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何度だって、あなたに出会う

「わたくしの人生って、一体何だったのかしら――」


 首筋に冷たい金属が触れたかと思うと、鋭い痛みが全身を駆け抜け、視界が真っ白に染まった。そして。


「おはようございます、エレノアお嬢様」


「……え?」


「本日は、午前はいつものように家庭教師との講義、午後はアナスタシア様との乗馬の予定となっております」


「……頭が痛いわ」


「左様でございますか。では、すぐに薬湯を煎じさせましょう」


 呆然と周囲を見渡すと、そこは見慣れたグウィネス公爵家の自室だった。なぜ今、自分はここにいるのか。確か私は、広場の断頭台で――。


「エレノア!」


「お……お母様。おはようございま……」


「頭が痛いと聞いたわ、私のかわいいエレノア。午前の講義はお断りして、ゆっくり休みましょうね」


 扉を勢いよく開けて入ってきた母、アナスタシアは、娘の傍らへ駆け寄ると、震える肩を抱きしめるように優しく撫でた。


「お母様……あ」


 母の腕の中で、エレノアは愛されている実感を噛みしめようとした。しかしその瞬間、肌がざわめき、全身の産毛が逆立つような、形容しがたい悪寒に襲われた。


(……? どうして。お母様はこんなにも優しくて、あたたかいのに)


 言いようのない不気味さを振り払うように、彼女は自分に言い聞かせた。




(きっと、あれは夢。とても長く、恐ろしい夢だったんだわ)


 断片的な記憶しか残っていないが、夢の中の自分は王太子の婚約者として、息の詰まるような多忙な日々に身を投じ、そして最後には――。


「!!ッ痛いっ!」


 突如、首筋に灼熱の杭を打ち込まれたような激痛が走った。


「エレノア、どうしたの!?」


 母の驚く声を背に、エレノアは慌てて首に手を当てた。引き剥がした自分の掌を見ると、そこはどろりとした鮮紅色の血で濡れ、指の隙間から床へ滴り落ちている。


「あ……、あ……っ」


 恐怖に目を見開き、喉を鳴らしてもう一度瞬きをする。


 すると、そこにあるのは、傷一つない、まっさらで白い自分の手だった。床にも血の跡などどこにもない。

 心臓が早鐘を打ち、冷や汗が背中を伝う。


「今のは、一体……」


 震える手でもう一度首に手をやると、そこには傷跡一つない。ただ、ネックレスの鎖のざらつきを感じるだけだった。


(これはお母様の…?)



 それは、エレノアが十三歳の朝のことだった。



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