表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第一章 堕天の陰陽師、現世に顕現す ―The Fallen Onmyoji Rises―
6/177

第五話「百鬼夜行・黒夜の舞踏、影の王現る」 Hyakki Yagyō: Dark Dance, Shadow King Emerges



「……始まったな」

挿絵(By みてみん)

 京の都に、妖の咆哮が轟いた。

 闇より這い出た獣の群れが、町を蹂躙し、人を喰らう。

 百鬼夜行――千年封じられていた、闇の大行進。


 安倍家の若き後継、安倍流威は、五尾の猫又・墨緋を伴い、群れの只中に躍り出た。


「避難誘導班、左の通りを確保しろ! 子供が残ってる家は俺が行く! ……墨緋、“影縫い”!」


 墨緋の尾が闇を裂き、影の針が四方に飛ぶ。

 暴れる獣を縫い止め、動きを止める。


「式符展開――祓符・壱式『禊祓ノ印』!」


 流威が投げた札が光を放ち、暴れる妖を一閃。

 それと同時に、空中に陣が展開される。


「祓った霊よ、縛りし契約の輪に従い、我が影とならん。

 ――式神転化・零印結界!」

 光が弾け、祓った妖の魂が式神と化す。

 一つ、二つ、三つ……流威の背に並ぶ霊の影は瞬く間に十を超えた。


「お前、契約数の制限どうなってんだ……」

 共に戦う芦屋の若き陰陽師・高階真也が呆れたように言う。


「さあな……でも、まだ“余裕”だ」


 流威の霊力量は、常人の千倍。

 通常三体までが限度とされる式神契約を、彼は数十体単位で行使できる。


 だがその力は、命の軽さと隣り合わせだった。


「ギシァァァ!」


 流威の式神が一体、火焔を吐く妖に貫かれて消滅する。

 だが、流威は顔色一つ変えない。


「祓われても24時間で式神は復活する。次、召喚」


「影より出でて我が敵を討て――式神・刃狼じんろう!」

 影から這い出た狼の式神が再召喚され、即座に反撃。

 一体祓っては式神化し、使い潰す。

 そのスタイルは戦場において絶対的な優位を生んだ。


 ● “百目”降臨――中ボス戦、開幕


挿絵(By みてみん)


「こっちに……来るぞ!」


 一陣の瘴気が吹き抜けた。

 次の瞬間、瓦を踏み砕いて現れたのは、全身に百の眼球を持つ異形の妖怪。


「あのやばいのが……“百目ひゃくめ”か」


 百の目が一斉に流威を睨む。

 そして、胸部中央の巨大な魔眼が開く。


「魔眼“顕呪瞳けんじゅどう”……」

「下がれッ!」


 流威が仲間を下げると同時に、墨緋が影で覆うように構える。


 ゴゴゴゴゴゴゴ――――

 15秒の溜めで魔眼が黒紫の光を帯び、空気が震えだす。

 直撃すれば骨も残らない。


「式神、全展開! 攻撃部隊前衛、防御部隊は陣形維持! “転写陣・雷紋結界”発動!」


 雷光が陣から走り、式神たちが配置に就く。

 一秒、一秒が、永遠のように重い。


「放つ――魔眼砲、“呪滅光線”!」

 閃光。

 一帯が焼け、影が消し飛び、七体の式神が瞬時に崩壊。

 流威の外套も裂け、血が滲む。


「っ……墨緋、影転!」


 墨緋が瞬時に影を纏い、流威を包んで回避。

 地面にクレーターが穿たれる中、流威が立ち上がる。


「――“目”が本体じゃねえ。“眼”こそが心臓だ。そこを穿つ!」


 札を三枚、空に放つ。


「――“祝符・壱ノ零式”

『天眼破・祓覡てんがんは・はらえぎみ』!」

 光の式陣が頭上に展開し、無数の魔眼に霊光が突き刺さる。

 百目が咆哮し、悶える。


「今だ、刃狼! 喉元を!」


 狼が影から跳び、喉を貫く。


「我が名に応え、我が影となれ――式神契約」

 流威の右掌が光り、魔眼が砕け、百目が沈黙した。

 その魂は黒き珠となり、彼の手の中へ。




「中ボス級を一体、祓って契約……マジで規格外だな、お前」


「百目でこの規模、なら“本体”は……」


 遠く、東の空が赤黒く染まる。

 百鬼夜行の真なる核――“夜行主”がまだ姿を見せていない。


「行こう。式神たちを犠牲にするなら、全ては“生き残るため”に」


 五尾の墨緋がうなずき、流威の影がまた一つ長く伸びる。


 そして、京の夜は、さらに深く、狂気に沈んでいく――。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


本作は、「天才陰陽士が、天使の生まれ変わりだったら?」――

そんな、ある夜ふと頭に浮かんだ厨二病全開の妄想から始まりました。


神話、陰陽術、異世界、神界バトル、猫又、百鬼夜行、そして式神たち……。

自分の“好き”を余すところなく詰め込みながら、物語を紡いできました。

この先も、彼の戦いをどうか見届けていただけたら嬉しいです。


そして、もしこの作品を楽しんでいただけたなら――

評価・ブックマークをいただけると、筆者の大きな励みになります!


なお、他の作品も本作のスピンオフとなっており、

百目や神祖マザースライムといったキャラクターのストーリーも展開中です。

さらに、流威が“別作品のチートスキル”でサブキャラとして無双する異色作も連載しています。

試行錯誤の真っ最中ではありますが、ぜひ応援していただけると幸いです。


それでは、また次の物語でお会いしましょう。ありがとうございました!


――筆者より

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
挿絵がいいですね。凄く不気味で好みです。あまり神話などの知識がありませんが話についていけますかね?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