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ダメなサー子の蘇生の義㉘

 食料も乏しく、あわてて王都に帰ってきた王軍はそれはもう悲惨です。

 フォンテーヌが食料を買い集めたことと王都の人口が増えたことで食料品の需要が高まってしまったので、さらに物価がめっちゃあがります。

 兵士たちはお金があっても食料やお酒の値段が6倍も7倍もするのです。

 これでは名誉ある王軍につらなって他の人より倍のお給料をもらったとしても、食生活は3分の1です。

 庶民はもっと大変です。王軍が出陣してからというもの、生活が6分の1になってしまったのです。


 ゲオルクは機嫌の悪い日が続きます。

 敗戦して王都には物資の不足が蔓延してあらゆる問題が山積みです。

 食料問題、多すぎる兵士の解雇、税収の低下などです。

 今回の戦に参加しなかった王国の各都市、ティエン市、ヴェッターハーン( Wetter hahn )、ティミ( Tιμή )、ジーマンスやカウベル( cowbell )、コーレン( Kohlen )から食料品を集めるよう勅令が出されました。

 しかし各都市も食料が不足するのをおそれてあまり多くの供出はされませんでした。

 もちろんフォンテーヌに同調する都市からは何の返事もありませんでした。

「あの反逆したフォンテーヌも討つことすらできんのか!」

 ゲオルクは食料不足によって討伐できないという、どうしようもない怒りでまわりにあたりちらす毎日でした。


「しばらく王軍の進撃はないようね」

 ぷーんが分析してそう結論づけました。

 フォンテーヌの白と黒のタイルが鮮やかな大広間、今の部屋の主はサー子です。

 玉座にはサー子がすわっていて、政治むきのむずかしい話に苦労しながらも理解しようとがんばっています。

 白いテーブルクロスがかけられた長くて大きいテーブルがあって、そこの上には地図と統計資料、軍を表すマーカーが所狭しと並べられています。

 そして主だった官僚たちが会議をしています。

 執行官ドラヴァヒを中心に将軍セルリエーン、宮廷魔導士長ぷーん、だりきゃ大佐、司法官ダルメル、今では市軍の装備を修繕、管理する内政官としてセアーネもいます。

 まわりにはフォンテーヌ市でドラヴァヒと一緒に内政を担ってきた役人のエキスパートたち数十人が実に効率よく提案と改善の波を創り出しています。

 宮廷魔導士のひとりとしてシュートラも同席していますがサー子よりもむずかしい話なんてわからないので、ダルメルのとなりにすわって大きくて真っ白い彼女の羽根をもふもふする係に専念しています。

「もふもふ~きゅん!」

 ダルメルの羽根だいすき、そんな屈託のない笑顔のシュートラを見ていると苦難の政務で疲れている役人たちも癒されるのでした。


 ドラヴァヒが送った書簡の返事がぞくぞくと届きます。

 アスタリスタ城のアスタレット伯爵の親書です。

< 予、フォンテーヌ市の独立を支持す。ゲオルクを誅すは予の望み。出来得る限りの援軍を約定する。アスタレット騎兵はフォンテーヌの心強い剣となるだろう。 >

 飾り気のない文面でしたが本当は心から喜んでいることをドラヴァヒは察していいました。

「アスタリスタ城はフォンテーヌと同盟都市になりましたね」


 次にはコーデリア伯爵からの返事です。

< ごきげんよう、執行官どの。ゲオルクがアスタレット伯爵に婚姻をせまる悪逆を私は許しません。アスタレット伯爵を守ることがコーデリアの望みです。ゆえにフォンテーヌ市のあらゆる問題は私の解決するところとなります。ただし、執行官どのやフォンテーヌの殿方がアスタレット伯爵に下心をもたないことが前提となります。 >

「ねえ、だりきゃ」

 ぷーんは最後の一文に疑問を投げます。

「なんだー?」だりきゃは遠い目をしながら答えます。

「これって、あれかしら。やっぱり噂っていうかコーデリア伯もアスタレット伯もずっと結婚しないのって…」

「あー、焼き鳥屋時代にその噂はよく聞いたぜ。二人は幼少のころからずっと仲が良くて、なんでも愛し合ってるとか?」

 ぶっ! っとだりきゃの大胆な(大きめの声の)ひとことで大広間の一同は吹き出してしまいました。


「それでやっぱり黒の女王からも返事がきたのよ」

 サー子がレルマことタドミーラからの外交文書をふりふり言います。

< 久しぶりだね、サー子。こっちはあのひどい頃に逆戻りさ。いやあの頃よりもっとひどい。調子にのってガンガン攻めてきているからな。ティエン市からはもう来ないが、レザール卿は毎日のように攻めてくるんだ。できるならすぐに腕利きの軍をよこしてくれ。フォンテーヌの領有については、サー子に全部まかせるよ。好きにやってくれ。 >

