プロローグ:この世界の現在に至るまでの話をしないと
どうも皆さん。はじめまして。緒蘇輝影丸です。
今回初投稿となります。
初めて尽くしのため、拙い表現・誤字・脱字があるかもしれませんが、読者の広い心で読んで下されば幸いです。
まずディザストレの魔王制度は、初代魔王ジェノイザを始めとし、強き魔族の絶対なる力とカリスマ性によって選ばれる。中には知性や残虐性によって選ばれる事もある。
魔王は代々、魔族にとって安息の地を広め、全世界を魔族で埋め尽くし、全魔族の王として君臨するという野望があったのだが、ある存在によって邪魔された。
それが人間である。魔族と比べて特にこれといった特徴がないほか、力もなく、寿命も短い。弱肉強食の思想を持つ魔族にとっては雑魚であり、食われる存在である――――はずなのに絶滅されない。それは何故かと言われれば、人間達が暮らす大陸『モルディガンマ』に君臨したある神の存在である。
【人間はたとえ、個々の力が弱くても、個人特有の長所が一つのチームとしてまとまれば、どんなに強い魔族だって倒せる。それこそ、魔王も倒せる】
そう唱えた神の名は、ユーステティ。愛と秩序を司る女神である。「人間は食料の一つに過ぎない」「弱者がいきがるな」と言うジェノイザを始めとした魔族からの過小評価が許せず、「人間だってやれば魔族以上に出来る事がある」と証明するために、地上へ下り、神のお告げとして、ある人間に女神の恩恵を授けた。
信頼と仲間を集め、絆と愛を深め、限界と恐怖を乗り越えて魔王を倒す。それが選ばれし者、人間にとっての希望の星として使命を果たすのが、勇者である。
結果、魔族にとってはあまりに想定外の出来事に手も足も出ず、初代魔王ジェノイザは勇者達にやられた。
ジェノイザの死により、魔族も弱体化し、一時の平和を手に入れた。――――のだが、今度は人間にとって想定外の出来事が起こった。
ジェノイザが死と恐怖を司る魔神となり、人間に復讐を晴らすために新たな魔王を選び、倒された勇者達に復讐してきたのである。
女の仲間には子鬼や豚鬼などの数が減ってしまった魔族たちの慰み者にされるどころか、魔族の子を孕まされたり、男の仲間には淫魔に精を搾り取られるか、大鬼や悪魔にいっそ殺してほしいと懇願するほど痛い拷問を受けられたりした。
最も、一番酷い目に遭ったのは、ほかの誰でもない勇者である。勇者は頑丈で特殊な鎖を椅子と共に括りつけられ、仲間が魔族に蹂躙される様子を延々と見続けさせるのである。そう。快楽に堕ちるわけでも肉体を壊すわけでもなく、ただ仲間の様子を見せるだけである。勇者のように責任感が強い者、仲間想いが強い者には、肉体より精神、自身より他者を傷付ける方が効果的なのである。
魔族たちの非道な悪行の結果、勇者達は壊滅。中には精神が壊れ、魔族に堕ちた者もいた。
それから数年後、ユーステティはまた新たな勇者を選び、魔王を倒させた。
このように勇者が魔王を倒しては新たな魔王が選ばれ、魔王が勇者を戦えなくなっては新しい勇者が選ばれと、ユーステティとジェノイザによる対立は百年以上も続いた。
その対立の中で最も印象深かったのは、現在からおよそ410年ほど前。当時の魔王の名はパラドゼア。ジェノイザが選んだ八代目魔王である。
パラドゼアは魔王にしては珍しく、一つの体をあえて二つの身体に分離して頭脳と怪力に使い分ける特殊な魔族であった。冷静に戦略的頭脳を使うパラドと、感情的でどんな強固な物でも簡単に壊せるほどの怪力を持つゼアド、性格的には相反する存在ではあるが、元々は一つの体というのもあり、魔王としての目的が一致しているのもあり、コンビネーションは抜群。もし二つが一つに戻った時、ゼアドの超絶的な怪力に加えて、パラドの冷静に敵の隙を窺う頭脳で、敵の動きを見極め、力でねじ伏せる。まさに魔王としては才能がある。
しかし、その頃のユーステティは、新たな勇者を選んでいた。彼の名はライド・スティンジャー。東の辺境国とも言われる『イストバル』出身で、性格は前向きで明るく、勇者になりたい一心で必死に努力をした青年だ。彼自身、卓越した才能はこれといってないが、子供の頃から何年も剣の稽古をしていた事もあり、剣の腕前は折り紙付きである。
それだけではなく、ライドは一度選んだ人が仲間になってくれるためならどんなお願いも聞き、たとえどんなに月日が流れようとも完遂しようとする純粋な心と、絶大の行動力も持っていた。
