとい、どんな事件が起きたのか、なるべく早く投稿出来るように頑張りますが、気長に投稿をお待ち下さい。


追伸:新作の件ですが、物語の情報量と自分の技量的に、あまりに複雑過ぎて無理と判断したので、今作品の新章等の登場人物にするという方針に変更しました。なので、(設定段階ながらも)新作は出ません。申し訳ございません。

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