蛇足ながら、運命は静かに動き出している As a Side Note, Fate Quietly Begins to Move
試合が終わり、静寂が戻った闘技場。
だがその余韻とは裏腹に、動き出すのは世界のほうだった。
長く続いた小競り合いと衝突の果てに、ようやく――戦は終わる。
各国の代表が集う中央評議の席で、終戦協定への移行が正式に決定された。
勝者の立場に立ったルイたち陣営には、いくつかの条件が提示され、そして通った。
第一
■ ホムンクルスおよびドッペルゲンガー技術を含む、錬金術師たちの基幹知識の提供。
これにより、人工生命体や複製術、擬態技術などの分野で大きな進展が期待される。
特にドッペルゲンガーの“記憶定着型模倣能力”については、戦術的価値が高いとされていた。
第二
■ 超高難度ダンジョンの4国共同探索協定。
エルフ王国、人類連邦、獣人自治区、魔族帝国――四勢力が等しい立場でダンジョンに挑み、
得られる成果・遺産・情報を均等に共有することが取り決められた。
その背後には、ルイの築いた【第一層拠点】と、
彼が組織した《静かなる鎖》の情報網があった。
交渉の裏側で、あらゆる“力の秩序”が再編されつつある。
これは単なる勝利ではない。
次なる世界の“主導権”を決めるための布石――その第一手だった。