 およそ女王とも思えない平易な文がレルマらしい。一番うれしかったのは、黒い森の騎士が領主となるフォンテーヌは女王のものであると主張してもおかしくないのに、きっぱりとサー子のものとして認めたところです。

「さすがレルマさんね!」

 そういうとがまんできずにサー子は玉座から降りてきて、さっきから目を離せなかったシュートラと一緒になってダルメルの羽根をもふもふし始めます。

「くすぐったいわ…」

 シュートラと声を合わせて言います。

「もふもふ~きゅーんッ!」

 ほっこりとした場面を横目にしながら、セルリエーン将軍はすぐに騎兵と信頼できる指揮官を手配します。

「あと森の豊富な食料を融通してもらうようにお願いしましょう」

 セルリエーンは抜け目のない本当に有能な官吏です。


 思いもよらぬ人から文書がサー子あてに届きます。

 ディアネートのセアーネ父、ロジエ准勲爵士からです。


< サー子どの、ご活躍を聞きました。王軍を退けたのはおそらくフォンテーヌの軍でしょう。娘とセルリエーンもお役にたっていれば幸いです。フォンテーヌの独立を聞くにあたり、同盟都市として参加いたしたく筆を執りました。 >

 ディアネートも同盟都市として参加してくれるようです。いちばん喜んだのはセアーネです。

「故郷と戦うことにならなくてよかった…」

 その様子をみていたセルリエーン将軍が、おもわず微笑んだのはなかなかめずらしいことです。


 ミント男爵とは、あのアスタリスタ城の奇襲のあとで会見しました。

 もともと正義感の強い男爵はドラヴァヒからの手紙がついた時からゲオルク打倒の意思を固めています。

 そしてもうすでにハーヴィス川の防備を少しずつ進めています。

 サー子たちはミント男爵の心からの歓待を受けました。

 爵位をそのまま引き続き認め、フォンテーヌの同盟都市になることを確認しあいました。


「そうすると…これで6つの都市が同盟関係になるのね」

 ダルメルはくすぐったさを我慢しながら確認します。

 アスタリスタ、コーデリア、ハーヴィス、ディアネート、黒い森、そしてフォンテーヌ。

 これはカルベルシュタイン王国を二分する一大勢力です。

 しかも王軍を撃退して、しばらくは出陣ができない状態にまで追い込みました。

 経済的切り崩しをはかり、逃げ出す市民を受け入れるようにすればパワーバランスは大きくかたむくでしょう。

 一同の考えは「新王国樹立」へと議論が展開します。


「…それはダメ!」

 二人の声が同時に響きました。

 サー子とダルメルの姉妹です。

「だってわたしなんかムリだもん!」

「…王になるには慣習と法に照らしても身分的根拠がなさすぎる」

 理由はそれぞれ違うようです。


 結局サー子は6都市間同盟の盟主として調印式を執り行うことに決まりました。

 ゲオルクの軍勢が疲弊している今こそ、一度集まって式典をおこなうチャンスです。


 すぐに伝令が他の5都市へ飛びました。


 次々と領主たちがフォンテーヌに到着します。

 レルマことタドミーラ女王が先に着きました。

「サー子! 応援の兵ありがとな! 元気にしてたかい?」

 多くの側近を従えても中身はレルマのままです。

 そしてサー子たちはそんなレルマが好きでした。てづからコーンスープをよそってくれる彼女が。

 ぷーんもだりきゃも再会を喜びました。そしてことのほか喜んだのはシュートラです。

「レルマさん!」

 人なつっこいシュートラがとびつきます!

