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第八話:守護者と本気でデートするは案外悪くない

どうも皆さん。お久しぶりです。緒蘇輝影丸です。

リアルの事情と経験がない描写が相まって一年以上更新出来ませんでした。

申し訳ございません。

前回を憶えていないでしょうが、今回はデート回です。

 ディザストレの火山地帯インフェルノにて、二人(片方に関してはほぼ丸腰)だけという大きなハンデを抱えていたにもかかわらずに超危険種[溶岩竜(マグマドラゴン)]マグナロスを討伐し、素材の剥ぎ取りを終えたクロードとフェイア。本来ならば、この二人は依頼、マグマンタイトという鉱石を集めて終わりという、同じ勇者団の仲にしてはかなり業務的な関係のはずだった。しかし、人間時代から振り返ってみると、クロードはフェイアに救われた事が何度もある事を思い出し、今まで(少し?)邪険にしていた分を取り返すかのように仲が修復しようとする。


 目が覚めたクロードはフェイアを連れて今――――依頼を後回しに火山地帯でのデートをしています。


 ……さて、デートをすると豪語したものの……そもそもデートって何すれば良いのだ……?人間時代はほとんど団体行動だったし、少数だけで行ったのは簡単な依頼やアイテムの買い出しくらいしかない。……少なくとも、そんな感じではないだろう。確か、異性同士で絶景やら賑やかな街といったどっちも喜べるような場所を行く感じだったか?……まぁ、今さっき言ったのはオレの独断というか、偏見に近い。オレは人生(魔生とも言うか?)いや、生涯のほとんどを魔法の研究や魔導具の開発、商売ばかりに費やしていたものだから、色恋沙汰に関する知識と経験が乏しい。しかし、今回ばかりはそうも言ってられない。経験がないなら、オレの数少ない知識と何かしらの機転を使って、フェイアを満足させる。それが出来るかどうかだ。

 ……とは言え、今いる場所はインフェルノ。火山地帯だ。異性を喜ばせる場所なんてないだろう……。


 ――――そう思うだろうが、オレには一つだけアテがある。インフェルノで多分オレしか見た事がない、人間時代に残っていた数少ない心から感動をしたあの場所なら、きっとフェイアも喜ぶ……はずだ……。

 そう信じてフェイアの手を引っ張った先は、とある火山の麓に大きく空いた洞窟だ。

「お、おい!どこに連れてくんだ!」

 手を繋がれた事があまりないのか、いつもより若干語気が弱いが、それでも聞かなければ気が済まないフェイアは、オレに問いかける。入り口付近でごねてしまうと遅くなってしまうので、半ば強引に中へ引っ張りながら答える。

「……この先だ。何があるかはまだ秘密だ」

 答えると言っても、ここで墓穴を掘って全部言ってしまうと感動というか喜びが半減すると思い、オレは(自分の中では)当たり障りのない言葉で誤魔化した。

「ま、まさか……っ!誰もいない事を良い事に、こんな薄暗い洞窟の中でアタシの身体をいただくのか!?数少ない人間の性を解放してアタシを性的に食うのか!?だ、ダメだぞ!!あっ、べ、別にクロードとならダメでも嫌でもないぞ!?むしろアタシを異性として見てくれてるんだぁって感じで嬉しいんだけどよ……ただ……さっきの戦いで汗かいたからクセェかもしれねぇんだぞ///!?」

 すると、微量の熱を持つ緋色に光る鉱石、ヒイロロ鉱石に囲まれたこの洞窟の中が蒸れるように暑くて頭が沸いてしまったのか、それとも早とちりして何かと勘違いしているのか、突然頭から湯気を出し、顔を赤らめながら変な事を口走る。……ミリークと言い、シエルと言い、コイツと言い、なんでオレからのセクハラにウェルカムなのか(何言ってるんだ?オレ)、よく分からん。

「おい!聞いてるのか!?アタシに恥をかかせてるのか!?そんなに焦らさなくたって、アタシの身体はもう熱々でムラムr……ひゃあああぁぁぁーーー何言ってんだアタシぃぃぃーーー///!!!」

(本当に何を言ってるんだ?フェイア)

