現実世界で
変な胸騒ぎを収めるべく、私はこの事件の関連性を調べることにした。まず私が足を運んだところは、ニュースで放映されていた病院に行くこと。家からはさほど遠くはなく、歩いて30分程度のところにある。
「そうだ、ルイさんと連絡をとっておこう」と思いスマホを取り出し、Twitterを開く。
『変な夢をみた…気分が悪い』
ルイさんの呟きを見つけた。どうやら私と同じ夢をみたような呟きだった。
『大丈夫?もしかして、昨日の夢の中であった夢かな?』リプ返信。
『ナオトさんも変な夢みたんですか!私、ナオトさんと夢で会ったんですけど、覚えてますか?』
やはり、私と同じ夢をみたに違いない。
『うん、覚えてる。やっぱり、ルイさんも見たんだね。人面犬といい、何か不思議な事が起ころうとしてるかもしれないね。何か身を守れそうな武器ってある?心配し過ぎかもしれないけど、出来るだけ自衛していた方が良いかもしれない』
『武器ですか…私ひ弱なのでそういうのはちょっと…』
『うーん、防犯ブザーくらいはないかな?ないよりはいいだろうし。…今日は何か予定でもあるの?』
『予定は特にないですよ』
『昼過ぎくらいに図書館で郷土史を調べてみようと思うんだけど、ルイさんさえ良ければ昨日の件、一緒に少し調べてみないかい?何の対策も無いまま危険な目に合うよりはいいと思ってさ。少し興味もあるし』
『わかりました、どっちにしろ暇なのでナオトさんと同行したいと思います!』
『じゃあ13時ごろ町ほ図書館で待ち合わせしようか。その前に少し寄るところがあって、もしかしたら遅れるかもしれないけど、そうなったらまた連絡させてもらってもいいかな?』
『私は大丈夫ですよ!』
『じゃあ、それでよろしく!』
と連絡を取り合った。そうこうしているうちに病院についた。
「はい、ご用件はなんでしょうか?」
「今朝のニュースのことについて聞きたいことがあるので、担当医師をお呼びできませんか?私は篠田と言います。多分わかると思います。」
「わかりました、少々お待ちください」
私は昔一時期そこで勤めていたこともあり、私のことを知っている医師は少なくともいるはずだ。
「すいません、今手を離せない状況らしいので、こちらまで来て欲しいとのことです」
「わかりました。ありがとうございます」
ナースから場所の書かれたメモをもらった。私はすぐその場所に向かうことにした。この病院は、この町で唯一の病院ということもあり、この町の人たちがここを頼りに来ている。そのためか、病院内は少々騒ついている感じはある。そう思っていると、指定の場所についた。
「失礼します」
私は扉をノックし、中に入る。
「やあ、篠田クン。久しぶりだね」
「お久しぶりです。椎医師」
椎医師は私がここに勤めていた時にお世話になった医師だ。カナリご年配の方である。
「で、なんの用だい?」
「はい。今朝のニュースでここに意識不明者が搬送されたと聞いてそれについて詳しくお話を聞かせてもらえないでしょうか?」
「ん、そのことだが…」
椎医師は苦しい表情を浮かべて
「原因は不明なんだ、私も今回ばかりはお手上げだ…」
「そうですか…」
ここまできて門前払いも甚だしい。椎医師に頼んでみる。
「患者を、見させてもらってもいいですか?」
「む、それは…」
椎医師は困った表情を浮かべる。
「もしかしたら、自分の知ってることに関連してるかもしれないので、お願いします」
「むむ…」
椎医師は少し考えたあと
「わかった。君を信頼してる、このことは外部に漏らさないと誓うなら見させてあげよう。こっちにきなさい」
「ありがとうございます!」
どうやら案内してもらえるみたいだ。
「ここだよ」
椎医師が扉を開けると、そこは10人一度に収容できる病室になっていた。
「これは…」
「彼らが今回運ばれてきた人々だ」
みんな青ざめた表情をしている。私は全員の様子を眺めるように見ていった。すると、一人の人物に見覚えを感じた。
「この人は…」
私が見つけたこの人は、夢であの巨体に襲われていた人だった。
「やっぱり…」
あの夢と今回の事件は関連性がありそうだ…
「篠田クン、そろそろいいかね?」
「あ、はい。ありがとうございました」
追い出されるように病室を後にした。まあ、大体関連性はわかった。ふと時計を見る。
「そろそろ時間かな…」
もうすぐルイさんと会う約束の時間だ。そっちに向かうべく、病院を後にした。
…………………
「あ、ナオトさん!」
「ごめん、少し遅れちゃったみたいで」
「大丈夫ですよ!」
私は無事に図書館前でルイさんと合流できた。
「じゃあ早速入ろうか」ルイさんを連れて中に入る。
(えっと、まずは司書官さんを探さないと)
「すいません、司書官さんをお呼びできませんか?」
「はい、少々お待ちください」
病院でしたようなやりとりを交わし、返答を待つ。
「お待たせしました、すぐにお見えになるそうなので、そちらのイスにお掛けになってお待ちください」
「ありがとうございます」
イスに腰を掛け、司書官さんが来るのを待つ。数分後、司書官らしい女性が見えた。
「はい、ご用件は…あら?」
「あ、もしかして…」
「あんらぁ!ナオトちゃんじゃないの!元気してた?」
「石井おばさん!お久しぶりです!」
「ナオトさん、お知り合いの方ですか?」
この人は、私が小さい時にここで絵本を読んでくれたり、遊んでくれたりしてくれた私の大好きな人なんだよ!
