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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第四章 異界洞穴、開戦の咆哮 ―The War Begins in the Hollow Below―
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第四十九話 「集う智、巡る策」 Gathered Wisdom, Circulating Strategies

 場所はエルフ王国の神殿都市〈ルミエル〉――王都の中心にそびえる聖樹の根元。

 その地下には代々の王族と賢者たちだけが使用を許された“円卓の間”があった。


 今、そこにはハイエルフの重鎮たち、異世界から転生したルイ王子、そして密かに結成された秘密組織“シークレット・コイル”の代表者たちが集っていた。


 重々しい沈黙の中、ルイがゆっくりと立ち上がり、会議を開く。


「まず初めに――この場に集った皆へ説明する。“シークレット・コイル”は、私が主導して設立した対情報、対諜報、対国家戦略組織だ」


 ルイの言葉に、重鎮の一人が顔をしかめた。


「王子……影の組織を……?」


「必要なことです。私はまだこの世界の“常識”を知らない。ですが、他国の動きが静かであることの裏には、観察、分析、偵察、そして実験――すでに『攻撃』が含まれていた事実があります」


 その言葉と共に、幻影術によって映し出される情報。

 転移トラップ、密偵の記録、そして、各国で確認された“異世界の力を持つ者たち”の存在。


「……この一件で、私の存在は既に“把握”され、“警戒”されている可能性が高い。こちらから仕掛けるつもりはない。だが、備えなければならない」


 場に緊張が走る。


 クラウが前に出て説明を引き継ぐ。


「“シークレット・コイル”は現在、精鋭モンスターたちによる偵察部隊、情報収集班、そしてカウンターインテリジェンス班に分かれています」


 そして、芦屋神祖が後方から一歩進み出る。


「先日、一人の“スパイ”が聖樹を監視しようとした。鷹の目――超遠距離観測を可能とする上級偵察スキルを持っていたが、私の結界により捕縛済み」


「尋問と同時に、“テイム”によって情報を封じ、別ルートの偽情報を流しておきました」


 ハイエルフたちがどよめく。


「まさか、人をテイムできるなど……」


「理性ある相手は容易ではありませんが、条件さえ満たせば可能です。捕縛、気絶、もしくは強制睡眠。あとはダンジョンアクセサリーが提供する“拡張テイム”スキルで」


 ルイが静かに頷いた。


「……我々はこれより、情報と“影”の力でこの国を守ります。戦うのではなく、“備える”。それが、私が世界と向き合う方法です」


 それは――“力”を誇示するのではなく、“知”と“策”で世界に睨みを効かせる宣言だった。


 やがて会議は、今後の他国の動きと、その対応策へと移っていく。


 ・中央帝国への報復案の是非

 ・転移術式の逆解析

 ・テイム済みスパイの活用法と流言操作

 ・各国に潜む転生勇者や魔王候補の調査強化


 そして、円卓の中心に立つルイが静かに言い放つ。


「“表”は精霊と共に。

 “裏”は影と共に。

 いずれ来る戦乱に、備えておく必要がある」


 聖樹の光が、少年の背に降り注いでいた。

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