化け猫
「あんた話すの上手いのね。まるで素敵な物語のようだよ」
かねやんが、ラーメンを食べ終えて、タバコをふかしながら言った。
「俺には何かの記憶が物語のように見えるんでね、本はたくさん読んで表現の勉強はさせていただいておりますよ」
が言った。
私はなんだか食欲がなくて、ぶよぶよのラーメンを少しずつすすっている。
こんな話を聞くと更に箸が進まなくなるのだが、この2人には関係ないらしい。
「それが私の見た、というか、手を引かれた男の子の話なのね?」
「そうだ。お前が捕まっちまった、あの子だ」
「ねえ、素朴な疑問。君は猫のしんちゃんとはどういう関係なのでしょうか……」
「まだそんなところ気になるの? どう考えても猫ちゃんはこれでしょうよ」
かねやんは私に向かって呆れたように言う。
言いたいことはわかる、そんな風に感じる気持ちもある。でもそれでは…
「いやそれって化け猫? 猫又?」
真紅はふんぞり帰って少し偉そうな態度をとった。
「そうだな。いや実は、俺はそのどちらでもないんだがもっと別のものだね。……話して良いのかわからないから簡単に話すと、俺はそもそもお前の母さんと一緒にいた妖ものなんだ。渡が話しただろう、元々は母さんの仕事だ(・・・・・・・・・)と。お前の母の一族には代々そういう力がある。
俺は元々はーー、ダメだな。まだ内緒だ。
最近眠りから覚めた。そしてお前を見つけた。とだけ言っておく。多分そうなるようになってたと思ったよ。
きっと沢山術を張ってたんだろうな。相当優秀だったよ。お前のお母様は。
まあお前はその力の事、使い方、何も聞く事のできないうちアレが死んだから。その事についてはまた後日詳しく渡に聞け。
その力のせいでお前はかなりの不幸体質なんだよ、悪いものを呼ぶからな。その首飾りはそれを回避するためにアレが作ったんだ。
でも、それをお前はつけない時が長くあっただろう?」
「いや、これは流石にね、毎日はつけてなかったな。……確かに高校の頃までは隠してつけておくか、ズボンのポケットでもいいから入れておけって言われてた気がする。一人暮らしになってからはオシャレしたくて違うのつけたり、仕事するようになってからは職場にはつけていけないじゃない、全然つけてなかったわ」
「だからやばかったんじゃないの? あんたの青春は」
かねやんがすぱっと切り裂いていった。
私のついていなかった大学時代、社会人生活のほぼ全てをお悩み相談されているかねやんにはきっと、納得する要素しか無いことを一番に理解しているだろう。
なんだか今日は辛い事しかない。何もかも辛い。気がついたら川で凍えてるし、よくわからないし、ラーメンは伸びてるし、かねやんが厳しい。
「あ、今日はつけてたよ。ネックレス」
そう、私を守ってくれたのかな。最初に名前を呼ばれたと思った時、呼ばれた声。アレは絶対に真紅の声ではなかったんだ。
「それはお前の力が強くなりすぎているんだ、それで守りきれなくなっている。からかな。そのせいできっとあの子に見つかったんだろうな」
「そうなのかな、あの公園ので始めて会った時、私が見つけてしまったと思ったんだけど」
「お前は目をつけられてたんだよ、だから見つけさせられたと思うがな」
どうにも腑に落ちない点が多い、この全てが私をこの仕事に呼び込むための罠だった言われた方がしっくりくる。
猫を追いかけ、会った少年が実は幽霊で、猫を川へ引き摺り込んでいる悪者だった。その悪い幽霊に目をつけられて、私が皮に引き摺りこまれて、運よく助けられた。ということだろう。
「お前が巻き込まれたのは完全に誤算だったんだよ。あの公園の近くで、わざわざ猫になってまで俺が囮になって待っていたんだ。なんでかお前が出てきちゃって」
「渡さんもあんなに外出制限してたけど、ダメだったね」
二人は全てを知っていたようだった。
それでもその言い分を聞けば、私を守ろうとしてたとも確かに受け取れる。
「最初から全てを話してくれたよかったのでは?」
それに尽きると思うだけど、どうでしょうと二人の顔を伺ってみる。二人は顔を見合わせて、とても深刻そうな顔をした。
「渡が突然そんな話してきたら、お前は大人しく従ったのか?」
「あんたは絶対に信じないね、事前に幽霊の話だけしても。結局外に出たよ」
二人の言う通りだと思う。
「……いや、多分無理。いきなり幽霊だなんて言って外に出るなとか言われたら、こんな親父なんて知らぬって家出したかも」
今日こんな事態が起きても、家にはいない、帰ってこない父。帰ってきたら色々問いただしてやろう。
少し元気が出てきた気がする。
私はなんとかラーメンを食べる。
隣には猫に変身することができる、自称妖怪の真紅。
そしてやっぱり何も話してはくれなかった、大親友のかねやん。
全てを知ってそうだけどここにはいない父。
巻き込まれたのかわからないいが、何か不思議な世界に足を踏み入れた私。
これはそのはじまりの物語。
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