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とある噂話

「――ねぇねぇ、聞いた? 例の事件のこと」


「ああ、あの公爵家のお嬢様が処刑された件でしょう? 十六歳だっけ、まだ若いのにねぇ。……まあ、あんな風に嫉妬に狂って、罪もない人を毒殺しようだなんて、身から出た錆さ。本当、お貴族様っていうのは、外見が綺麗でも中身は何を考えてるか分かったもんじゃないね」


「そう、それそれ! その話に、続きがあるのよ。……あのね、 首が……お嬢様の首が、消えちまったんだってさ!」


「えっ……消えたって、どういうこと?」


「首が落とされたあと、勢い余って人混みのほうまで転がっていったって話だけど、役人が回収しに行ったら、どこにも見当たらなかったそうよ。血の跡はあるのに、首だけが忽然と。不気味だと思わない? 処刑された彼女の怨霊が、自分の首を持ち去ったんじゃないかって噂よ。……きゃあ、怖い!」


「……それなんだけどね。実は、うちの旦那が少し気になることを見てたらしいの」


 一人の女が、周囲を警戒するように見回してから、さらに声を低くした。


「あの日、旦那は広場に面した酒場から見物してたんだけどね。首が落ちて、辺りが大混乱になったその隙に……。黒い修道女のような服を着た女が、何かを大事そうに、まるで赤子でも抱くように胸に抱えて、足早に去っていくのを見たんだって」


「……まさか、それって…」


「さあね。でも、旦那が言うには、修道服の隙間から処刑されたお嬢様と同じ銀色の髪の毛が見えたんですって……!」


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