第五十三話 「交錯する殺意」 Intersecting Kill Intentions
骨の王、パイナッポーンの六本の腕が風を裂く。地面に縦横無尽の裂け目を刻みながら、三つの頭部がそれぞれ異なる呪詛を唱える中、切り裂きジャッキーが鋼糸のような軌跡でナイフを放つ。肩から腰、腰から膝へと、骨の可動部を狙った解体の連撃。
白い骨が砕ける音と同時に、バーナーナーの毒霧が横から迫る。空間が濁り、視界が歪んだその瞬間、黒炎が霧を焼き払うように突き抜けた。アスモデウスの魔印が地に刻まれ、ヒドラ型レイドが首を振り乱し、炎をかき消そうとする。
重なった魔力の圧で空気が振動する。ふたつの式神は、無言のまますれ違い、標的を交換した。
ジャッキーはヒドラの死角へと瞬時に潜り込み、咽喉の下にナイフを差し入れ、螺旋を描くように引き裂いた。一本の首が地面に崩れ落ち、残りの首が暴れ狂う。
アスモデウスは浮かび上がるパイナッポーンの核を読み取り、六つの炎の剣を空間に固定して射出。骨の間接を焼きながら、一撃ずつ確実に関節を破壊していく。
炸裂。着地。連続斬撃。すべてが滑らかに切り替わり、立場を反転させる。
再び、動きが交差した瞬間。黒翼が空気を割り、ジャッキーがバーナーナーの足元から跳ね返される。アスモデウスが毒霧の中心へ滑り込み、残された首を炎で封じる。
すれ違うだけで、意思が通じていた。
地面を転がったジャッキーが骨の王の下半身に跳び付き、二本のナイフを軸に旋回。反動で脚部を切り裂き、崩れた瞬間に頭部の一つを削ぎ落とす。魔素が漏れ、紫色の煙が吹き出す。
アスモデウスの炎は濁った毒の中心を射抜き、ヒドラの最後の一首が咆哮とともに燃え落ちる。
そして再び、スイッチ。誰も指示せずとも。
黒い風が舞い、双刃が光る。
二体の式神は、無音のまま、完璧な戦術で戦場を塗り替えていく。
すれ違うたび、刃が舞い、炎が揺れる。
斬撃と魔術が交差するたび、まるで舞踏のように戦場が彩られる。
視線も言葉も交わさないのに、動きは完璧に揃っていた。
二つの殺意が一つの舞を奏でる、
それは戦いという名の、静かで美しい破壊の舞踏。