操りの館へようこそ
りぐすの自作クトゥルフシナリオの小説第二弾です
「あー、ここに来るのも久々だな」
私、篠田ナオトはとある理由で地元の田舎町に帰郷することにした。理由と言っても、今の季節地元は紅葉が美しく山を飾り、とても綺麗で私自身疲れが溜まっているということもあり、その疲れを癒そうと帰郷したのである。ああ、それと私は女だけど、私自身好んで男装をするので、歩いてると
「ねぇ、あの人かっこよくない⁉︎」
「ホント!見るからにイケメンオーラが染み出てる!」
「……」
通りすがりの女子高生や、若い女性は立ち止まって私を凝視してしまうみたい。
『男装って結構楽しい』
Twitterでよくつぶやく。思っていることを口に出せるところだと私は思っている。でも最近面白いことがあまりなくて、飽き飽きしてる。
「なんか素敵な出会い、してみたいなー…」
と思いながら歩き続けると、田んぼ道に出た。ここはあながち紅葉が綺麗に観れる場所でもあり、私は結構好みだ。
「いい眺め」と思いながらスマホで写メを一枚、Twitterに載せる。
『地元の紅葉、とっても綺麗』
よし、この道は静かで目も心も癒される。向かいから来る動物の足取りも軽快になっているものだ。
「ん?動物…?」
向かいから来る動物に、私は少し違和感を覚えた。あれは、外見は完全に犬。しかし、その顔は…
「…!人の顔…⁉︎」
昔話にいかにも出てきそうな、人面犬が私に近づき、立ち止まった。
「や、やぁこんにちは」
咄嗟に声が出てしまった。犬はこちらをじーっと見つめ、暫くして口を開いた。
「この町は危険だ、死なないように気をつけろ」
そう言い残すと、スタスタと何処かへ行ってしまった。
「…あ、ありがとう。気をつけるよ」
(世の中には変わった動物がいるんだなぁ…Twitterで呟こう)
『人面犬と遭遇なう』
最近なにかあればすぐTwitterだよなぁ私。
さてもうすぐ実家だ、歩き始めよう。とした矢先…ブーブーブーブーブー
スマホから着信音が鳴り止まない、何かと思って見てみると…
「Twitter…RT数とお気に入りが999…カンストしてる…」
通知が鳴り止まない、充電も持っていかれる、非常に萎えた。
はあ、とため息を一つもう一度スマホをよく見ると、リプライが飛んできていた。
『え!人面犬ですか!実は私も目撃したんですよ!』
何やら知らない人からのリプライだった。名前は…RUI☆、ルイさんかな?
『えっ、本当?あれびっくりだよね、喋るし。危険とか言ってくるし』
『私も同じこと言われたんですけど、怖いですよね…』
私以外にも目撃者がいたなんて。
『RUIさんも?なんだろう、危機を教えてくれる妖精さんみたいなものなのかな。同じ町だったら真実味ありそうだよね』
『私⚪︎⚪︎町に居るんですよ』
『えっ、本当に?自分も今⚪︎⚪︎町で、ついさっきその犬に出会ったところなんだよ。他に声掛ける前に居なくなったけどこの町に何かあるのかな』
『私も紅葉を見ようと山路に向かっていたら遭遇したんです。もしかしたらこの町で何かあるのかもしれませんね…』
『それは怖いなぁ。あ、よかったら今後のためにフォローしてもいいかな?何かあったら情報共有出来ればって思うんだけど』と言ってすぐ
『わかりました!私もフォローしますね!』
ルイさんからフォローされた。
『フォロー有り難う。これからよろしくね。ナオトって気軽に呼んでくれていいから』と言ってフォローを返す。
なにやら情報共有者ができてよかった。お腹も空いたし、この先にあるコンビニに立ち寄って何か買って行こう。
…………………
もうこんな時間か、時計をふと見るともう23時を過ぎていた。帰郷したせいか、身体が疲れている。睡魔も襲ってきて、今日はもう就寝しようと床に就いた。
「おやすみなさい」
と誰もいない部屋に一言いい私は深い眠りについた。
「…………」
どこからともなく人の声が聞こえるような気がする。隣の家の人が騒いでいるのだろうか。
「………ハハ」
笑い声?のような声。何処と無く聞こえるその声は段々と大きくなっていく。
「アハハ…アハハハ…」
耳がそれをハッキリと聞き取った、これは女性の声。そして、私の脳は深い眠りから覚醒し、目覚めてしまった。
「ん……ん?」
目覚めると、そこは見たことのない景色が広がっていた。広い暗闇が広がり、周りがよく見えない。向こう側にうっすらと扉のようなもの、後方に窓、隣にテーブルのようなもの、周りに複数の人影を確認。どうやら私だけここに来たわけでもなさそうだ。そして何故か寝ていたのに目覚めた私はその場に立っていた。そして、服は昼間着ていた服になっていた。
「ここは…?」
私の近くに3人の人影が見えた。
「あれ?これは夢…じゃなさそうだな。みなさん!ちょっと落ち着いて話をしませんか?僕は御堂筋銀也、ギンって呼んでください。まずは少し現状を整理しましょ~!」
一人はこのような状況でも冷静に行動しようとしている元気のよい男性。
「あれ…俺はゆっくりお布団で寝ていたはずなのに…あ、俺は内田怜治って言いますよろしく」
一人は少し暗めな男性。
「お、俺もふかふかオフトゥンで寝ていたはずなのに…俺は西行妖偽、こういうものだ…あれ?」
もう一人は、服装からして刑事さん?何かを探しているようだけど、見つからないみたい
「おかしい、俺の手帳がない…」
そう言えば、私も持ち物は何もない、服の中に入っていたスマホなど一切なかった。私も挨拶をしておこう。
「篠田ナオトです。同じく寝てたんだけど、なんだか変な笑い声が聞こえて起きたら此処にいたよ」
今日はつくづく変なことが起こる日なんだなぁ、そうぼやいた。
「皆さんよろしく。まずは落ち着きましょう。ナオトさんが仰るように僕も変な笑い声で聞こえて起きたらココにいたのですが…どなたかこの場所に心当たりありませんか?」
「いや、まったく。うーん、今日もいつもと同じ様に過ごしてただけなんだけどなー…昼間のあれもあるし、やっぱ疲れてるのかな…」
昼間のあれとは…?