特に、これから一番相棒となるであろう魔法使い、魔術師には一切手を抜かなかった。
風の噂を頼りに最強の魔術師を探し、イストバルから北の魔法国である『マルトノース』まで出向き、見つけて早々仲間になってくれと勧誘した。しかし、断られた。理由は、元・最強の魔術師に勝ってからというもの、自分がその最強の魔術師になり、それから毎日のように各国の者から勧誘されていい加減ウンザリしている。とのこと。理由が理由であったため、ライドは悩んだ。何せ、ライドも最強の称号に釣られてやって来た者の一人なのだから。しかし、諦めたくはなかった。
なので、ライドは魔術師に交渉をした。というより、「いっそ仲間になれば、勧誘ではなく、魔王退治頑張ってみたいな応援に変わるのでは」と魔術師がマルトノースに留まるという根底を覆したのである。その極論にこれは一本取られたと魔術師は納得をした。ただ、仲間になってくれるかと問われれば話が変わる。一応魔術師は魔法使いでありながら、魔法薬や魔導具を売る商人でもあるため、魔術師にとっての利益を求めた。すると魔術師は、予想を超えたライドの回答により、仲間になった。
それからは、ライドの前向きさや魔術師の冷静さによって、簡単に仲間が増えた。
魔法国のマルトノースでは、魔術師がたまに行く街外れの孤児院に住む修道女が。
西の要塞国である『ウストウェル』では、熱血と頑強が取り柄の守護者が。
南の砂漠国である『カロサウス』では、非力ながらも綺麗な歌声で他者を癒す吟遊詩人が。
ライドの故郷である辺境国のイストバルでは、引っ込み思案だけど心優しく、動物に愛される召喚士が。
そして、モルディガンマの中央に位置する聖天国『ミドメイラ』では、治安を正すための裏社会で働く暗殺者が、ライドの仲間、勇者団に加入した。それぞれの想い、目的は違えど、同じ人間として、同じ道を歩んだ。旅をし続けていく内に、各員それぞれの長所と短所を認め、いつしか団体みんなが友達とは違う特別な関係になり、お互い楽しく笑い合うようになった。
そんな感じでライド達が仲良くなり、旅をしていたある日。パラドゼアの命令により、隠密などに長けた魔族が、ミドメイラの王宮『ユートティア城』の近衛兵を使って王女殿下、もとい姫様を誘拐した。
それを聞いたライドは、一刻も早く救出せねばと焦っていたが、魔術師が「ロクに装備を整えず敵陣に乗り込むのは無防備に攻めようとしてるのと同義だ」と怒られた。
魔術師の叱責により、ライドはなんとか気持ちを抑え、勇者団全員の装備と技量を最大限まで伸ばし、万全の状態で魔王パラドゼアに挑んだ。
結果、平均二十年から三十年かかる魔王退治を、わずか十年で倒すというイレギュラーが発生した。これには魔神ジェノイザや女神ユーステティに限らず、全神々も驚きを隠せなかった。
史上最短でパラドゼアの時代を終わらせた事に、ユーステティは優越感に浸った。何せ、史上最強の勇者、否、勇者団の結成により、ジェノイザが委縮し、手も足も出ない状態になったのだから。
……しかし、ユーステティは知らなかった。史上最強の勇者ライドが――――次世代の魔王として寝返る事を密かに決めていた事を。
ユーステティはその思惑を最後まで気が付かず、ジェノイザがそろそろ次世代の魔王を決めようとしたその時に、勇者ライドが勇者団とパラドゼアに攫われた姫様、その姫様の専属侍女を連れ、ディザストレの魔王城に突然訪れたのだ。
そして、魔王の玉座の前で跪いた勇者団達から、ユーステティにとって最悪の言葉を聞いた。
【魔族に対する人間の態度を変えるために、我らは魔王軍となる】
この言葉を聞いたジェノイザも、驚きを隠せなかった。今までは魔王の最後の悪あがきとして勇者を堕天させ、次世代の魔王にさせる事は一、二回あったが、勇者自ら魔王を志願するのは魔神になって以来初めての出来事であった。しかも、志願した勇者は仲間に加えて姫様と侍女揃っての志願である。ジェノイザとしては、これ以上にないくらい喜ばしい事ではあるが、魔王にさせようにも彼らの種族が人間であるため、出来ないと伝えたかった。しかし、神は基本、役割として伝えるべき神託以外の発言は禁じられている。つまり会話が出来ないのである。