 情緒が不安定になっているのかと本気で心配になり、一度フェイアに「具合が悪いなら家に帰るか?送るけど」と言ったら、すぐさま首をブンブンと横に振った。……正直心配だが、本人が大丈夫と言うならそう信じて従うしかない。もし体調が悪化したら即座に転移魔法で帰そうという事にした。


「……ほら、着いたぞ」

 そんな感じでフェイアの様子を気にしつつ、ようやく例の場所へ到着した。だいぶ奥深くでもあったため、一段と薄暗い。辛うじて見えるのは、いつの間にか黙って俯いているフェイアと暗めの背景くらい。このままではオレの見せたい物が見せれないから、【照明(ライト)】という暗い場所を明るめにする支援魔法を唱えようとしたら――――。


 ――――グイッ。ドンッ!!


(…………ん~?)

 突然何者かに引っ張られ、壁際に追い詰められていた。自分の身に何が起こったのか分からず、一瞬思考が停止したが、目の前の光景を見てすぐさま状況を把握した。

「……ハァ……ハァ……クロードぉ……こんな奥深くまで来たって事はよぉ……やっぱりアレじゃないか……このムッツリ///♪」

「えっ……フェイア?」

 フェイアの仕業だ。まぁ、ここにはオレとフェイアの二人しかいないのだから何を当たり前なことを言ってるんだ?と思うだろうが、なんと言えば良いのだろう……息が荒いというか、目の色が違うというか……色気が漏れ出てるといった方が良いか。明らかにフェイアの()()()()()()()のだ。

「……【分解析(アナライズ)】」

 何か精神に異常が起きたのかと、状態異常を検知する特殊な探知魔法でフェイアの状態を確認してみた。

(…………えっ!?【魅了(チャーム)】にかかっているだと!?なんで!?)

 フェイアは元・勇者団の中でも屈指の防御力を誇る守護者(ガーディアン)。ましてや竜人(ドラグナー)族は物理的防御力は勿論のことだが、精神面の防御力も高い。余程のものでなければ彼女の精神が汚染される筈が……。

(あっ。そういえば、昔からフェイアは恋愛を始めとした()()()()()()()な……)

 忘れていた。しかも、平服だけの装備でここに来たせいで状態異常対策のアクセサリーを付け忘れていたようだ。しかし、きっと原因はそれだけじゃない。

(…………まさか…………)

 心当たりの推測が浮かび上がったオレは、予定よりも弱くて小さな【照明】を使い、二人で見ようとしていた例の樹木状の魔塊結晶(マナ・クリスタル)に当ててよく見てみた。……すると、根元から何かの魔素(マナ)が、血管を通して流れる血液のように結晶全体に張り巡らされている。そう。まるで、その魔塊結晶が()()()()()()()()()()


――――あり得ない。通常の魔塊結晶は、魔素を閉じ込めているだけの結晶のはず。魔素を血液のように動かす事が出来るのは、魔塊結晶を加工して作った魔宝石(マナ・ストーン)か、魔塊結晶を体内に取り込むモンスターのみ。


 このインフェルノで魔塊結晶を体内に取り込んで生息する魔物は沢山いるが、身体の一部を使って他人を魅了させるモンスターとなると……。

(…………()()、か?)

 思い出せ。オレ達の仲間の一人、吟遊詩人(ポエマー)のクルスが書いてオレにくれた『超・魔物大図鑑 魔界訂版』(変な題名?文句ならミリークに言え)の中で自分の魔塊結晶を使うモンスターがいたはず……確か、そいつを地上に誘き出すには……。

「【汚泥球(マッドボール)】」

 あの魔塊結晶、否、ハナミリョウというモグラ型のモンスターご自慢の()()()()を汚して……。


 ――――ンガァァァーーーッ!!


 大した恐怖を感じさせない鳴き声を上げながら怒って地上に出てきたところを――――。

「【氷針の陣(アイス・ニードル)】」

 弱点である氷属性の魔法で本体を串刺しにし……。

「【硬石弾(ストーンバレット)】!」

 フェイアをこんなのにした原因を、根元から粉々に…ッ!


 バッキィィーーンッ!!


