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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第一章 堕天の陰陽師、現世に顕現す ―The Fallen Onmyoji Rises―
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第八話「鬼、来たりて告げる──茨木童子」 The Oni Arrives and Proclaims: Ibaraki Dōji

 京都の朝が、いつもよりひんやりとしていた。町中に漂う奇妙な静けさが、人々の本能に微かな不安を刻み込む。


 その日、流威は屋敷の裏庭で式神たちの再召喚と整備を行っていた。


「よし、百目は……まだ完全回復とはいかないか」


 呟いた瞬間、どこからともなく声がした。


「よぉ〜、そこのガキンチョが陰陽の神童ってヤツかい?」


 聞き慣れない訛り、だが妙に愉快そうなその声音。突如として屋敷の屋根の上に現れたのは、身の丈二メートル近い筋骨隆々の男──異形の角と焔のように揺らめく髪。口元には人懐こい笑みを浮かべていた。


「名乗るの忘れてたな。オレ様、茨木童子。ま、覚えといて損はないぜ?」


「……目的は?」


「おう、シンプルだ。テメェと死合いしてぇってだけさ!」


 屈託ない笑みで放たれた言葉に、屋敷の式神たちが一斉に警戒の気を放つ。だが、茨木童子はそれすら楽しんでいる様子だった。


「いいねぇ、いいよいいよ、その顔。殺る気マンマンな顔だ。でもよォ、今ここで潰し合うのも味気ねぇだろ?」


 流威はわずかに目を細める。「何が言いたい」


「オレ様、礼儀は守る主義でな。戦いの準備ってのは、互いに完璧じゃねぇとつまらねぇ。だからさ……」


 茨木童子は屋根から軽やかに降り立ち、土を踏み締めながら近づく。そして、耳元で囁いた。


「一週間後、ここに戻ってくる。その時ゃあ、正真正銘、命懸けの“死合い”だ。安静にして首洗って待ってろや。じゃあな、ガキンチョ」


 言い終えると同時に、彼の姿は風のように消えた。


 残された流威の背中に、誰にも見えない闘志の焔が灯っていた。

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