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続・聖剣、解体しちゃいました  作者: 心裡
学生長選編
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鷹が鷹を生む

「ふう。今日も一日終わりっと。」


 私は一日の授業が終わり夕食も食べて寮の個室へ戻る。

 貴族の子どものためということで、ベッドに勉強机、さらに普通のテーブルと椅子が4脚も備えられ、本棚その他の家具まで揃っている。

 はっきり言って実家の私の部屋なんかとは比べ物にならないほど豪華である。


 部屋に入るなり、ベッドへと倒れ込む。

 そして、そのままモゾモゾと制服を脱いで楽な格好へとなる。

 お母さんに見られたらカミナリを落とされそうな光景である。


「とりあえず。お風呂の時間まではこのままでいよ。」


 2年生の女子に割り当てられた、お風呂の時間までまだ少しあった。

 なんとなく、今の自分のステータスを確認すべく左手首に触れてみる。


 氏名:セリナ・エルス

 職業:学生(ランク15)

 スキル:鍛冶

     鑑定

     遠近攻撃


「はあ。こんなのばれたら派閥間で争奪戦ね。」


 私は自分のスキルを見ながら苦笑いをする。

 まあ、自分の今までの人生を振り返れば当然と言えば当然であった。


 この世界では職業に対応したスキルが与えられるのが基本である。

 しかしながら、他職業のスキルであっても弟子入りするなりして訓練をすれば会得することは可能である。

 転職する者などはこの道を通る。

 もちろん転職せずともスキルを覚えて使うことができるが、職業ランク比例で効果の向上するスキルなどは完全に死にスキルとなってしまう。

 商人などが使える鑑定は職業ランクに比例しないため、有効なスキルである。

 とはいえ、そもそも転職もしないのに弟子入りまでして訓練をするような者はほとんどいないが。


 私は幼いころからお父さんに仕込まれ、お母さんの手伝いをし、国内最強のギルドや騎士団の人とチャンバラなんかをして遊んでいた結果気が付けばスキルを取得していた。

 このうち、鍛冶と遠近攻撃は職業ランク比例である…のであるが学生という職業は少々特殊であった。

 学生は将来のために本職よりは下方修正されているが、全てのスキルを使えるようになっている。

 そして学生のランクは覚えているスキルの習熟度に応じて上昇する。

 ちょうどお父さんが鍛冶の腕を磨いて鍛冶屋のランクを上げたのと同じように。

 ……にしてもお父さんの伸び率はおかしい気がするがその秘訣は教えてくれない。


 トウキショックによって冒険者や戦士のような戦闘系の人のランクはインフレしてしまったが、その他の職業においては未だにランク5もあればその道のプロである。

 学生だって似たようなものである。

 戦闘系の技能のある学生のランクは高い傾向にあるが、学生のランク上昇率は非常に低く設定されている。

 そんななかでランク15である。

 正直、この学校での決闘を申し込まれても武器さえあれば、一人を除いて負ける気がしない。


「まあ、私とあの子が決闘することはまずないでしょうし問題ないか。」


 チラッと脱ぎ捨てた制服に目が行く。

 なんだかワーガルのことを思い出してしまってから、しわくちゃの制服に罪悪感が湧いてきた。


「うぅ…。お母さんの怒った顔が目に浮かぶ…。ちゃんと片付けよう。」


 別に家事は嫌いではない。

 むしろ得意である。

 お母さんやリセさんにがっつり仕込まれた。


「せっかくなら鍛冶スキルじゃなくて家事スキルが欲しかったなぁ…。」


 ぶつくさと言いながらもお風呂までの時間を服を片付けたり、部屋を掃除したりして潰したのであった。


 ―――――――


「お願いします! この課題教えて下さい!」


 お風呂も済ませていよいよ、あとは寝るだけとなった時間帯にイスラが部屋を訪ねてくる。

 どうやら今日のホルスト先生に追加された課題が終わらないようである。


「はあ。仕方ないわねぇ。」

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

「ちょっと! 自然と靴を舐めようとするな!」


 イスラを部屋に入れてやると机に座らせる。


「ええと…、ここなんだけど…。」

「ああ、これね。ってこれこの前の授業でやったじゃない。」

「え、マジ?」

「マジ。」


 それからしばらくはマンツーマン指導をする。

 こうして教えていると、イスラだって男爵家の令嬢として教育を受けて来たから頭は悪くない。

 ただ、どうも抜けているところがあるようだ。


「ふぃ。終わった。セリナ、ありがとうね。いやー、思ったより早く終わってよかったわ。」

「どういたしまして。もちろんお礼は期待していいのよね?」

「そ、それはもちろんですよ…。」

「なんで目を逸らすのよ。」

「いやぁ。その、ちょっと今月は厳しいかなぁって。」

「あんたまた仕送りをあれにつぎ込んだの?」

「うぐ。」

「まあいいわ。そのうちお願いね。」

「すみません…。」


 その後、消灯時間までイスラと談笑をしていたとき、ふと尋ねられた。


「そういえばさ。」

「うん。」

「こんだけできるなら将来はやっぱりお父様の跡を継ぐの?」

「いや。鍛冶屋はないかな。」

「あら。またなんで?」

「まず、鍛冶屋としてお父さんを超えることはまずできないと思う。それになにより。」

「なにより?」

「鍛冶屋は儲からない。」

「あー、確かに。」

「さ、そろそろ部屋に戻りなさいよ。」

「んじゃね。」


 イスラを見送ったあと、私はベッドに倒れ込んだ。


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