夢の終わり
大きな声にはっとして、なんだかよくまとまらずぼやけていた意識が覚醒してきた。
手足は真冬の冷たさで悴み、身体はだるく重い。膝が砕けるように落ちていってしまい、立っていられずに座り込んでしまう。
男の子は川の更に奥の方からこちらを見ていた。
とても冷たい目を、暗い目をしていて、睨むように私を見ているその顔は人のものとは思えないほど青白い。
身体が浮いた感覚に振り返ると、男に抱き上げられ運ばれていた。
「真紅! 間に合ったの!」
少し離れたところに見える小さな橋から、かねやんが叫んでいた。
私を抱き上げているのはいつしか見た赤髪の男だった。渦の中から私を呼んで、飛び出てきたのはこの人だった。
「しんく?」
口がうまく動かない、何故だかどこにも力が入らなかった。
「話は後だ、今はあっちが先」
私は抱えられたまま、岸の方まで運ばれた。そのまま、しんちゃんはつま先で地面を叩いた。
「両手が塞がってるからな」
そういうと、叩いたところから真っ赤な炎が上がった。驚いて炎から逃れようと体を震わすと、きつく抱きしめられ顔を見つめられた。
「大丈夫だ、心配ないから大人しくしていろ」
真紅は男の子の方へと顔を戻した。
ぎゅっと目に力を入れ、睨みつけると炎がその方向に伸びていき、やがて大きな円となり男の子を囲い込み、大きな壁となり包み込んでいく。
炎の壁から男の子は逃げなかった、逃げられなかったのかもしれない。足が川に飲み込まれ、透けて、同化してしまっているようにも見えた。
「もう終わりにしよう」
私の口が勝手に動いていて、知らない声が出ていた。
驚いたことに意識はあるのに、自然にそう話してしまっていた。でもこれは私の言葉ではなかった。
胸のペンダントが温かく、こんな状態なのに怖さはない。お母さんが一緒にいてくれる気がした。
「「君と一緒に僕は旅立った。それで充分だろう?」」
男の子は泣きながらも悔しそうに手をこちらへ伸ばした。しかし私がその手を掴むことはもうないだろう。
そうだ、あの子はもう死んだんだ。
僕は一緒に死んだ、もう何度も一緒に。
心が悲しみに満ちて、涙が溢れた。私のものではない誰かの記憶に、私の意識は引きずられていた。
「君は罰を受けなければならない」
私を抱く人が言う。
炎に焼かれるあの子の姿、こうならないように僕は何かをしてあげられたのだろうか。本当はもっと別の終わりがあったのかもしれない。生きているうちに、もっと別の関わり方をしていれば。僕も死なずにすんだのだろうか。
もがきながら消えていくあの子を見つめて、泣くことしかできなかった。
「「ーーさようなら」」
あの子は消えた、跡形もなく。
僕ももう行かなくちゃ、これで思い残すことは何もない……。