「へぇ、そうなんですね!」
司書官さんが知り合いでよかった。話を分かってくれそう。
「それで、何か御用かしら?」
私は石井おばさんにこの町全体の住居者、郷土史について、使用してない建物がないかをたずねた。
「ちょっと待っててね」
慌ただしく隣にあった部屋に入り、すぐに資料を持ってきてくれた。
「ありがとう、石井おばさん!」
「終わったらまた声かけてちょうだいね」
話が分かってくれてよかった。とりあえず、ルイさんと資料に目を通す。まずこの町全体の住居者は10万人ほど。郷土史は、特に変わった風習もなければ昔に何か起こったかというと、何も起こらなかったらしい。そして、使用してない建物について…
「これは…」
該当件数3、一つは廃墟となった工場。一つは心霊スポットとして若者の間で騒がれているという住居。そしてもうひとつは…
「屋敷…お屋敷みたいですね…」
山の何処かにあるという屋敷だった。
「山の何処か…規模が大きすぎる…!」
今から探すには到底無理な場所にあるようだった私は薄々感じている。この場所に、何か関連性があるのではないかと。
「ルイさん、そろそろ時間が…」
ルイさんに言われ、時計を見る。
「もう18時か、今日は解散しようか」
「そうですね」
石井おばさんに資料を丁寧に返し、私達は図書館を後にした。
「じゃあ、また何かあったら」
「わかりました!今日はありがとうございました」
ルイさんとも解散をした。
「さて…」
思い残すことがまだあるので、再び病院に向かうことにした。
……………………
再び病院に着いた私、何やらゴチャゴチャしているようだ。
「あ、篠田さん!いいところに!」
「?」
どうやら椎医師に呼ばれたようだ。すぐに椎医師の元にも向かう。
「椎医師、お呼びですか?」
「おお、篠田クン!新たな患者が運ばれたもんでな。一応君にも確認して欲しいと思っていたところなんだ」
新たな患者?午前ので全てではなかったのか。
「この人だよ」
椎医師に連れられ私が目撃した人物は
「…!この人、内田さん⁉︎」
「知り合いかね⁉︎」
知り合いというか、昨日夢で出会った人だ。確かあの巨体には殺されてなかったはずなのに。もしや…
「内田さん、起きてください」
「ああ!こらこら!」
内田さんの身体を大きく揺する。
「んん…?ここは?」
「おお!気がついたか!」
やっぱり、確信を少し持てた。
「あれ、あなたは確か…篠田ナオトさんですよね!」
「気がついたようで何よりです。何があったんですか?」
「え、えっと…気絶してました…」
何やらボソボソと呟いている。全く聞き取れなかったが、とにかく目を覚ましたならそれ以外どうでもいい。
「椎医師、彼は私の知り合いです。ただ伸びていただけらしいので、明日には退院させてあげてください」
「ん…こちらでも色々聞きたいことがあるんだが、まあいいだろう」
「は、はあ…?」
内田さんは何やら状況を掴めない様子である。
「椎医師、もう遅いので、私はこれで失礼しますね」
「うむ。またな、篠田クン」
病院を背に、私は一つ確信を持てたことがある。それは、あの夢の中で殺された人物は、現実では目を覚まさなくなるということ。今夜もまたあの夢の中に行くのであろうか?とりあえず、帰ったら今まで得た情報をさらに詳しく調べてみよう。