 モンスターからの魅了状態から解放されたフェイアが、気を失った状態でオレの胸元にもたれ掛かってきた。……意外と柔らかいな。

「……変にキザったらしい真似はやめて、普通に喫茶店で話をしようか」

 今後同じような事が遭ったら流石のオレも堪ったものじゃない。そう誓った。

「……ぅ……ぅ~ん……?」

 おっ。フェイアが目を覚ましたか。

「おはよう。フェイア」

「……あれ?クロード?……アタシは一体何を……?」

 どうやら、魅了状態にかかっていた時の事は憶えていないらしい。それなら丁度良い。

「気にするな。ちょっと想定外な事に巻き込まれただけだ」

「そうなのか?でも……」

 あまり先ほどの事を思い出させたらマズイ。自分のせいでオレに迷惑がかかったと自分を責めてしまう。そういう役割はオレだけで十分だ。……そう。元を辿ればオレのせいなんだから。

「大丈夫だ。……ほら、トリートパンプでケーキを奢ってやる。ついでに食べさせてやる」

「ケーキ…ッ!アーンもしてくれるのか!?良いのか!?」

「あぁ。それだけの働きをしてくれたからな」

「よっしゃあ!!興奮して身体が熱くなってきたぁ!!!……あっ。興奮って言っても、まだ発情期は迎えてないんだからな!?楽しみで気持ちが昂ってるだけだからな!?誤解すんなよッ///!?」

「はいはい」

 その後、オレはフェイアを喫茶店、というより、デザートを専門とした店『トリートパンプ』に連れて行った。


 ―――― チリリィン…。


 転移魔法で街に戻り、店に合わせた上品さを感じる音色と共に、店内に入る。

「よぉ。パンプ。数週間ぶりだな」

「いラっシャいマせ。……おヤ。クロードサん。フェイあサんを連れていくナんて、創業いラいハじめてダね?デート、ナのですカ?」

 今片言混じりに挨拶して話かけてきた細身で礼服のような格好している殿方は、トリートパンプの店主であり、灯火南瓜魔ジャック・オ・ランタン族のパンプーカ・ボッチャー、通称パンプである。文字通りカボチャが頭で左目部分が十字の星型で、右目部分が音符のような穴から小さい火の光が灯っている。口は三日月をかたどっているのか、常時ニヤリと嗤っているように見えるが、骸骨の頭であるクロード同様表情を変えられないため、これが素の顔である。

「……まぁ、そんな所だ」

「そうですカ。…………ミリークサん。フェイあサんにサき越サれマしタね。おカワいそうに……」

「ん?」

「いえ。ナんでもアりマせん。……それで、ご注文ワ?」

 ちなみにパンプーカは、ミリークからクロードへの好意には気付いており、ミリークの恋愛を応援している人物でもある。しかし、仕事はしっかりとこなす性分なので、ミリークへの同情から仕事の気持ちに切り替えて、二人の注文を聞いた。

「オレは……クレナイチゴのケーキと紅茶で。フェイアは?」

「アタシはモンスランと紅茶で!」

「カしこマりマしタ」

 注文を聞き、パンプーカはそれらを取りに向かった。その間、クロードはフェイアを椅子に座らせ、パンプーカがケーキを渡すのを待っていた。

「おマタせしマしタ」

「あぁ。ありがとう」

 ケーキと紅茶を乗せたトレーを受け取り、フェイアが待つ席まで持ってきた。

「お待たせ」

「おう。大丈夫だ。……それより、なんか悪いな」

「良いよ。こういうのは男の仕事だ」

「ハッハッハッ…!似合わねぇな!!ハッハッハッ…!!」

「……オレもそう思う」

 こういったやりとりを始めとしたこのやり取りをデートと呼べるのかは分からないが、お互いの微妙な関係という名の過去に出来てしまった溝を埋めていくように会話に花を咲かせていた。


 ……しかし、この時のクロードはまだ知らなかった。ミリークが帰って来たかと思いきや、どういう訳かフェイアとのデートがバレてしまった時の結末を……。

いかがですか?デートの要素がなかったかと思いますが、

自分、彼女いない歴=年齢なので、お許しください。

お詫びといってはなんですが、

本日はもう一話投稿します(というより、先に作っていた)。

次回は幕間回です。

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