表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

未明のごみ収集車

作者: ねごか
掲載日:2026/07/25

大どんでん返しのあるお話を作りたくて書きました!


 俺はゴミを集める仕事をしていて家族もいなければ、彼女もできたことがない。なんなら母も父もいないようなもんだ。ゴミを集める仕事はいわゆる世間がいう底辺職だ。家はボロいアパートに一人暮らし。とても裕福とは言えないけれど、三食食べれて安定している。寝る場所もあるし、僅かな娯楽もある。


 朝、起きなければいけない。この時期、布団から起き上がるのはなかなかしんどい。布団の暖かさに溺れていたい。しかしまぁ、そんな時間なんてなくて、五、六回目のアラームで起こされる。自分の設定したアラームにイラつきながらも出勤の準備をする。ゴミ収集の仕事は意外と朝が早い。ご飯は適当に済ませて、服を着替える。ハンガーに掛かった服をとった瞬間、服が掛けてあるところの隣の棚にある額縁の写真が落ちた。

「くっそ、割れちまったー」

 朝から憂鬱だ。ふとその写真に目を向ける。三人の男子中学生が笑顔で肩を組んでいる自撮り。俺はあの時のことを全て思い出した。それと同時に強いめまいに襲われた。

 ——あれは何年前なのか、懐かしい。じめじめした暑さと、セミの声。アスファルトの暑さが分かるほどの暑さ。奥の方の道を見ると陽炎という現象で少し波打ってモワモワしている。俺、石川いしかわ 拓人たくと橋田はしだ 春馬はるま田坂たさか 良弥りょうや俺と春馬と良弥の三人は大の付く親友で、毎日一緒に遊んでいた。

「なー、セミって一週間しか生きれないんだってー」

「マジかよー」

「そんな一瞬で死ぬの?」

「でも、土の中で四年ぐらい過ごすらしいよ」

「どんな比率なんだよ、笑」

 会話が鮮明だ。今でも完璧に覚えている。なぜ、セミはすぐ死ぬのか。疑問にも思わなかった。あの時はまだ。


 ——目を覚ますと、白い天井が見えた。「あ、時間!」午前4時18分危ないまだ大丈夫だ。なんならまだ少し余裕がある。外はまだ真っ暗だ。夏なら薄暗くてセミの声がするのに。玄関の扉の前でふと思う。あれ、俺も死ぬ方が良かったのか。まただ、不意にそんなことが思い浮かぶ、このまま向かいのマンションの上から飛び降りれば、、なんて考えが思い浮かんだが、なんとか自分を叱り、仕事に向かう。

 ————————————

 「おい!、、、おい!」

 はっ、

「はやく車進めてくれよー」

「あ、すまんすまん」

 助手席にいるのは俺の同僚、俺はボケッとしていた。仕事に集中しなければ。今は仕事に。でも、今朝の写真が頭から離れない。


 ————————————

 「今日も帰ったら山集合な」

「了解ー!」

 三人の子供の元気な声。

「おい!良弥!」

 キィィィ、バンッ

 何が起きたかわからなかった。学校が終わってワクワクしていた帰り道。じめった夏の空気、夏のアスファルトの感じ、太陽の上り具合。目の前の空を舞う良弥。前を見ていなかった良弥は道路に飛び出し、トラックに轢かれた。周りの大人、沢山の人が駆け寄る。時期に救急車が来て運ばれる良弥。みんなの声、全ての音が遠く聞こえた。何を見てたのかわからない。良弥を見ていたのか、何も見ていなかったのか。何を考えていたのか。良弥の事か、何が起きたか、それともセミの事か。上手く言葉にはできなかった。まず言葉が出なかった。あぁ、吐き気がしてきた。これは車酔いなのか、思い出したせいか。


「ちょっと外の空気吸ってきていい?」

「おう、大丈夫か?青白いぞ顔。」

「多分大丈夫」

 外の空気を全力で吸い込んで、全て吐き出す。ここは俺の生まれ育った場所だ。上の人に3日間も頭を下げ続けて頼み、この地で働くようにお願いした。絶対に、絶対にこの場所で。この田舎の場所でないとできないことがあるからだ。生き返る感じがする。あのトラウマは忘れることはないだろう。この仕事をしてる限りは特に。

 仕事が終わり、十七時、玄関を開ける。薄暗く冷え切った部屋に電気をつける。暖房のリモコンと、テレビのリモコンを慣れた手つきでイジり、颯爽に服を脱いでお風呂に入る。お風呂から出たら、帰りにスーパーで買ったご飯を食べる。これがいつもの生活で、変わることのない生活だ。時々、これでいいのか心配になるけれど、もう諦めはついている。

 

 ——まだ諦めたくなかった。宙を舞う良弥を見てもまだ、病院で別れを告げられた時も。お葬式でお別れをした時も。

 春馬と俺は一週間ぐらいはどんよりしていたが、そこからは元気を取り戻し、また遊ぶようになった。俺は父と母がいない。二人は殺人をしたらしく無期懲役で牢屋にいる。だから親のイメージはだいぶ良くない。俺はおばあちゃんとおじいちゃんの家で育ててもらっている。おばあちゃんとおじいちゃんは優しい。なぜこんな人からあんな人間ができてしまったのか。しかし、俺はこんな親から生まれてきた事をかなり気にしていて、俺もいつか犯罪に手を染めるのかもしれないと、そう感じていた。俺は親が殺人犯という事実を打ち明けたことをは親友の春馬以外には一回もなかった。拓人と春馬の二人は高校になれば別の学校へ行き、いつしか話さなくなっていった。


