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神の余興により堕とされた異端の翼、その者、異界にて覚醒し神すら恐れる陰陽術を操る  作者: アマ研
第六章 四国同盟、闇洞突破戦 — Shikoku Alliance: Dark Hollow Breakthrough
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第百六十八話「地獄の門は開かれた」Gate to Hell Unleashed

 翠風の迷宮――第四十四階層。

 ついに“無限湧き”が本格的に始動した。


 次から次へと、魔力を帯びたモンスターと精霊たちが湧き出す。

 それを迎え撃つは、わずかに残された者たち――アシュラとナナシのふたり。


 地獄の底が開く前に、できるだけ戦力を揃えなければならない。

 アシュラは最初に湧いたモンスターの群れを見据え、ニヤリと笑った。


「ほぉ……お前ら、ええ面しとるやないか。悪ぃが――ウチの兵隊になってもらうで」


 低く、だが威圧感のこもった声で命じるように言い放つと、

 彼の体から放たれる魔力と威圧が、モンスターたちの心核を一瞬でねじ伏せた。


 叫ぶことも、抵抗することもできず、

 牙をむいていたはずの魔物たちは、次第にその動きを止め、アシュラの周囲へと集まる。


「下に……ヤバいのが来る。共通の敵や、なぁ?」


 アシュラの言葉が響くと、まるで理解したように、モンスターたちは咆哮を上げた。

 怒りの矛先は――地下に控える“神界の軍勢”へと向けられた。


 そのとき、ダンジョン全体に霊気の奔流が走った。


 湧き出す精霊たちが、周囲の魔力を巻き込みながら変化を始める。


 最初はただの光の塊。だが、次第に同族の精霊同士で融合し、

 ヒューマノイドのような知的な“精霊の戦士”たちへと姿を変えていく。


 まるでダンジョンそのものが、意思を持ったかのように――。


 その中央、巨大な風の精霊体が姿を現した。

 その声はどこか誇り高く、響き渡るように言葉を紡ぐ。


「本来なら我らは、ここに挑む者を試す“守護”の存在。だが――」


 風が唸る。


「今は非常時。我らが導き、下の“無礼者”どもに……ダンジョンの作法を叩き込んでやろう」


 その言葉と同時に、精霊の戦士たちは列をなして動き出す。

 無限に湧く仲間たちと共に、\*\*階層を下る“逆侵攻”\*\*を始めたのだ。


「……ふん、話が早うて助かるわ」

 アシュラは腕を組んだまま呟く。


 これで、“下”からの襲撃に対する盾が一枚できた。

 ただの足止めに過ぎないかもしれないが、それでも生存率は確実に上がった。


 その横では、ナナシが静かに動いていた。


「……ふー、ん……来い」


 ナナシが手を掲げると、火の精霊たち――

 特に**サラマンダー系のトカゲ型精霊**たちが彼の周囲に集まってくる。


 その相性は抜群だった。


 肉体派の彼と、火と爪を備えた精霊獣たちは、まるで旧知のように融合していく。


「……あぁ……熱ぃな。悪くねぇ」


 ナナシの肉体がうっすらと赤く輝き、爪先には火の刻印が浮かび上がった。

 霊力との融合によって、彼の戦闘能力は一段階――いや二段階ほど跳ね上がっている。


「よし……後は……出たとこ、勝負だな」


 そのとき、階段下から**重く、湿った気配**が迫ってくる。


 地面が震え、空気が唸る。


 次の瞬間――。


「グゥオオオォォオオン!!!」


 階段を蹴破るようにして、\*\*三頭の“地獄の門番”\*\*が姿を現した。


 巨大な角を持つ獣、岩のような筋肉を持つ猿、鎖に繋がれた多頭の犬。

 いずれも、冥界の入口を守る古の怪物たちだ。


 だが、すでに体には傷が刻まれていた。


「……へぇ、無限湧きの精霊ども……傷くらいはつけたんか」


 アシュラは目を細める。

 確かに深手ではない。だが――“効いてはいる”。


「ちぃとだけ希望見えたな。……やるぞ、ナナシ」


 ナナシは短くうなずく。


「……あぁ……こっから、だ」


 そして――


 **戦闘が始まる。**


 アシュラの拳が、ナナシの爪が、精霊の軍勢と共に“地獄の番犬”に突き立てられる。

 これはもう、“迎撃”ではない。

 これは――反撃の狼煙。


 地獄の門は、開かれた。

 だがその門を越えさせるかどうかは、彼ら次第だ。


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