「ん?ああ、なんか変なことがあってね」
変なこと、私があの人面犬に遭遇したのとおんなじことか?
「いったいどこなんでしょうね?」
内田さんは周りに知り合いがいないか探している。私も誰か知り合いがいないか探してみる。
「あの…」
突然声をかけられ、そちらを向く。
「あの、もしかしてナオトさんですか…?」
「はい?」そこには小柄な女性が立っていた。もしや…ルイさん⁉︎
「あの、Twitterでやりとりしていたルイと申します。よかった、お会いできたみたいで」
やっぱり!
「ルイさんでしたか。まさかこんなところでお会いするなんて。これがあの犬の言っていた危険なんでしょうかねぇ」
「私にもよくわかりません…この町に何か起こるのでしょうか…それにここはどこなんでしょう?」
私にもわからない、そう返事をかけようとした。しかし、私の耳にある怪音が入り込んできた。
「しっ!ルイさん静かに」
ズル…ズル…と何かを引きずる音、それは私たちのいる場所に段々と近づいてきた。身の危険を感じた私はルイさんを隣にあったテーブルの下に隠れろと命じた。
ズル…ズル…
周りがざわついている。
ズル…ズル。
と、引きずる音は扉の前で止んだ。そして…
ギギギギギ…
扉がゆっくりと開かれるとそこには…
「…!」
体長2mは越すであろう、巨体が佇んでいた。しかもその手には…
「なんだあの馬鹿デカイ斧は…!」
ギンさんが驚きを隠せていない模様。
「ルイさん、耳を塞いで、目も塞いでください」
「え、はい!」
ルイさんには見て欲しくないようなことが、これから起こる、そう私は悟った。そして、それは起きてしまった…
「……………!」
巨体が声にならない叫び声を上げながら、斧を構え、周りにいる人々を虐殺し始めた。大きくなる悲鳴、人が切られる音が周りに轟く。そして、それは段々と弱くなっていった。
(こっちに来るな!頼む!)
そんな祈りも虚しく、巨体は私をターゲットにして斧を振りかぶった。
(…くっ!)
咄嗟に目を塞ぐ。自分の命が、ここで朽ちようとしていた、そんな時だった。
「アハハ…アハハハ…」
ここに来る前に聞いた笑い声が、また聞こえてくる。そして、私はまた深い眠りについてしまった…
…………………
ジリリリリリ……
「ん…?」
目を覚ますと、そこには私の寝室の天井が見えた。隣でめざまし時計がうるさく騒いでいる。
「……夢?」
だったのだろうか?実にリアリティのある夢だったけど…
「おかしな夢をみたもんだ…」
変な夢を見てしまったせいで、昨日の疲れがまだ取れていない。仕方がないので起き上がり、朝食の準備をする。でも、夢でよかったと思う。あんなのが本当だったら、ねぇ。
朝ごはんはトーストとハムエッグ、そしてサラダとコーヒーと言った普通の朝ごはん。私はテレビのニュースをつけながら新聞を片手にトーストを齧る。そして、新聞に気になる記事を見つけた。
『⚪︎⚪︎町、意識不明者続出』
この町の新聞だから、この町のことを上げるのは普通であろう。しかし、この内容を私は何故か心当たりがありそうで仕方がなかった。そして耳に流れてきたニュースを聞き取る。
「今日未明、⚪︎⚪︎町で複数の男女が意識不明の重体に見舞われ、病院に搬送されたとのことです。原因はわかっておらず…」
そんなニュースが流れている。
「なんだろう、この感じ…」
私は胸騒ぎがしてならなかった。
次回もお楽しみに