 側近がぎょっとするシーンでしたが、レルマは嬉しそうに抱き止めました。

「元気になってよかったよ」

 女王の笑顔が弾けると、側近たちはおどろきの様子で見守ります。感激もしているようでした。

 普段とてもそんな表情を見ることがないほど、過酷な日常をすごしていたのでしょう。


 サー子のおかあさんは、今では城砦に住んでいます。領主のおかあさんですから。

 女王をフォンテーヌの総出で迎えるこの場にも、もちろんいます。

 そんなおかあさんを見つけるなり、レルマは急いでおかあさんのそばに小走りでかけよって、ひざまずきます。

「シャン様!」

 一同はびっくりしすぎて、凝固してしまいます。

 まるで息もしてないかのように。


「サー子のおかあさんは悪魔族のプリンセスだからね」

 レルマからそんな言葉を聞かされることになろうとは。

「やだねえ、昔のことを」

 サー子のおかあさん、シャンは。

 なんでもないようなことのように言います。


 黒い子という闇由来の民族は、悪魔族出身の人々が外の種族と結婚して混血してできた種族です。

 つまりもともとは悪魔族の血を引く民族だったのです。

 天使族のおとうさんと駆け落ちして、黒い森の沼にある悪魔族の街を抜け出してきたのです。

 おかげで悪魔族としての魔法も見た目も身分もなくなってしまいました。

 天使族とまじわることはまさに前代未聞のできごとです。

 そうして生まれたのがサー子なので黒い子として育ててきましたが、正確には天使族と悪魔族の子です。

 これは双子の妹であるダルメルも同じです。

「でも悪魔族っていったって、ちょっと暗いところが好きな、肌が少し黒いだけの人なだけだし」

 レルマは説明をつづけます。

「天使族っていったって羽根があるだけで、生物学的には「ハーフしらこばと」が由来っていうじゃないか」

 ハーフエルフ。ハーフ天使。ハーフ悪魔。ハーフふそ人。

 混血という意味でハーフなのでしょうが、衝撃的な自分のルーツを知ることになったサー子はすっごい汗をかくほどおどろきました。

 ハーフマラソンしたくなるぐらいです。

「まぁだからどうしたってことだよな!」

 はっはっはー!ってだりきゃがいうと、レルマもおかあさんも同調して高く笑いました。


 おかあさんが悪魔族だったのがおどろきで羽根をもふもふさせているダルメルが天使族の色合いを多く残しているので、わたしはもしかしたら悪魔族な感じなのかと考えこむのですが、続々と賓客が到着するのでサー子には感傷に浸るヒマもありません。


 次に到着したのはロジエ準勲爵士でした。

「おとうさん!」

 セアーネはぎゅっと抱きしめます。

「セアーネ、元気そうだね」

 ロジエはにっこりと微笑みます。

 セルリエーン将軍もそっと目礼をしてひざまずきます。


 領主のサー子たちが一通り挨拶を終えたのをみはからってセアーネがか細い声をあげます。

「あの、おとうさん…紹介したい人がいるの」

「ほう、それはだれだい?」ロジエが優しく微笑んで聞きます。

「あの、この街の執行官で…」

 セアーネは透き通るような金髪の髪をもじもじさせながら言います。

「ド、ドラヴァヒさんです…」

 サー子や主だった官吏としてドラヴァヒとは挨拶をすませてはいましたが。

 さっきの堂々とした執行官の顔ではないドラヴァヒが、申し訳なさそうにぺこりと礼をしました。

「ええっと、セアーネこれはどういう?」

「あの、おつきあいをしてます…」

 真っ赤に照れて顔を覆うように下を向いたセアーネでした。

「ほう…あの内気なわが娘が…」

 ロジエはまるで品定めをするかのようにあらためてドラヴァヒを見据えました。

 その目を見て、なにかを感じていたようでした。


 こほん、とせきばらいするといい機会だと言ってすべてをみんなに聞かせてくれたのです。


「私の領地のディアネートの街の本当の名前は、ダイアーネト( Dhiane-rt )つまりダイアーネのいた、という聖地の意味だ。そしてエルフの森の方言では、ゼアーネトと発音する」

