彼女の死の運命
どうでもいい事
世の中にはたくさんあって
一つの特別を見つけたくて
俺は平凡を選んだ
その選択に後悔はあるのですか?
白い誰かが問いかけた
別にどうだっていいことだ
俺は答えた
一年前、俺に転機が訪れた。
D大学在学中の当時18歳の俺が消しゴムを忘れたことから始まる。
消しゴムを忘れた俺は、やっべぇとか思いながら探していたんだ。黒いリュックサックの中を探していたら、机の上をコンコンと音がした。急いで見上げると見たこともない消しゴムと折りたたんであるメモ帳。
メモを開くと
「消しゴム忘れたの?
忘れたならこの消しゴム、使っていいよ!」
ととても可愛らしい字で中心に書かれていた。
あたりを見回すと隣の席の子が微笑んでいるのに気がついた。ちょっと茶髪でセミロングくらいで先っぽがくるんとしていて、目がぱっちりでもうこれはモデルになれるくらいの美人な可愛い子だった。
そう、強いていうならここで俺は恋に落ちたんだ。
そんなことがあって、後からお礼を言う。
「消しゴム、ありがとう。
おかげで助かりました。」
「いいの!気にしないで!」
彼女は何故か震えていた。
「ど、どうかなされたんですか。」
「いや、入学してから、あまり人と喋ってなくて...、これは歓喜の震え!歓喜の震えだからね!...、ちょっとなんで笑うの!」
本当に可愛い子だった。
「あぁ、俺の名前は風谷隼って言います、しゅんは隼人の先の方を書いてしゅんって呼びます。」
「じゃあ、私もだね!私は神沢天音って言います、漢字は、ちょっと待って、はいこれ!」
そういってスマホを近づけてきた。
神沢 天音。
なんか、とてもキラキラした名前に聞こえたのを覚えている。
彼女は自分のアンティーク風な小さい腕時計を見て、
「あっ、バスに乗り遅れちゃう
じゃあね!隼くん!」
「あっ、バイバイ!」
「明日も同じ講習受けるよね?
また隣に座ろうね!隼!」
「は、はい!」
彼女はクスクスと笑って走りながら、そんなことを言った。
そんなこんなで仲良くなった俺はある日の講義の終わり、1通の手紙を彼女に渡された。
「好きです。」
可愛い字でそう書いてあった。
もちろん次の日にOKした。両思いというやつだった。
晴れてカレカノというような一般的にリア充と呼ばれるようなカップルになったというわけだ。
その日から約1年、時々喧嘩もしたけれど、俺達は仲が良くて別れることはなかった。
彼女は1つ悩みを抱えていた。
それは『存在感がないこと。』
「初めて貴方が自分から声をかけてくれた。」と彼女は語った。彼女曰く、自分がいないようなそんな扱いを受けていたらしい。
いじめ?と聞き返したら、
「そんなことないよ。ほんとに皆私に気づいてなかっただけなの。」
と言った。
代わりに彼女は
なぜいつも手袋をしているの
と聞かれたことがあった。
そう、俺は手袋を常にしている。
この秘密を知るのは家族と親友だけだ。
話してもいいだろうと思った。彼女になら。
「実は触ったものの未来が見えるんだ。」
「触ったものの未来?」
「触ることで未来が見えて、あんまり見たくないからちょっと手袋をしてる。」
はにかんだように笑って見せた。
すると彼女は
「ねぇ、私の未来も見てみて、未来」
「いいの、本当に?」
「大丈夫だよ。」
俺は黒色の手袋を外して彼女の手に触れた。
流れ込んでくる、これから1ヶ月の彼女の姿が。
いや、流れ込んでくるはずだった。
途中でエンドロールにたどり着いた。
俺はこの現象を知っている。
なんて、タイミングだろう。
俺の血が顔からすうっと引いていくのがわかった。
彼女は明日交通事故で死ぬ。
バスの破損、つまり彼女が乗ってたバスが事故に会うのだ。
死ぬ未来は変えられることを俺は知ってた。
だから
「今日はちょっと家に寄って欲しい」
とそんなことを言って彼女を家に連れていった。
勿論、何もしてない、そんないやらしいことは。恋愛下手の俺に出来るはずがない。
案の定、天音が朝乗るはずのバスが事故に遭っていた。
天音は
「えっ?本当に?事故があったの?怖いね~。」
と他人行儀のように言っていた。
これで運命は変えられた。
でも妙な胸騒ぎがしたのでさりげなく、手袋を外して彼女の手に触れた。
なんで?また?
1週間後にショッピングモールで無差別殺人の的となり死亡
二回目ってなんだよって思いながら、俺は天音の顔を見る、なんというか、いきてるって感じで、また死ぬ運命にあるって嘘みたいで。
守らなきゃいけない。天音を、この生活を。
1週間後。
彼女は買い物に行きたいと言い出した。今日はまた、運命を変えなきゃいけない日だ。
できればショッピングモールに行かせたくない。
「でも、明日、妹の誕生日なんだ。」
という天音にしぶしぶおれはついていくことにした。
今日は手袋をつけない。
なんで?といわれたが、そんな気分だと言っておいた。
...この広場にさえいなきゃいいのだ。
天音が。
俺達はこの広場を避けて歩いた。
俺の見た天音の未来は変わっていた。
要するに天音は死ななかった。運命は変わったのだ。
でも、また1週間後に天音が死ぬ未来を見た。
3回も来るだろうか?こんなことが。
大学でたまたま落石みたいな事故が起きることだった。
屋上で育てていた花の花瓶が天音の頭に当たるという事故。
嘘だろと思いつつ、俺はその1週間後のために務めた。
何を務めたかって、どう守るとかそんなこと
俺の考えた案はこうだ。
できれば屋根のあるところにいて、屋根がない外は俺が一緒に回る。
「隼、なに?なんでそんなに過保護なの?」
まぁ、こんなことを言われると思うが。死なれるよりはマシだろう。
そして、これも彼女が運命を回避した。
流石に3回目ってなんだよとか思いつつ、怖かったので彼女の未来をもう1度見た。
明後日心臓マヒ?
嘘だろって。心臓マヒなんてどうしようもないじゃん。
どうしたらいい。いや、もうお手上げだ。
神様、お願いだから天音を連れて行かないでくれ!
よくよく考えると、天音の家はなんか有名そうなお寺さんだった。
ということは...
4回も彼女が死ぬ運命にある。
誰かがしているのか?
いや、そんなこと...
が考えられてしまった。
そして、家にいた俺は
はっと。俺は彼女を助ける最終的な方法を思い出した。