第八十話「月光に舞う九尾の封印 真祖ヴァレンティナとの死闘」Seal of the Nine Tails in Moonlight Duel with True Ancestor Valentina
月光の下、闇を纏うヴァレンティナの姿が静かに浮かび上がり、赤いドレスは闇と溶け合いながら真紅の瞳が燐光のように揺らめく。
晴明の九本の尾が暗闇に逆巻き、彼の視線は鋭く彼女を捉えていた。
霧のように素早く、ヴァレンティナは地面を蹴って宙を舞い、鋭い爪が空気を切り裂き影が襲いかかる。
晴明は瞬時に両手で複雑な印を結び、尾が火を纏い狐火が幾度も飛び交い、鋭い炎の矢の如く彼女を射抜くが、その血はたちまち霧散し再生の炎は瞬時に消え去った。
爪が飛び込む瞬間、晴明は尾を振り下ろし、九本の尾が音もなく回転して風圧で爪の軌道を逸らし、尾の先端は鋭い刃のように光ってヴァレンティナの肩口を深く裂いた。
だが彼女は笑いながら、「死を愛する血……これが私の命だ」と告げ、爪が再び宙を走り影が地面を滑るように伸びて鋭い槍となり、自らの血でそれを作り出す。
血の槍「紅蓮の夜」が晴明へ飛来すると、彼は咄嗟に影を操って盾を形成し槍は衝撃と共に粉砕されたが攻撃の連続は止まらない。
九尾の一つが紅蓮の炎を帯びて旋回し彼女の周囲の空気を焼き尽くすと、尾が放つ炎の鞭が彼女の動きを縛り上げる。
彼女は素早く煙の壁を展開し炎を吸収するように変じて消し去った。
「その程度で……終わると思うな」とヴァレンティナが呟くと爪が連続で襲いかかり、晴明は尾を次々に回転させ風の壁となって刃をはじいた。
次の瞬間、彼は片手で札を投げ放ち、雷光を帯びて爆発し地面をえぐるが、ヴァレンティナは壁となって雷光を煙に変えた。
晴明は一歩下がり全ての尾を背後に広げる。九つの尾はそれぞれ異なる元素を宿し輝きを増し、彼の瞳が鋭く光り声を落とすと「九尾大封術――九つの尾、ここに解放」
尾が次々と飛び出し周囲を包んだ。
第一の尾は火焔を纏い彼女の背後から炎の竜巻を巻き起こし、第二の尾は氷の刃となって斬りかかり腕を凍てつかせる。
第三の尾は雷光の鞭として宙を打ち彼女の脚を捕らえ、第四の尾は風の刃と化して高速で斬撃を連打した。
第五の尾は大地の岩塊を砕き彼女の盾を破壊し、第六の尾は霜の爆発を撒き散らして全身を凍らせる。
第七の尾は煙の如く素早く動き隙を狙って急襲し、第八の尾は闇を操って彼女の視界を奪う幻影を展開した。
そして最後の九尾目は光を帯び強力な封印符を結び上げる。
九尾の尾が同時に襲いかかりヴァレンティナは動きを封じられたが、彼女は血を噴き出しながらも冷たい微笑を浮かべる。
晴明は静かに呟き、「死を超えた血に、終焉の紋章を刻む」と九尾の尾は一つに集まり巨大な光の球となって彼女を包み込み、その光は瞬時に爆発して闇と血を浄化した。
月光が戻り静寂が再び降りる中、戦いは終わったが双方の呼吸は荒く、晴明の九尾は静かに揺れ次なる戦いに備えていた。