表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/28

ダメなサー子の蘇生の義➂

「こまりました…。黒の魔法はすぐにでも発動せよ、との大臣のご命令でして…」

 とりあえずやってみてくれませんか!という、つよーいドラヴァヒさんの願いを聞き届けずにはいられませんでした。

 ここの領主の伯爵いえば「フォンテーヌ伯フォンデンブルグ大臣」といって「カルベルシュタイン王国」の王直属の大臣であります。

 とにかく領主の至上命令とあればすぐに港へと向かわねばなりません!


 フォンテーヌ港の船着き場では、あいかわらずおばけダコと市の軍隊との壮絶な争いが続いておりました。

 カルベルシュタイン王国に名だたるフォンテーヌ海軍の巡洋艦が一隻沈められ、誰の目にもフォンテーヌ市の破産と王都からの戦列艦の援軍はゼッタイ。必要。だと思っていました。

 そこに、たよりない女の子が3人。

 立ち入り禁止の管理区域の最前線にやってくるではありませんか!


挿絵(By みてみん)

※サー子とぷーんです。こんなかわいい子らがタコ退治するのです!


 必死の防戦につとめている兵士たちはもちろん、現場で指揮を執っていた女士官のエルフであるセルリエーン大佐も、その特徴的な長い耳を真っ赤にして、ストレートの美しい見事な金髪をふりふり、怒りをあらわにして言いました。

「おお! なんということでしょう! ドラヴァヒがよこした黒魔導士が!?」

 ぷーんは、間髪入れずこう言いました。

「ご注意あそばせ大佐どの。ここにいるサー子は黒魔法をコントロールできませんので、いったいどうなるかなんて神のみぞ知るところなんですからね???」

 ほんっっと保証しませんから!っていうダメ押しの一言に、兵士もセルリエーン大佐もたじっとなってしまいました。

 おばけダコは、停泊しているヨット級はおろか駆逐艦クラスの帆船にまでその触手をからめてもてあそんでいます。

 概算でも金貨20000枚は損失を出していることでしょう。たった3日の間だけでも。

 さすがのセルリエーン大佐もこの現状になすすべもなく、わらをもつかむ思いでこう言いました。

「サー子さん、はやくあのおばけダコに恐怖の黒魔法をお願いします!!」


 船着き場のカシの木でできたデッキから、その問題のおばけダコを眺めました。

「ううん距離もあるけど、あのタコちゃんは恐怖の魔法で葬るしかありませんね」

 サー子はいたって冷静にそういうと魔法の祈りに集中しました。


 誰しも最初は魔法なんて自由に使いこなせません。

 どんな魔法をしこんでいるのか、どのくらいのパワーを使えるのか。


 まったく想像もできないものなんです!

 サー子もぷーんも。だりきゃだって。

 最初にどんな魔法が選択できるかは、わからないのです!


 サー子の1ターン目。

 7つの闇の精霊かエネルギー源が手元に来ます。

 とりあえず精霊や魔法もエネルギー源がないと使えませんので!

 闇のエネルギー源をひとつ、この戦いのフィールドにしかけます。

 これで、1闇エネルギーがいつでも供給されるようになりました!

 黒い光の玉は7コから6コになりました。

 使える魔法は……、まだなさそうです。


 ぷーんの1ターン目。

 7つの水の精霊かエネルギー源が手元に来ます。

 水のエネルギー源をフィールドにセットします。

 ぷーんには1水エネルギーで使えそうな魔法が手元にありましたので、さっそくつかいます!


「回転!!」


 ある物体に外から流動するエネルギーを一定の方向だけに流します。

 そうすることによって、ターゲットは。

 …ぐるぐる回りだすのです!

 おばけダコは、8本の足をおおきく広げて、ぐるぐるぐるぐるぐる!

 おおきく風車のように回り始めました。

 分速80回転ぐらいです。

 非常にゆっくりにみえますけれど、百尺もあるおばけダコですから、その余波と風圧はものすごいエネルギーを生み出します!

 タコは目を回したようです!

 とりあえずはその破壊活動が止まりました!


 だりきゃの1ターン目。

 7つの火の精霊かエネルギー源が手元に来ます。

 火のエネルギー源をフィールドにセットします。

 やっぱり1火エネルギーで使えそうな魔法がありましたので、使うことにします!


「召・喚! 怒りのダンパッチ君!」

 ダンパッチ君は、弾ける火の玉の精霊さんです!

 しかもそのへんの精霊さんと違って、召喚したのと同時に敵に襲い掛かります!


 ダンバッチーン!!!


 ぐるぐる回るおばけダコに、強くぶつかって弾けました!

 手ごたえは上々です!

 気心知れた魔術師同士が築く魔法フィールドは強力で。

 いつもよりも威力を増大させているようです。

 そしておばけダコのターンなのですが、目をまわしているためなにもできないようです。

 周りを取り囲むようにして守ってくれるフォンテーヌ市軍から、ほぅぅ、と称賛のどよめきがあがっています。


 ダンパッチ君は攻撃のショックから身を起こして召喚主であるだりきゃを守るように配置につきます。

 サー子の2ターン目。

 黒い光の玉は7コになりました。

 闇のエネルギーを1つ追加します。

 闇2で魔法を唱えます。


「奈落…」

 サー子の瞳はうつろになって、魔法の発効に集中します。

「でたわね、奈落! あのときのおばけネズミの生命の火を消し去って、いきなり倒したアレね…」

 ぷーんは戦慄して言いました。


< 効果:闇でないターゲットの一つは死ぬ。 >


「え、死ぬの!? え、いきなり死ぬのです?!」

 セルリエーン大佐は、長寿命のエルフ人生でおどろくことはあまりありませんでしたが。

 さんざん軍を手こずらせたあのおばけダコが、あっさりその命のともしびを消していくのを目の当たりにしまして…。

「え、え、え、こんな簡単に、?」

 普段はきっとクールでカッコイイセルリエーン大佐はおどろきで真っ赤です。

 周りの兵士も一緒になって身体はやや後退させつつも、この瞬間を逃すまいと凝視しています。


 おばけダコは半身を焼かれて、最後は命のともしびをそっと、消されて死にました。


 それはあまりにもあっけない結末でした。



 黒の子たちは、外界に出たがらない。

 忌み嫌われるから。


 だから数百年も10数世紀も。

 黒の森でひっそりと暮らしてきたのです。

 自分の感情が高ぶって。

 まかり間違って、黒でない他人の命のともしびを消すこともありました。

 だから、もう外に出なくなったのです。


 フォンテーヌ港は、広大な港湾でしたが。

 こんなに多くの人々がいてなお、静寂につつまれました。

 黒の魔法の恐怖を目の当たりにしたからです。

「うわぁ…あれ、最強じゃねーか」

「え、どんな敵でもたった闇の2パワーで殺せるだと…?」

 セルリエーン大佐も、闇の魔法を見るのは初めてです。

 ぷーんも、だりきゃも。

 ゆっくりと目を閉じて苦い勝利の中にいました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