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化け猫  作者: 志摩
私と我が家の事情
6/25

猫と猫の絵

 


 身体が重い、何かが上から押さえつけているかのようだ。  




 瞼を開けると、部屋は真っ暗闇で視界が不明瞭だった。枕元を探して電気のリモコンを掴み、明かりをつけた。


 起き上がろうと顔を上げた目の前には、猫のお尻があった。尻尾を丸め、多分眠っている。今日は起きるたびにしんちゃんが目に入る。

 最初は私に興味なんてなく、家の中をふらふらをしていただけだった。父は特に世話を焼くでもないから、私が構ってやっているといつの間にか勝手についてくるようになった。

 今は寝食を共にするほど、仲睦まじい関係を築きあげている。何をするのも一緒だ。

 それもそのはず、私は自由気まま、家の中をごろころしているだけなのである。

 何かをしなくてはいけないような、今のままでは駄目だと頭では理解しているが、身体を動かせない。


 しんちゃんを拾った時、ちゃんと働こうと思ったような思わなかったような。もうそんな風にだらけ始めているのだ。人の心とは変わりやすいものである。しんちゃんにあってから、まだ二週間ほどしか経っていないのである。

 お腹が鳴り、自分が空腹であると自覚した。

 そっとしんちゃんを抱え起き上がり、リビングに向かった。そう言えば今日はご飯を食べていない。

 部屋は散らかったままで、父の姿はなかった。

 仕方なく自分でご飯を作ろう(いつも父がやってくれるのである)。

 しんちゃんを置く場所が見つからず、仕方なくソファの方に行くと座るべき場所にも本が乗っていた。どこまで広げれば気が済むのだろう。開いたページをそのままに、少しだけ場所を作ってしんちゃんを置いた。

 その本のひとつに、丁度猫の絵が描かれていて笑ってしまう。古いもので筆で書いてある不気味な猫だった。

『猫又』と書いてあるそれは、尾が二つに分かれていた。そう言えば、そんな幻を見たような気がして益々笑えてきた。

 こんなものが実在するわけはないのだから。 


 さて、ご飯を作ろう。


 父の分も作らないと。うちの家計は父に支えられているのだから。私だけがご飯を食べることは許されないのである。

 冷蔵庫を開け、ほとんどものが入っていないことを確認すると、私はとりあえず食卓に座った。

 料理のセンスがないものにとってこの状況は酷だ。うちの冷蔵庫はいつもこう。何を作れば良いのか分からない。

 

 しかし父が作ってくれることに期待ができない。

 頭を抱える状態の私は、まさに頭を抱えていた。

 まずは時計を確認する。午後七時過ぎを指していた。

 今ならまだ間に合う、かもしれない。

 私は部屋に戻り、ベッドに置きっ放しの携帯を持ってくると、電話をかけた。『たばこや』に。


「たばこやです」

「もしもし、かねやん? 今暇?」

 間髪入れずに話すと、沈黙が帰ってきた。

 もしかして違う人だったのかもしれないと、もう一度画面を見てみたが、やはり『たばこや』と出ていた。間違ってはいない。

「うわー、やな予感。忙しいと言っておくわ」

 小さな声でそう返ってきた。私はガッツポーズを決め、すかさず返答する。

「よし暇ね。待ってなさい、私が行くまで」

 答えを聞かずにすぐさま通話を切った。

 否、という答えを聞いてしまったらおしまいなのだ。


 聞かなければ、行っても問題はない。そしてそれを許してくれるような心の広いやつなのだ、かねやんは。



 急いで身支度をして、しんちゃんの事も放置して、私は家を飛び出した。



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