第五十二話 「産まれた果実たちの侵攻」 The Invasion of the Born Fruits
地を揺らす怒号とともに、小型レイドBOSSたちが地上を蹂躙し始めていた。
先陣を切るのは“ストロングベリー”。赤黒い筋肉を膨張させ、咆哮一つで周囲のモンスターを率いる知能派のゴブリン型BOSSだ。
だが、それを待ち受けていたのは、百の魔眼を持つ式神——百目だった。
「対象、照準完了——焼却開始」
百の眼球が一斉に輝き、幾重もの魔眼光線が束となってストロングベリーに収束する。
無数の焦げ痕が敵の肉体を刻んだその一瞬、ルイが動いた。
風を切るように手の平を掲げ、指先で転移札を掲げて敵の胸元へと一閃。札が貼りついた瞬間、術式が展開され、ゴブリン型の身体が光に包まれる。
「行ってこい。絶望が待ってるぞ」
ストロングベリーの咆哮が消えると同時に、転移先の一階層へと消え去った。
がら空きとなった空間に、地鳴りが響く。
六つの骨腕と三つの頭——骸骨の王パイナッポーンが、足音一つで辺りを震わせた。
「邪魔だ」
ルイは一歩前に出ると、右足を軸にして半身を捻る。太ももから腰へ、腰から肩へと円運動で力を集束し、その回転を加速させることで、魔力と霊力を手のひらに収束させた。
それを骨の巨体へ叩き込む。
まるで空気を裂くような音とともに、パイナッポーンの胴体が軋んだ。衝撃が内部から炸裂し、骸骨の巨体が吹き飛ばされる。
「ふん……軽いな」
宙を舞う骨を追いかけるように、切り裂きジャッキーが駆け出す。
「俺の出番かァ!骨は炙ると美味いんだぜッ!」
そのまま骸骨の王へ斬撃の嵐が襲いかかる。
だが、敵は三体では終わらない。
残されたもう一体、ヒドラ型のレイドBOSS——バーナーナーが、無数の蛇首を広げながら周囲の魔素を貪るように吸い始めた。
その場に、黒炎が降り立つ。
「……喰らえ、傲慢の焔」
漆黒の翼を広げ、式神アスモデウスが火焔の魔印を刻む。焔の蛇が逆巻き、毒と再生のヒドラと激突する。
ルイは背後に目を向けると、ダンジョンから溢れ出るモンスターの奔流に目を細めた。
「……BOSSは任せた。俺はこっちを片付ける」
瞬時に式神とモンスターに指示を飛ばし、ルイ自身は押し寄せる下級モンスターの殲滅へと動く。大量の召喚式神たちが次々と展開され、霊符が空を舞い、術式が連鎖して火花を上げる。
連続する戦闘は、まさに一つの流れ。
レイドBOSS、そして雑兵へと——戦場全体が、ルイの指揮と力で“制御されている”かのようだった。
そして、その最中でも、彼の視線は——
「……魔素の流れがおかしい。これは……まだ、終わってないな」
さらなる異変の兆しを、確かに捉えていた