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続・聖剣、解体しちゃいました  作者: 心裡
学生長選編
8/41

巻き込まれる家系

 決闘騒動からしばらくはそれなりに平和に暮らしていた。

 イスラの課題を手伝うのもいつものことだし、ミアに届いた男女問わないラブレターの返信を一緒に考えてあげるのもいつものことである。

 違うことといえば、ホルスト先生が「次はいつ姫様グッズを入荷するのか?」と聞いてきて若干うっとうしいくらいである。


 この時期は去年は迫る夏季休暇の話題で持ちきりであった。

 が、今年は違った。

 少なくとも私たちは夏期休暇にしか興味がなかったが、大勢の学生は別のイベントに興味を持っていた。


「セリナは今年の夏季休暇はどうするのだ?」

「私は去年と同じでワーガルに帰るわよ。ミアはどうするの?」

「そうだなぁ。せっかく叔母上も帰ってきたことだし、鍛え直してもらおうかと思っている。」

「そりゃまたハードな予定ねぇ。」

「またいつ居なくなるかわからないからな。」

「あー、確かに。」


 その日は休日で、私の部屋でお茶をしながらだらだらとしていた。


「ねえ、あんた達。」

「なんだイスラ。お金なら貸さないぞ。」

「んなこと頼んでないわよ! てかミアが貸してくれたこと一度もないでしょ!」

「じゃあなんだ?」

「なんで夏季休暇の話題しかしてないのよ。今の貴族学校の話題と言ったらあれしかないでしょ?」

「ミア、わかる?」

「セリナ、すまない。私にもわからない。あれか、期末試験か? 確かにイスラにとっては重要だな。」

「なるほど。確かにね。」


 私とミアは納得して頷き合う。


「違うわよ! いや、期末試験が気になるは確かだけど…。」

「じゃあ、なによ?」

「学生長選挙よ、学生長選挙。明日は立候補者の公示日よ!」

「「あったなそんなの。」」

「なんなのこの子たち。え、私の方が平均的な学生のはずよね。なんで私がずれてるみたいになってるの…。」 


 確かに最近学校のあっちこっちでやかましい宣伝活動をしている。

 今年は期末試験終了後に2年に一度の学生長選挙が行われる。

 投票は全学年が、立候補は1年生から3年生が誰でもすることができるこの制度は普段ならやる気のある人間がやってくれたらいい程度のものであった。

 なにせ学生長になったら学生を代表して外部の人間に会ったり、学生生活について先生と交渉をしたり、面倒な事務作業をしたり、学生の揉め事の仲裁をしたりと、なにかと大変である。 


 ところが派閥争いの激化している今年はいつもと違う様相を呈していた。

 今年はすでに侵攻派と融和派が双方候補者を立てることを宣言して争っている。

 というのも、学生長になると学生の3分の1の賛成を得れば、罰則付きの学生長令を発することができる。

 任期の切れる現学生長は派閥に所属していない4年生の先輩であり、学生長令を発布してはいない。

 が、派閥の人間が学生長になればどうなるかなど一目瞭然であった。


「けど、侵攻派も融和派も興味ないから私には関係ないわね。」

「ああ、そうだな。私も棄権しよう。」

「あんたたちなに言ってるの。棄権はできないわよ。」

「「は?」」

「いや、私に凄まれても困るんだけど。ともかく、投票は学生の義務よ。」

「「えー。」」

「いやなら立候補するしかないわね。」

「おお! それだ!」


 ミアが急に立ち上がる。


「よし! ちょっと行ってくる!」


 ミアはそういうと部屋を出て行ってしまった。


「なんだったの…。」

「そうねぇ。まあ、ミアって貴族とはいえ一応王族の血筋だし、派閥に投票するのはマズイと思って立候補しに行ったんじゃない?」

「ああ、なるほど。それなら私もセリナも投票先ができて良かったわね。」

「そうね。もしかするとミアが立候補したら通っちゃうかもね。」

「あー、確かにミアってすごい人気あるからね。男の子からも女の子からも。」

「ほんとよね。ラブレターの返信を考える身になってほしいわ。」

「セリナ、後ろから刺されないようにね…。」

「怖いこと言わないでよ…。」


 しばらく二人で話していると、ミアがニコニコ顔で帰ってきた。


「うむ。万事うまくいったぞ。」

「そう。それは良かったわ。」

「明日の公示が楽しみですなぁ。」

「そうだな。」


 ―――――――


 翌朝私は掲示板の前で固まってしまう。


『学長選挙立候補者一覧』


 ・クロト・カフン   3年生

 ・ロイス・シュレック 3年生

 ・セリナ・エルス   2年生



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