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シャルロット

 



「――シャルロット殿下! あれは一度きりだと仰ったではないですか! エルドラント王国の黄金の百合であらせられる殿下にもし何かあれば、ただごとでは済まないんですよ!」


 王女の寝室で、一人の若い侍女が悲鳴に近い声を上げた。彼女の手には、先ほどまで王女が纏っていた豪奢な絹のドレスが握られている。


「そんなこと言わないで。あの時だって、上手くいったじゃない! ね、ほんの少し、一の刻ほどでいいのよ。わたくし、たまにはこの壁の外の空気を吸って、息抜きがしたいの。……褒美なら、これをやるわ。ルースの宝石だけど、実家の妹さんの薬代の足しにはなるでしょう?」


 シャルロット王女は、悪戯っぽく微笑みながら侍女の掌に小さな石を握らせた。侍女はその冷たく硬い感触に戸惑い、そして困窮する家族の顔を思い浮かべてしまう。


「……わかりました。では、半刻だけです。その間に必ずお戻りください。行くのは大通りだけにしてくださいね。いいですね、決して路地裏へは……」


「ええ、分かっているわ。あなたは本当にいい子ね!」


 二人は手早く衣服を交換した。王女は地味な侍女の服に身を包み、窓から抜け出していく。残された侍女は、慣れない重いドレスの裾を震える手で握りしめ、主人の帰りを待ち続けた。



 ―だが、その「半刻」が過ぎても、王女が戻ることはなかった。


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