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続・聖剣、解体しちゃいました  作者: 心裡
学生長選編
12/41

里帰り

 私は今、王都からワーガルに向かう馬車に揺られている。

 もう少ししたら、到着する予定だ。

 今後の学生長活動については悩んでも仕方ないので、夏季休暇明けに話そうということになり、イスラとミアにも色々考えてもらうように頼んでいる。


「しかし、セリナちゃんも大きくなったなぁ。」

「いやいや、去年の夏もあったじゃないですか。」


 馬車の御者のおじちゃんと会話する。

 すでに馬車には私しか乗っていない。


「そうだったか。そういえば今年は友達は来ないのかい?」

「ええ。今年は二人とも予定があるそうなので。」

「そうかい。おお、ワーガルの入り口が見えてきたぞ。」


 おじちゃんの言葉に私も外を見る。

 ふむ。いつも通りの入り口だ。

 ハッキリ言ってなんの感慨も湧かない。

 なにせ長期休暇のたびに帰省している。

 帰省しないとある人がとんでもなく嘆き悲しむ。

 去年の冬期休暇に帰省しないでおこうかと思って手紙を書いたら、毎日のように涙で滲んだ手紙を送ってきた。

 まあ、今回の帰省には目的があるからいいんだけど。


「よし、到着じゃ。それじゃあ、トウキさんとエリカさんによろしくな。」

「はい。ここまでありがとうございました。」


 私は馬車を降りると、街に向かって歩き出す。


 ―――――――


「あら、セリナちゃんおかえりなさい。」

「雑貨屋のおばさん。ただいま。」

「またお店にいらっしゃいな。」

「はい。落ち着いたらお邪魔しますね。」

「まあまあ。すっかり貴族のお嬢様になっちゃって。」

「あはは…。」


 道を歩けば会う人会う人から挨拶される。

 まあ、これでも一応領主の娘だしなぁ。

 実感は全くないが。


 それにしても、やっぱり全然変わってないなぁ。

 実家を目指しながらそう思う。

 王都なんかだと、3か月もあれば新しい店ができたり、施設ができたりするのに。

 この街は私が生まれてからほとんど変わってない。


「おお、セリナか。お帰り。」


 この街で一番豪華な建物の前に来たとき、元気な声に呼び止められる。


「フランクさん、ただいま。なにしてたんですか?」

「いや、ギルドの前を掃除していただけさ。」

「なるほど。てっきり冒険に行く前かと思いましたよ。」

「ははは。さすがに最近は若い者に任せているよ。」

「そういいながらも、昔を思い出すとかいってピナクル山に行ったって手紙でお母さんが書いてましたよ。」

「むう。あのあとリセにしこたま怒られて大変だったんだ。『あなたはもう60歳なんですからね!』とな。自分としてはまだ動けるのだが…。」

「あはは…。」


 あんたみたいな60歳が居てたまるかと正直思う。

 多分未だにアベルさんといい勝負するんじゃないかな。


「それでは、私はこれで。」

「ああ、早くトウキとエリカに元気な顔を見せてやるといい。」

「はい。あと、コウキのことお願いしますね。」


 私はぺこりと頭を下げると家へと急いだ。


 ―――――――


「ただい…うわっ!」


 玄関のドアを開けて挨拶をしようとしたら、いきなり衝撃が私を襲った。

 いやまあ、原因は検討つくんですけどね。


「セリナぁぁぁぁぁ! おかえりぃぃぃ! 会いたかっ、ぐほ!」


 私に抱き着いたお父さんをお母さんが一撃で沈める。


「あのねトウキ。もうセリナも19歳なの。会いたかったのはわかるけど抱き着くんじゃないわよ。」


 去年の夏も19歳の部分が18歳だっただけで全く同じ儀式を行った記憶がある。

 しかし、私が貴族学校に行ってからと言うものお父さんはますますキモクなった。


「はあ。ともかく、おかえり。つかれたでしょ。」

「ただいま。ちょっとね。いや、さっきのでドッと疲れた。」

「トウキはあとでお母さんが締めとくから、とりあえずお風呂でも入りなさい。」

「うん。そうする。」


 お母さんに促されるまま、お風呂に向かう。

 数少ないお父さんの評価ポイントとして我が家の風呂がある。

 これはお父さんが作った物でやけに高性能である。

 というか、年々アップグレードされている。


「さてさて、今回はどんな感じかな。」


 湯船につかる前に、お風呂に対して鑑定スキルを使う。


【匠の風呂】

 攻撃力 500

 防御力 1000

 保温(極大)

 美肌効果(極大)

 疲労回復(極大)

 汚れ除去(極大)

 育乳(中)


 うん。もうこの際、おとうさんの作品だからお風呂にとんでもない攻撃力とか防御力があるのはどうでもいい。

 浴槽を振り回して戦う人もいるかもしれない。

 そして色々な効果もありがたい。

 特に美肌効果は嬉しい。

 けど、最後のはなんだ?

 こんなものこの前帰省したときにはなかったぞ…。


 ちらっと自分の胸を見る。

 いや、お母さんほどではないにしろあるはずだ。

 少なくともリセさんよりあるはずだ。

 うん。ジョゼ姉といい勝負のはずだ。

 それにまだ焦るような歳じゃない…はずだ。


 そう言い聞かせながら、いつもより長風呂をしてしまったのだった。


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