表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
化け猫  作者: 志摩
公園の思い出
2/25

ある日のことだった

 …


 雨が降っていた。

 とても冷たい、寒い雨だった。

 毎日、毎日、雨が降って止んでを繰り返し、身体がどうにも重かった。

 散歩に出て、川沿いの花が咲いている場所へと向かっていたのだ。このところ憂鬱な日が続くから、花が見たい気分だった、ただそれだけだ。

 名も知らない花が咲いている場所に着いた頃、ぱらぱらと降り出した雨が、止むことなく降り続くことになった。まさかこんなに降り続くとは思わなかったんだ。


 雨宿りしようにも、辺りには何もなくて。

 初めは濡れたままでもいいだろうと、思うくらいの雨だったのだ。

 帰ろうとも思わなかった。

 もう、潮時だと。

 行く当てもなく、助けてくれる人も知らずに、何をすることもできなかった。


 寒い。

 身体が芯まで冷えて、凍えてしまうほどに。

 震えが止まらず、手先、足先は感覚がなくっていく。


 さむい。

 誰も助けてくれない。

 もう長い時間独りで座り込んでいるのに、手をのべてくれる人はいない。


 何も見ていないというように、通り過ぎていく。

 ただの景色と同じなのだ。背景、あってもなくても同じもの。

 どちらにとっても、きっとそう。

 もう直ぐ、この流れる景色も終わる。

 私の瞳が光を閉ざすから。

 なんとも言えない人生だった。

 ただ流れているだけだった。

 家族がいるうちは、少しは幸せだったのかもしれない。



 一番下の子どもだったから、甘やかされた。しがらみなく自由きままに生きてきた。私自身家庭を持つことなく、いろいろなところを歩いてきた。たくさんの仲間とも出会った。それでも時は残酷で一人また一人と消えていった。

 いつしか一人でいることが多くなった。

 最期まで、ひとりだった。

 このまま何事もなく、ただ世界を眺めながら消えていきたい。

 そうすればきっと、可もなく不可もない人生だった。

 その一言に尽きる人生だった。

 そのはずだった。

 ただ消えていくはずだったのに。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