第八十一話「天使の理と勇者の誇り」The Angel’s Justice and the Hero’s Pride
試合の場に立つと、観客席からの歓声が響き渡る。次の対戦相手は、転生勇者アーサー。前世で数々の戦場を駆け抜けた英雄の魂が宿っているという。
「ランス、君の力を見せてもらおう」
アーサーの声は冷徹で、どこか高圧的だ。だが、その眼差しには確かな自信と誇りが宿っている。
ランスは静かに剣を構える。背中からは白銀の翼が広がり、七つの天使輪が空中に浮かぶ。だが、心の中で冷静に分析を始める。
(相手は転生勇者。前世での経験と知識を持っているだろう。油断はできない)
試合開始の合図とともに、アーサーが一歩踏み出す。その動きは速く、まるで風のようだ。
ランスは直感で反応し、剣を振るう。しかし、アーサーの剣はそれを軽々とかわし、反撃の一撃がランスの肩をかすめる。
「くっ…!」
痛みが走るが、ランスはそれを無視して冷静さを保つ。
(やはり、予想以上の実力だ)
戦闘が続く中、ランスは次第に後手に回り始める。アーサーの攻撃は鋭く、予測が難しい。ランスの天使輪も、アーサーの巧妙な動きに翻弄され、思うように敵を捉えることができない。
「ランス、まだ本気を出さないつもりかい?」
アーサーの挑発が耳に入るが、ランスはそれに動じない。
(前の試合で天使の力を使って神力が足りて無い。しかし、今のままでは勝てない)
ランスは心の中で決意する。
(ならば、もう一歩踏み込むしかない)
ランスは深呼吸をし、心を落ち着ける。そして、天使の力を解放する。背中からはさらに大きな白銀の翼が広がり、七つの輪が光り輝く。
「これが、今の私の本気だ」
ランスの声は静かだが、その眼差しには確固たる決意が宿っている。
アーサーは一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐに冷静さを取り戻す。
「なるほど、しかし、私も負けるわけにはいかない」
戦闘が再開される。ランスの動きは一層鋭くなり、天使輪の軌道も精密に制御される。だが、アーサーもまたその動きを読み、巧妙にかわしながら反撃を繰り出す。
ランスは次第に疲労を感じ始める。天使の力を解放しても、アーサーの実力には及ばない。
(このままでは…)
ランスは最後の力を振り絞り、全てを賭けた一撃を放つ。剣と天使輪が一斉にアーサーに迫る。しかし、アーサーはそれを冷静にかわし、ランスの隙を突いて反撃の一撃を放つ。
「これで終わりだ」
アーサーの剣がランスの胸を貫く。ランスはそのまま膝をつき、地面に倒れ込む。
だが、倒れたランスの目には、まだ諦めの色は見えない。
(まだ…終わっていない)




