表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第一章 堕天の陰陽師、現世に顕現す ―The Fallen Onmyoji Rises―
29/177

第二十八話「冥府の裁き」 Judgment of the Underworld

 闇が落ちたかのような重苦しい気配が、京都の空を覆った。突如として現れた死神は、喪服のように黒い外套をまとい、目の奥には永劫の死の静けさが宿っていた。その視線が安倍流威に向けられた瞬間、空気が裂け、地面が軋んだ。


「……寿命を歪めし者よ。その命、返上してもらう。」


 ただの言葉。しかし、それは宣告だった。無慈悲な運命の執行者――死神の口から紡がれたそれは、術すら打ち消す絶対の呪詛。


 先に動いたのは晴明・九尾。融合によって大幅に力を増した彼が炎の尾を広げ、死神に突撃する。しかしその炎が死神の鎌に触れた瞬間、まるで霧のように霊力が消し飛んだ。


「霊的な力は、死を前に意味を成さぬ。」


 その一言と同時に鎌が振り下ろされ、九尾・晴明の身体は空を裂きながら吹き飛ぶ。直後に茨木童子が音速の斬撃で割って入るが、鎌の反動を受け、地面に叩きつけられ地割れを起こす。百目のレーザーが死神を狙うが、鎌を一閃するだけで屈折し、斜めに逸れた光が空に消えた。


「見てろよ……!」


 流威が叫び、今までにない規模の式神を一挙に召喚する。四尾の狐火、酒呑童子の狂乱、カラカッサと一反木綿までもが参戦し、全方向から死神へ猛攻を加える。


 それでも――圧倒的だった。


 酒呑童子の四本の腕が一斉に振るわれても、死神は一歩も動かずその全てを鎌で裁いた。一反木綿が空から縛りつけにかかるも、その鎌が空を割ると共に、次の瞬間には裂け目から奈落の手が這い出し、布の身体を引きちぎる。


 流威は死神の動きを読みながら霊式を組もうとするが、術式そのものが完成する前に鎌の気配が届く。身を守るために百目を盾にし、辛くも回避するが、代わりに百目の上半身が吹き飛び、破壊される。


「ッ、霊式、発動ッ!」


 最後の望みを託し、流威は切り札の一つ――魂を削って発動する式術を強行発動する。場に巨大な封印陣が展開され、死神の動きを一瞬だけ止めることに成功する。


 その瞬間、晴明が復活させた九尾の霊炎が渦を巻き、死神を包み込もうとする。しかし、死神の鎌が軽く動いた。それだけで霊炎は逆巻く風にかき消され、次に振るわれた鎌の一撃は、晴明の身体を真っ二つにした。


「まだ、だ……!」


 流威は立ち上がり、両手を血で染めながら再び式を組む。ランスロットが横から援護に入るが、死神の気配を受けた瞬間、ガブリエルの憑依が一時解除され、ランスロットの動きが鈍る。


 死神が語る。


「死は等しく訪れる。お前のように死を弄ぶ者には、その報いを。」


 そして――死神が流威に向かって歩き出す。


 全員が動けない。死神の気配が空間を圧迫し、言葉も術も通じぬ“絶対”がただ迫ってくる。


「来るな……まだ、終わってないんだ……!」


 流威は震える手で最後の式を描く。背後で砕けた式神たちの破片が風に舞い、彼の霊力と混ざり合い一つの陣を形成する。


「晴明……力を貸せ……!」


 魂が共鳴する。九尾と融合した晴明の魂が、最後の力を振り絞り流威の式に応える。空に巨大な狐火の紋が描かれ――しかしそれが放たれる前に、死神の鎌が動いた。


 その光すら斬り裂いた。


 全てが無に帰す。


 そして幕は、落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