 ゼアーネとはエルフの森を創り出した月の女神のことであり、その高貴なる名前は代々エルフの森の女王が名乗ってきたのです。

「その秘密の言葉は方言といわれているが、その言葉自体魔法の力をもつもので正式にはそう呼ぶのが正しいのだ」

 ロジエは厳かに言います。

「セアーネとは、その高貴な血を受け継ぐ皇女にだけ、名づけられる」

 おどろきのあまり、鼓動が止まったようでした。

 セアーネは特に驚きに腰がぬけそうでした。

 その卒倒しそうなほどおどろいていた彼女の肩を、ドラヴァヒはあわててそっとささえます。


 ───セアーネは、第一皇女だ。


「月女神帝国」( Empire of Dhiane )の現存する王位継承権第一の、プリンセス。

 ロジエのカルベルシュタインの下級貴族は仮の姿です。

 本来の血統をあかせばセアーネはプリンセスであり、その父ロジエは女王の側室、つまり何番目かの夫であり公爵にあたるのです。


「今となっては、滅びてしまった月女神帝国の爵位なんて、銅貨一枚にもならないがね…」

 と自嘲してロジエがつぶやきます。

 カルベルシュタイン王国の公王、ディース公爵が若い頃の話です。

 古代月女神帝国の公爵というものをあえてカルベルシュタイン王国の貴族にしたのは、記録保護のためでした。

 イーテ魔法王国( Royal Magical kingdom Ite )が世界のあらゆる秘密を保持しているのですが、ここカルベルシュタイン王国にもエルフの森の秘密をもっておきたい、滅びた古代帝国の貴重な歴史資料を保持したいということなのでした。


「ドラヴァヒ君。古代皇帝アルフィードは、確かに、古代女王ダイアーネと結婚したんだよ」

 古代といえば数百年前。またもや信じられないおどろきの表情をする一同です。

「まちがいないね。本人がそういってるのだから」

 本人…とは。


「いいかい」


 ロジエは、ひと呼吸、間をつくってフォンテーヌのみんなに告げた。


「月女神帝国の女王ダイアーネ様は、まだ生きている」

 さらなる事実が明かされます!

「セアーネの母。いいかい、あれは、ダイアーネ女王なんだよ」

 セアーネは意識をスーッと失いました。


「エルフの森の女王ダイアーネ」古代よりその名を受け継いでもう幾百年。


「女王様は800歳をこえていらっしゃる、のではないかな…?」


 ロジエはことさらになんでもないようなことを言うかのように。

 フォンテーヌの大広間は凍り付いたような時間が過ぎていきます。


 執行官ドラヴァヒも、付き合った相手がまさかエルフの森の王女で古代から続くエルフの森の女王がその母だったとか身分差がありすぎで卒倒しそうで、仕事に身が入らなくなってしまいました。

