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鍛冶屋の姉弟

 帰省して明日で一週間となろうとしていた。

 そろそろ、帰省した目的を果たさないとなぁ。

 そう思いながら、自室から出る。

 朝からなにやら一階が騒がしい。


「お母さん、なにか…。ああ、そう言うことか。」

「姉ちゃん! 見てないで助けてくれよ!」


 玄関では黒髪の少年が中年女性に抱き着かれている光景が広がっていた。

 ちなみにお父さんはいつものことと相手にしていない。


「怪我してない? アベル君にいじめられなかった? リセさんはちゃんと報酬払ってくれた? ジョゼに毒を盛られなかった?」

「大丈夫だよ! てか、どんだけ街の人を信用してないんだよ!」

「コウキ、お帰り。」

「ああ、姉ちゃんもお帰り。じゃなくて、母さんを剥すの手伝ってくれよ!」

「無理よ。あんたで剥せないのに、か弱い私にお母さんを剥がせるわけないでしょ。あきらめなさい。」

「この薄情者!」


 結局それから10分くらい母子の格闘は続いた。

 お母さんはとんでもなくコウキのことが好きである。

 なんでも若いころのお父さんそっくりとのことだ。


「はぁ…、はぁ…。や、やっと助かった…。」

「はい。これでも飲みなさい。」

「ありがとう。絶対母さんは冒険者をするべきだ。」


 リビングに疲れ切った様子で座っているコウキにお茶を出してあげる。

 お母さんはここ数日で一番テンションが高い。

 鼻歌混じりに買い物に出て行った。

 夕食は豪華にするそうだ。


「今回はそこそこの遠征だったみたいね。」

「うん。アベルさんがCランクになったならこれぐらいのクエストをこなさないとって。」

「そうなんだ。で、どうだったの。」

「もちろん。バッチリ達成したさ。」

「おお!」

「今回はさ。魔法を使ってくる厄介なモンスターが相手だったんだけどな。サクッと倒してやったさ。アベルさんも驚きの顔を隠せてなかったよ!」

「やるわねぇ。」

「まあ、父さんが作ってくれたこいつがあるから。」


 そういって、コウキは綺麗に輝く槍を掲げる。


「あれ? 前に見たのと変わってる?」

「ああ。Cランクになったときに父さんが新しく作ってくれたんだ。」

「へー。ちょっと見せてよ。」


 そういって、槍を鑑定する。


【グングニル】

 攻撃力 8000

 防御力 8000

 光属性

 重量削減(極大)

 全ステータス強化(極大)

 状態異常耐性(極大)

 自動回復(極大)

 切れ味保持(永久)

 速度上昇(極大)

 魔法耐性(極大)

 耐久性(永久)


「は? なにこれは?」

「なんでも、昔から貯め込んでた素材を惜しげもなく使ったとか言ってたよ。」

「いやいやいや。え、なに? あんた神とでも戦うの?」

「そんなわけないだろ。」


 ああ、お父さんも大概コウキに甘かった。

 というよりこれ聖剣レベルの逸品じゃない。

 そりゃ、アベルさんも驚くわよ。

 全く、普段は日用品しか作ってないから忘れてたけど、攻撃することを目的とした武器を作ればとんでもないんだった。

 確かちょっと前に近衛兵の装備を改修したときには、初代雷虎ぐらいのショートソードを作ったとか言ってたし。

 やっぱお父さんはおかしい。


 数日後ジョゼ姉に会ったとき、「最近アベル君が自信をなくして元気がないんだけど、セリナちゃん理由分かる?」と相談してきた。

 すみません。それうちのバカ親と弟のせいです。


 ―――――――


 その日は久しぶりに一家四人が全員揃った食事となった。

 なんだか私が帰ってきたときより気合が入っている気がする。


「なあ。」

「どうしたの?」

「その…、姉ちゃんはそれなりに美人だと思うぞ?」

「なによ急に。」

「いや、だからさ。その…。」

「なによ。気持ち悪いわねぇ。」

「女性は胸がすべてじゃないと思うぞ。なにも父さんに頼んであんな能力を風呂に付けてもらわなく…やめろ! そのナイフ、食事用だけど父さんが作ったやつなんだから! 頼むから下ろして!」


 そうだった。

 こいつも鑑定スキル使えるんだった。

 始末するしかない。


「ふふ。コウキもセリナも久しぶりにあえてはしゃいでるわね。」

「ああ。姉弟の仲がいいのはいいことだ。」

「母さんも父さんも和んでないで助けてくれよ! ってか姉ちゃんなんでそんなに力強いの!」


 周囲の家は、「伯爵家が久しぶりに騒がしくなったなぁ。」と微笑ましく思っていた。


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