第三十三話「十五歳の門出」 The Fifteenth Year’s Departure
エルフ国の王都、学術都市〈セリュンティア〉。
双子の王子——ルイとランスは、この地で12歳から15歳までの歳月を過ごした。
王族の子弟に課される厳格な学業と鍛錬の日々。
剣術、精霊魔法、治癒魔法、政治学、歴史、戦略論。
すべての科目で二人は首席の座を争い、常に周囲の期待以上の成果を上げていった。
特にルイは、テイム技能と精霊魔法の融合分野で天才と呼ばれ、
ランスは剣技と実戦魔術の分野で他の追随を許さなかった。
街ではすでに「未来の守護王たち」と称されるほど、
二人の実力と才能は王都でも知らぬ者がいないほどだった。
——そして、ついに迎えた十五歳の誕生日。
それはエルフ国において、「成人」として扱われる重要な節目でもあった。
この日から、王族であれど正式にダンジョンへの挑戦資格が与えられる。
二人は王国が管理する中規模ダンジョン《翠風の迷宮》へ挑むことになる。
同行するのは、王都学園から選抜された同級生たち——
サリア=フローレンス:精霊治癒に優れる少女。ルイの精霊親和力に惹かれている。
ゼクス=アグナス:重装騎士志望。ランスに兄のように付き従う。
メリナ=スプーナ:トリッキーな弓術を使う頭脳派。ルイとはよく張り合う。
5人編成で、初の本格探索が幕を開ける。
【ダンジョン探索】
入口で受け取ったのは、それぞれの魂と適性に合わせて発現するダンジョンアクセサリー。
ルイは銀色の耳飾り、ランスは黒曜石の指輪が浮かび上がった。
ダンジョン内は薄暗いが、精霊の加護を得たルイの魔力が明かりとなり、視界はクリア。
敵は主に魔狼、土ゴーレム、小型インプなどの初級魔物。
だが、5人の連携は見事だった。
ランスが前衛を張り、ゼクスが左右を守る。
メリナの矢が影から刺さり、サリアの回復が仲間を支え、
ルイが召喚した小型精霊獣たちが敵を撹乱し、魔法で仕留める。
戦闘を重ねるたびに、ルイの耳飾りからアナウンスが響く。
「《風刃》の発動により、風属性スキルを習得しました」
「《精霊連携・小型》スキルを取得」
「魔石吸収により、ランクが D → C に上昇しました」
仲間たちのアクセサリーもまた、徐々に反応を見せ始めていた。
休憩中、ランスがルイに笑いかけた。
「……悪くないスタートだな、初陣にしては。」
「うん、でも……この程度なら、もっと先まで行けそうだよ?」
——無邪気に笑うルイの背に、風と精霊が舞っていた。
まだ彼らは知らない。
この先、ダンジョンの奥には「予期せぬ変異」が潜んでいることを——。