 しかもセルリエーン将軍は、もともとエルフの森の女王の側近だったのです。

 それでずーっとセアーネを守ってきたということなのです。

 これでセルリエーンの今までの振舞いに納得がいきました。

 ちなみにセアーネはあまりのことに気絶して寝込んでしまいました。


 そんなおどろきのフォンテーヌのみんなを休ませてはくれません。

 ミント男爵、そしてアスタレット伯爵とコーデリア伯爵が同時に到着したからです。

 いちばん遠いところから来たアスタレット伯は、得意の騎馬でわずかな時間でフォンテーヌに駆け付けてきてくれました。


 これで6都市の領主がそろったことになります。

 もっと言えば、領主のおかあさんは悪魔族のプリンセスで、エルフの森のプリンセスが自分のお部屋でお休みになっています。


 6都市間条約の調印式は、満を持して執り行われました。

 ロジエがセルリエーンに指示をして、すぐに森の女王に使いを出します。

 すぐ後で莫大なお祝いの品が届けられます。

「フォンテーヌ市の独立と6都市間条約と、女王の娘のお付き合いのお祝いということだそうだよ」

 あはは、とドラヴァヒは莫大な量の食料や財宝を目の前に固まりました。

 認めるんだ、という一同のつっこみをよそに、式典がすすみます。


 晴れた日のフォンテーヌ。

 やさしい白い陽の光に包まれた街。


 賓客、領主、文武百官がズラッと正装して並んだ大広間。

 諸都市からも人がきていたので千人以上はいます。

 城砦の内外はいうに及ばず、その城壁や外にあふれた市民たちも振る舞われたご馳走をたべながら参列しています。

 十万人の住民や人々が参加しているのです。

 実に壮大な光景でした。


「盟主サー子様のお言葉!」


 サー子がアイサツをします。

 しかし原稿なんてあっても、緊張とあせりでいっぱいです。

 サー子は視界もゆがんでしまい、ついには原稿を読むのをやめました。

 自分の言葉で語ります。


「あっ、あの! 独立した時もそうでしたけど、わたしがしたいのはこういうことです!」


 十万人が静寂に包まれます。


「わたしはおかあさんとふたりで暮らしていました! おかずをつくって、バンダナ亭におさめていました」


 切り干し大根をつくって、買ってもらって、それでかわいそうな子供たちの市場で、あまり品質の良くない材料を買って暮らす。

 黒い森の殺戮を目の当たりにした戦いの日々。

 そして独立して王軍を退けた。

 そんな日々を思い出します。


「おかあさんは、爪をなくした痛そうな手で鎧部品の内職をしてセアーネさんのお店におさめていました」


 サー子は暮らした日々を話し出します。


「わたしは、戦争がなくなって! だれも死ななくて!」


 一瞬息をつまらせます。


「親を殺されない!」


「子供が一人で暮らさない!」


「そういうふうにします!」


 大声でひとしきりいったあと、大きくぺこりっとおじぎをしました。


 ワアアアアア!!!


 歓声がおこります。


 アスタレット伯爵が叫びます。


「サー子を盟主として仰ぎ、忠誠を誓う!」


 シュートラが叫びます。


「子供のために!」


 ドラヴァヒが叫びます。


「ヴァイデノース様のために!」


 ワァァァァァ!!!


 フォンテーヌ市は歓声によって、7種類の揺れ方で、揺れに揺れました。

 地震ではないのです。人々が揺らすのです。


 すべてが納得のいくものでした。


 すべてに道理の筋が通っていました。


 だから市民や訪れた人々は賛同の声をあげたのです。



 ダルメルが玉座のわきに立って、厳かに宣言します。


「同盟都市フォンテーヌ条約。フォンテーヌ憲法」


「フォンテーヌを首都とする条約都市群である。ただし共通した法をもってこれを治める」


「ひとつ。武器をみんな捨てる」


「ふたつ。話し合いで決める」


「みっつ。いつもお世話になっているおかあさんに感謝する」


「よっつ。こどもを大切して学ばせる」


「…以上を根幹としてあらゆる法律を制定する」


 ダルメルは「フォンテーヌ憲法」を発布しました。

 これはダルメルがよく考えた法律によって守られるはずです。


 この日、フォンテーヌは歓喜と歓声につつまれて夜が昼のようであり、街が賑わうことには七日ほど眠ることがありませんでした。



 ◎◎ ◎◎ ◎◎



 いくら武器を捨てる、と決めても。

 野蛮な人が襲ってくるのには守らなくてはなりません。

 いったん武器は捨てるのですが、それを国家で管理して使わないように努めるだけで、今までの軍組織を急になくせるわけでもありません。


 ですが、フォンテーヌは希望に満ち溢れていました。

 正しい毎日が現実として得られることに!


 これからゲオルクがどんな卑怯な手で襲い掛かってくるといっても、こわいものなんてありません。

 東のゲオルク国に住むおかあさんたちが、みんな西のフォンテーヌ国へ行けばいいのです。


 そうすれば子供たちもついてきて。

 娘さんたちもついてきて。

 男たちも、ばかなゲオルクの兵隊も、最後についてくるはずです。


 武器を捨てよう!

 おかあさんを大事にしよう!

 そんな国に行きたいのは当然です。

 たとえおんなじ苦労をするとしても、そこで生きていきたいと思うのは当然です。


 今まで誰にもほめられたことのないおかあさんが、ほめられる国、なんですから。


 サー子たちはきっと大丈夫だとおもいます。

 仕事はドラヴァヒさんがやってくれますし、ゲオルクが襲ってきたとしてもアスタレット伯爵が勇敢に斬りこんでくれます。


 だからみんなでフォンテーヌに行きましょう。


 おかあさんをかたっぱしから連れて帰ってきてしまうのです。


 いなくなって困るのはゲオルクたち、なのですから。



 ━━━わたしですか?


 いままで、この物語を案内してきたわたしが誰かって?



 ふふ。



 えっとね。



 おかあさん、ですよ。





2016年12月2日に第一部を完結します。


ありがとうございました。


続編は、もちろんあります。

まだまだおどろきのアレやコレ!

こんな国やあんな都市。

いっぱいあるのですが、みんなが希望にみちあふれて蘇生したところですこしのお別れです。

大丈夫、またすぐにお会いできますよ!

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