表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第四章 異界洞穴、開戦の咆哮 ―The War Begins in the Hollow Below―
64/111

第六十二話《牙、咆哮、裂傷の三重奏》

挿絵(By みてみん) 


 炎が空を焼き、斧が地を割り、刃が影から突き立つ。

 四剣の攻勢は止まらない。

 芦屋は肩から血を流しながらも、なお円を描き続けていた。

 その内周を、ランスの二刀が荒々しく直進する。

 斬り、弾き、駆ける。

 だが、まだ足りない。圧が、技が、質量が――一歩届かない。


 その時だった。


 空気が破けるような斬裂音。

 風を裂いて跳び込む影が、一閃。

 レアラの横腹に裂傷が走り、血が飛び散る。


【切り裂きジャッキー】――鮮烈に参戦。


 鋸のような刃を振り回し、喉元を狙い、逆手の短剣で膝裏を切る。

 動きは獣じみて、滑らかで狂気を孕んでいた。


 彼の介入で戦場が揺れる。

 レアラとガウルダが後退し、ランスが一歩前へ。

 ジャッキーは笑いながら敵陣へと飛び込む。

 まるで自分が“戦場の主”かのように。


 攻撃が交差するたびに、芦屋の流れが冴える。

 円を描くたび、敵の攻撃が空を斬り、そこへジャッキーの爪が食い込む。


 空が閃光に染まる。


 ――ズドン。


 地面がえぐれる轟音。

 赤黒い光線が、突如として敵陣の一角をかすめる。


 振り向くと、遥か後方。

 浮かぶのは一つ目の影。

 百目。すでに展開済みだった。


 レーザーが容赦なく地面を貫き、ヴァルハルトの足元を削る。

 避けざるを得ない。そこへジャッキーの斬撃が突き刺さる。


 カリスの影がジャッキーの背後を襲う――


 割って入る、芦屋の脚。

 体を半身にずらし、太極の動きで敵の突きを逸らす。

 そのまま回転しながら反転蹴り。

 勢いのままランスが突進し、斬撃を三連で叩き込む。


 風の裂け目から、白い衣が滑るように現れた。


【晴明】――静かに参戦。


 手には結印された呪符。

 足元に三重の結界陣。

 術はすでに発動中。


 敵の動きが、一瞬止まる。

 空間の“圧”が変わる。

 ジャッキーが一歩退き、ランスが睨むように構えたその時――


 ――雷鳴のような破裂音。


 ルイが、現れた。


 ふわりとした動きから放たれたのは、腕を伸ばした“掌打”。


【発勁】――。


 カリスの身体が軽く跳ね、次の瞬間、地に沈み、動かなくなる。


 誰もが固唾をのむ。


 ルイがそのまま静かに手をかざし、札を一枚、宙に浮かせて叩きつける。

 カリスの身体に貼りつき、淡い光が彼を包み込む。


 札が燃える。

 術式が展開する。


 彼の瞼が、開いた。

 一瞬戸惑うが、その目に宿るのは敵意ではなかった。

 ルイが微笑み、札をもう一枚重ねる。

 そのまま、傷を癒し、再起させる――【テイム完了】。


 戦力は――6対3。

 そして後方支援に百目。


 敵の額に、初めて汗が浮かぶ。


 静寂。


 だが、次の瞬間。

 空間が再び揺れる。


 勝負は、これからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