それを察したのかは分からないが、勇者ライドの相棒である魔術師が、ぶつくさと何かを唱えていた。何かの詠唱魔法であろうが、あまりにも小さい声で唱えているので、何の魔法なのかが分からなかった。魔術師が唱え終わった瞬間、ジェノイザとユーステティは驚きの光景を目の当たりにした。
――――跪いた勇者達全員が、魔族になったのである。
角が生えた者、獣耳が生えた者、鱗が生えた者、羽が生えた者、首が転がった者、骨の体のみとなった者などと、一人一人の種族が人間から多種多様な魔族に変わったのである。
魔術師が唱えた魔法は進化魔法、もしくは転生魔法という、数ある魔術の中でもかなり難しい部類の魔法なのだ。使えた人間がいた事にも、転生の代償を払わずに成功した事にも、この時の為に習得していた事にも、正直驚愕的過ぎて言葉も出なかった。……というより、あまりのイレギュラーっぷりに少しばかり引いた。
魔族になってしまった以上、史上最強の勇者団を前に断るわけにもいかず、ジェノイザは、勇者ライドを九代目魔王ロスト・シュナイドとして、ディザストレを支配させた。
対してユーステティは、ライドから魔王ロストになってしまった事に怒り、選りすぐりの勇者を選び、早急に退治しようとした。
しかし結果、ユーステティが選んだ勇者達は新魔王ロストのいる最上階にすら到達出来ず、五、六回ほど全滅した。その間ライド改めロストは、ある条約を人間達の地、モルディガンマに求めた。
『モルディザス条約』。人間と魔族との関係性を優先にした条約である。
人間は武器や防具、アイテムを作るために、ギルドの冒険者に依頼し、半ば強引に魔族から素材を奪うので、武器や防具、魔族の素材が必要なアイテムを、ディザストレで作ってモルディガンマに輸送する。その代わり、魔族の乱獲を止める事。
モルディガンマに住みついた魔獣もとい、知能の低いモンスターは、生態系を壊さない程度の狩猟を許す。
ディザストレには通貨がないというより、必要ないため、輸送品を買い取る際は、お金ではなく、人間ならではの技術、もしくは大量の食料(最悪の場合、生贄)を払う。いわゆる物々交換である事。
どうしても人間を殺したい魔族、魔族を殺したい人間は、モルディガンマのどこかにある裏闘技場で戦う事。もし公認していない裏闘技場で戦った者は、参加者も観客も、全員犯罪者として罰せられる事。
そして、平和に暮らすために、人間と魔族は貿易以外での接触を禁ずる事。等々…。
これらの条約に異議を唱える者は、発案者であるロスト、もしくは吟遊詩人のもとへ来る事。
この条約を要求、公言した当初は人間は勿論、魔族も反対の声を上げた。
人間サイドは、そもそも魔族の発言を信じる事が出来るはずがないし、ましてや人間達の敵に回った勇者に、人間の権利を好き勝手させないという人間全体視点での反対意見で、魔族サイドは、人間を今すぐにでも殺したい、仇をとりたい、人間は嘘つきだ、なりたて魔王の意見に従わないと自分視点での反対意見だった。
そんな紆余曲折がありながらもロストは、魔術師や姫様の協力により、150年ほど経ったある日、とうとう人間は魔王達の力を前に根負けし、条約を認め、締結した。
条約を結んだその後、魔王ロスト達は公言したとおりに実行し、予想より早く、意外とこの生活の方が快適だと思い込み始め、気が付けば、人間と魔族との間に起きたわだかまりは、いつしか消えた。というより、貿易関係といった作業的認識しかしなくなった。
条約が締結されてから約130年後、魔王ロストは姫様との間に生まれた娘を十代目魔王に継承し、ロストは実権持ちの城主として、魔王を引退。
かくして、史上最強の元・勇者の魔王時代は終わった。
しかし、魔王の世継ぎに人間と魔族は特に異を唱えず、様々な事で感覚がマヒしたのか、普通に受け入れた。
十代目魔王の名はスフィア・M・シュナイド。時代がスフィア時代になったと同時に、両国完全平和時代として、現在も続いている。
とはいえ、あくまで両国の間での戦争などがなくなっただけであって、国内で起きた小さな事故などは後を絶たなかった。それは、魔界島であるディザストレも例外ではない。
今日もまた、小さな事故が起きた。
「城主様ー。――――また灰色熊族のグズリさん夫婦が喧嘩してるみたいなんですー」
いかがでしたでしょうか?
ファンタジー要素があまりないように思えるでしょうが、これからが楽しみだと思って下されば、幸いです。
次回の投稿は不明ですが、なるべく早く投稿するように頑張ります。