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プロローグ:つまらないだろうが、世界を再確認させるのは大事

どうも皆さん。緒蘇輝影丸です。

リアルの多忙の合間を縫い続け、ようやく新章開幕の話が出来上がりました。

今回は第一話も並べて投稿します。

楽しんでいただければ、幸いです。

 人間(ヒューマン)達が暮らす大陸『モルディガンマ』。そこから南東の海に浮かぶ魔界島『ディザストレ』。この島には、普通の人間では生きて帰れないほど過酷な環境が存在する。

 異形の鳥や植物、獣などが生息しており、常に食うか食われるかの自然豊かでありながらも過酷な弱肉強食の世界とも言える森林地帯『グランノーム』。

 生命を干からびさせるどころか燃やす灼熱地獄のように熱く、荒々しく燃える火山が連なる火山地帯『インフェルノ』。

 身体に突き刺さるように凍て付く絶対零度の地とも言われる白銀に光る氷山が連なる極寒地帯『フロスティア』。

 海の中に獲物が来るのを今か今かと密かに待ち続ける水面まで暗い魔の海『バミューダ』。

 その三つの地帯と海がある島の中央に位置するのは、人間の心身を散々脅かしてきた魔族でありながら何処か人々の繋がりを感じさせる集落が複数ある中枢地帯『ジェノエリア』。

 そして、かけがえのない同胞達と共に守り続け、今もなお魔族もといディザストレを治める魔王スフィアが、城主である父ロストと共に鎮座している魔王城『ジェノサイド城』がある。

 時代は、両国完全平和時代ともいえるスフィア時代になってから約120年。両国間の戦争は止まっても、国()での騒動は残念ながら今でも止まらない。大なり小なり不平不満というのは、ヒトの数以上に湧いてしまうモノ。仮に一つの不満が解消されたとしても、その解消によって、また新たな不満が生まれる。形は違えど贅沢という欲望は、いわゆるイタチごっこのように、キリが無い。しかし、ここで対処もとい職務を放棄し、そのまま放置すればするほど不満は徐々に大きくなり、同様の不満持つ者達の心が重なり、やがて内乱(クーデター)という大爆発が発生し、スフィア時代は崩壊の一途を辿ってしまう。そうなってしまえば、この機に乗じて人間は魔族を殲滅しようとするだろう。そうさせない為に、ディザストレで最強と謳われた不死(アンデッド)族の魔術師(ウィザード)であり、魔導具店『デッドオーパー』の店主ことクロード・オルデアンは、前・魔王時代での宰相等の立場を退いてもなお、今日も依頼を解決に勤しむ。


 そんな彼は今何をしているのかというと、定期的に送られる()()()()()()を一人で行っていた。一緒に過ごしている侍女(メイド)のミリークは、現在お出かけ中なので不在。

「……これはコイツが適任。これはアイツ。これらはアイツ。これらは少し調べてから処分……あとは、オレがやった方が良い依頼書か……」

 一言で整理といっても、依頼箱に投函されていた依頼書を選別して、自分の手元に置く依頼書以外は魔王城に返すだけの簡単な作業である。傍から聞けば非常に地味で退屈、それでいて大変な事ではあるが、彼にとっては日常の一端に過ぎない。届いた依頼書の殆どがクロード宛の物であるが、適材適所という形でほかのヒトに任せる場合、該当するヒトの名前が書かれている紙を分かりやすい位置に貼りつける作業もある。


 ちなみに依頼書(これら)がどういう形で送られているのかというと、大まかに言えば伝言鴉(メッセージ・クロウ)と似たような形で運ばれる。正確には郵送鷹(レタリン・イーグル)と呼ばれる伝言鴉の書物版といったところのモンスターが運んできたモノである。伝言鴉のような手軽に言伝を伝える術がない代わりに、伝言鴉より大きく力が強い。それに伴い運搬能力も、手紙のような軽い物であればまとめて箱ごと運べる程には高い。少なくともヒトの足で運ぶよりも格段に効率的な方法である。

 補足として付け加えると、一応魔王城には、郵送鷹より大きく重い荷物や資材を運ぶ事が出来る上位互換、運搬大鷲(キャレッジ・ホーク)という亜種なるモノが存在するが、数が少ない上に頻繁に飛び回るような事もしない。もちろん、翼の筋肉が衰えないように日課で仮想荷物(大量の水袋)を持たせて空に放ってはいる。


 それはそれとして、こういった形の依頼の大半は、急ぎではないが依頼者の一存では対処出来ないという理由で投函される事が多い。というより、そうするようにと忠告したので、基本はそれしか来ない。それでも一部感謝もしくは白紙の手紙が届く事もある。理由は投函した本人のみぞ知る。……最も、クロードにそういった手紙を送った所で、丁重に保管するか一通り調べてから廃棄、もしくは再利用するという極めて冷静な対応をするだけである。

 その数ある依頼書の中、二枚の依頼書に目が止まった。

『クロードへ いーかげんチェスとトランプあきた。あたらしいゴラクのアイデアちょーだい。あとあのカップルどーにかして シピックより』

『クロード様へ 当人には内緒で作っている例の物についてだが、貰った素材だけじゃ足りない物がある。お前さんも忙しいだろうから、これを読んで都合が良い日があるなら、ワシの職場に来い。詳しい事はそこで話す ブドーより』

「……今日はコレとコレを解決しとくか……」

 彼がこの二件を選んだ理由は、たまたま目に入ったという気まぐれのような理由もあるが、偶然にも依頼主二人が住んでいる場所が歩いてもそんなに時間がかからないくらいの近所だからである。そうと決まれば早速と言わんばかりに、クロードは魔法杖(ロッド)を持って、ペットである絶望箱(パンドラ)のハココの蓋部分をすれ違いざまに一撫でにしてから店を後にした。もちろん鍵をかけるのを忘れずに。


 前章までは、元・勇者団の誰かとの依頼の様子をお見せしたが、今度からは、クロード達よりずっと前にこのディザストレに住む魔族達による、もう少し視野を広めた依頼(にちじょう)もお見せするとしよう。

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