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マルロック探偵の備忘録 5, 6

【 マルロック探偵の備忘録 5 】


 あの事件にあたって、当時自警団として王宮侍女の遺体回収に立ち会った人物と会うことになった。

 場所は彼から指定されたとある酒場だ。紹介者いわく、彼はあの事件のあとからずっと何かにおびえていて、どうしたのか尋ねても絶対に口を割らないらしい。 

 たった小さな手がかりでも、掴めれば良いのだが。




【 マルロック探偵の備忘録 6 】


 自警団に所属していたというその男は、会うなり場所を変えたいと私に促した。黙ってついて行った先は、街外れにある古い水道局の廃墟だった。「ここなら誰にも聞かれない」男の声は小刻みに震えていた。浮き出た脂汗、深く刻まれた目の下の隈。彼は、得体の知れない何かに底から怯えている。


 周囲を警戒した後、彼はようやく口を開いた。

 あの日、彼は深夜の街を見回っていた。裏通りに入った瞬間、鼻を突く「すえた臭い」がしたという。

 暗がりに目を凝らすと、そこには異様な状態で折り畳まれた女性の遺体があった。


 関節があり得ない方向に曲げられ、無理やり箱に詰め込まれる直前のような姿。目を見開いたまま固まったその表情には、この世のものとは思えぬ恐怖が張り付いていたそうだ。しかし男は、震えながらもこう付け加えた。「それでも、あんなに美しい女は見たことがなかった」と。

 彼は慌てて王国兵に事態を報告した。本来、自警団の職務はそこで終わるはずだった。


 だが翌日、彼は王国兵によって強制的に連行された。そこから始まったのは、報告に対する確認ではなく、まるで犯人扱いするかのような執拗な尋問だった。

「顔は見たか」「何か特徴はあったか」

 嫌な予感がした彼は、咄嗟に「暗くて何も見えなかった」と嘘をついた。


 数時間の拘束を経て解放された後、彼は街で配られていた号外を目にする。

 そこには、昨夜の被害者が「王宮の侍女」であったことが記されていた。だが、記事を読んだ彼の背筋に戦慄が走った。号外に書かれた被害者の身体的特徴や死亡推定時刻は、彼が裏通りで見たあの「折り畳まれた美女」とは、何一つ一致していなかったのだ。


 王宮が、別の遺体を使ってまで事実を上書きしようとしている。

 彼はその夜のうちに自警団を辞め、名を伏せて隠れるように暮らすようになった。


 王宮兵が隠蔽に加担しているのか、あるいは王宮そのものか。

 調査を続けなければならない。


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