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真実は井戸端に沈む

作者: 秋桜星華

 様々な立場の貴族が寝泊まりする、領主の城。


 そんな策略の巣窟での、縁の下の力持ちたち。


 ――それが、下働きである。



 ◇ ◇ ◇



「ねぇねぇ、上級貴族のベル様、いるじゃない?」


「あぁ、あの、フランク様に懸想している……」


「その方、知ってるわ!」


「で、ベル様がフランク様に手紙を出したらしいわ~。知り合いのメイドが言ってた」


「その二人今どんな感じなん?」


「いや~、でもフランク様は孤児院で”運命の相手にであった”みたいにほざいていたらしいね」


「ほんっとう、ベル様もそんな男のどこがいいのか……」


 井戸にシーツを持ち寄った下働きのおばちゃんたち。もちろん始まるのは、井戸端会議だ。


 ちなみに内容は、もっぱら城で暮らす高位貴族たちの噂話か城の一角にいる猫の話である。


 忙しく手を動かしながら、口も同時に動かす。


 熟練の高等テクニックである。


 今日も明日も、繰り広げられる雑談。


 ちなみにフランク様は恋愛スキャンダルの常連である。



 ◇ ◇ ◇



 その日、国中の貴族が頭を抱えた。


 貴族のなかで一番権力が強い――ともいわれる家の令嬢が失踪したのだ。


 令嬢は皇太子と婚約しており、将来は皇帝の妻としての活躍が期待されていた矢先のことだった。


 もちろん騎士団の先鋭が派遣され、発見した人には高い地位が保証された。


 ――それでも、見つかることはなかった。


 焦った皇帝は、山奥の魔女や路地裏の占い師などにも藁をもつかむ思いで頼ったが、それでも。


 ――やがて皇帝は、皇太子の新たな婚約者を探し始める。


 だが、彼女のような実力を持った令嬢を見つけられることはなく。


 皇帝の苦悩は続く――



 ◇ ◇ ◇



「あの有名なクリスティーナ嬢、いなくなったらしいね」


 いつもどおり、井戸端会議が繰り広げられる。


「それ、うちも聞いたな」


 井戸からたらいで水をくみ、シーツを洗う。


「あ、それ知ってる」


「あ~、クリスティーナ嬢が変装してパン屋の息子と歩いているのみたよ」


「駆け落ちしたんかね」


「そうっぽいね」


「変装してても気づかないとか……」


「髪バッサリ切って、すっぴんだったね。いつも化粧だったからわかりにくいんかな」


「それ貴族に言えばいいんだろうけど――」


「まぁ、言ってもどうせ信じてもらえないからさ」


 今日も明日も、繰り広げられる雑談。


 いつもと変わらない日常。


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― 新着の感想 ―
山奥の魔女や路地裏の占い師 > 変装に負けた!? 「権力」が強い~彼女のような「実力」を持った令嬢 > クリスティーナ嬢は公爵令嬢なだけなのか、それともその上で何らかの実力者なのか…………。まあ、物…
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