 ご飯を済ませてお風呂に入る。風呂に入ったらあとは寝るだけだ。アパートに備え付けのベットに体を沈ませる。そのままうとうとして寝てしまった。どうやらだいぶ疲れてたみたいだ。

 ——中学の時、良弥が死んだあと、春馬と拓人はしばらく仲良くしていた。しかし、ある時から春馬は急に俺と会話を交わさなくなった。

「おい春馬!なんで最近そんなに冷たいんだよ」

「お前が死ねば良かったんだよ。良弥じゃなくてお前が。」その声は大きな声でもなく、ただ、ぼそっと力を持って俺にぶつかった。全ての音が遠く感じられた。その後の帰り道でもきっと俺は何も考えていなかった。あんなに信じていた親友からいきなり裏切られた悲しみは大きい。そして、春馬の声がとても頭からから離れなかった。俺は自分が死ねば良いと考え、自殺をしようとした。マンションの上から飛び降りようとした時、マンションの人が止めてギリギリ助かった。その後、父親しかいない春馬は高校に入ってからグレていったらしい。そこからはどんどんグレていって、犯罪を犯すようになった。27歳ぐらいの時に犯行がバレて、そこから五年の懲役。春馬は35歳の時、トラックに引かれ死んだ。ごみ収集車に。その事件はいまだに未解決。犯人は未明のままで事件の様子は何一つ分かってないそうだ。俺は頭が良くなかったので、高校は底辺校。そのまま大学にはいけずに、ニートをしていた。しかし親もいない俺は働くことにした。そう俺はごみ収集の仕事をし始めた。


 ——ジリリリ、ジリリリ

 朝、自分のセットした目覚ましにイライラしながら重い瞼を持ち上げる。なかなかベットから出られないので布団を一気に跳ね飛ばし、一気に起き上がることにした。寒い。これだから冬は嫌である。早朝の冬は寒く、ベッドから出るのはなかなか大変である。外は暗い。夏ならもう薄明るくなり始めているのに。そう夏なら。


 ——八月十三日 午前四時二五分

 眠たいがこの時間に起きると決めたのは自分だ。14歳の拓人はゆっくりと起き上がり汗で少しベタついたベッドから身を起こす。ジャージに着替え、靴を履き、玄関の扉を開ける。

 ビュー、

 夏の早朝の風は心地よい。いつも昼の時間だと暑くて仕方がなくイライラするが、この時間だけは違う。暑かった昼間から一変して夜の静けさとほんの少し光が漏れている朝日の希望。そして何と言ってもこの涼しい風。寒くない、暑くもない、ただただ心地よい。周りにいる人といえば新聞配達とごみ収集の仕事にいく人のみだ。俺はこの夏の早朝の時間が好きであった。未明と呼ぶそうだ。そういえば良弥が死んだあの事故。いや事件か。轢き逃げだ。大変田舎な所であるせいで防犯カメラなんて全くない。この辺には全く。だが、日本の警察を舐めてはいけない。良弥を殺した轢き逃げ犯は今、無期懲役で刑務所にいるらしい。そして良弥を引いたトラックと呼んでいる物は


 ゴミ収集車だったそう。


 冬の寒さの中ご飯を食べ服を着て、家をでる。冷たい風が体に強く吹き付ける。冬の嫌な所二つ目だ。だがこれも四季を感じられて良い。そう感じてきたのは歳をとったからだろうか。いつも通り仕事をこなしていく。


 セミはなぜあんなにも鳴くのか。それは求愛行動であるそう。あんなに必死に。そう子孫を残すために。ずっと土の中にいた生き物が子孫を残すと言う強い使命感によって一、二週間のみ地上に出てきて、散々鳴いたあとに死ぬ。今の俺にはそんな生命に対する強い使命感や意志があるのか。土の中でずっとこもっているだけではないのか。そんなことを考えるのも歳のせいなのだろうか。

 俺はトラックの運転手だ。大親友であった良弥を殺した仕事。そのトラックを運転し乗っていたのは俺の父と母だ。俺の父と母が良弥の命を奪ったのだ。事件はとっくに解決している。俺の父と母は良弥の命を奪ったことで今刑務所にいる。

 いや、、そんなわけないんだ、この事件の犯人は未明。この事件は未解決なんだ。そう信じていた。そう信じないと自分が自分でなくなってしまい、もう次の日に俺はこの世からいなくなっていそうだったからだ。だが、もう歳のせいか現実を受け入れられるようになった。今日もまたゴミ収集の仕事を続ける。春馬が俺といきなり仲良くしなくなったのは、良弥を殺した犯人が俺の父と母と分かったからだ。そんなやつの息子だ。俺が死ねばよかったんだ。今、俺はごみ収集の仕事をしている。犯人が自分の父と母と分かった日からしばらく学校にいかなった俺は勉強なんてできず。学歴がものを言うこの時代ではごみ収集のような底辺職にしか就くことができなかった。学歴書を見せた時の面接官のあの表情をなんど見たことか。思い出すたびにイライラしてくる。俺は今でもごみ収集の仕事を続ける。ゴミ収集車を運転する。運転しながら俺はずっと脳裏に良弥のことを考える。夏のアスファルトの暑さと、それの反対である未明のあの空気。あぁ、心地よい。


 あぁ、春馬の次は誰を殺そうか。

書いてから思ったんですけど、時系列がちょっとわかりにくかったかも知らないです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