幕間:皆は裏に潜む企てをまだ知らない
これは、少し先の未来の話。
夜間警備兵と夜に働いている者達を除き、皆が寝静まったある日の夜。ジェノサイド城のとある一室にて、統一性を感じない形状の魔族が複数人集まっていた。
「……本当にやっちまったぜ」
「モウ、引キ返セナイ」
机の上に胡座で座る小さな男と、その後ろで腕を組んで俯く下半身がサソリの男は、自分が仕出かした事に後悔半分達成感半分の口調で心情を零し……。
「まずは第一段階。それの調査を進めてる間に、この薬を奴に飲ませろよ?ウサーミ」
「……はい。お任せを……」
二人の隣に座っている目つきが鋭い豹耳の男が、懐から盗んだ小瓶を取り出し、兎の耳と尻尾を持つ侍女に渡して指示を、否、命令を出した。侍女は無表情のまま了承し、小瓶を受け取り、部屋から出て行った。
「……ついにここまで来たか。……なぁ、本当に上手く行くんだよな?リーダー」
「問題ない」
豹耳の男が抱く不安を、耳が長く尖った精悍な男は動じず、たった一言で払拭させる。
「全ては、腑抜けになった魔王時代を変える為に、我々『ノイシュタート』は動いているのだから」
机に肘を立て、両手を組み、口元をその両手に隠すように寄りかかり、精悍な男は毅然とした態度で宣言した。
――――城主等に内緒で、今の魔王時代に改変という大きな野望を。
豹耳の男から貰った小瓶を両手に包んだまま歩く一羽の兎、戦兎人族のウサーミは、当事者達の視界から離れた瞬間から悔やんでいた。巻き添えの不運に、信頼を崩される行為に、自分の無力さに。……だからこそ、彼女は密かに願った。自分と共に当事者達に失敗という名の罰を与えて、と……。
如何でしたか?
この幕間で章の山場の伏線を張っておきました。
一体何をするつもりなのか、それはまた後々。
相も変わらず、次回投稿は気長にお待ち下さい。
ちなみに次回は伏線とは関係ない話です。