第百五十四話 「神核の誕生」 The Genesis Core
**打つ。**
掌底が空を裂き、重く鈍い衝撃が走る。
**打つ。**
踏み込みと同時に拳をねじ込む。
その質量は十分――だが、巨躯はわずかに揺れただけだった。
**打つ。**
回避を封じる絶妙な間合いからの膝蹴り。
狙いは定まっている。それでも、核心には届かない。
沈黙の中、ルイは小さく息を吐いた。
「……しぶといな〜〜。マジで無理かもしんねぇ。」
肩越しに流れる汗。
焦りではない。ただ、見極めの時間が来たという感覚。
足元に力を込める。
そこから生まれた螺旋のような回転が、身体を貫いて駆け上がる。
脚のひねりは腰へ。
腰の捻転が肩を導き――最終的に、腕へと連動していく。
その動きは無駄がなかった。
理屈も意識も超えた、極限まで磨かれた“型”。
本能が導く、破壊の完成形。
掌が、開かれる。
すべての回転エネルギーが、そこに**一点収束**した。
身体中の力が、静かに、だが絶対的な確信を持って集まる。
そして――
**掌底が、放たれた。**
一瞬、世界が凪ぐ。
風が止まり、音が消え、時間が沈黙する。
次の瞬間。
**相手の全身が、光を放った。**
内からあふれ出すような、圧倒的な輝き。
骨を透かし、血肉を貫き、存在そのものが明滅する。
それは――**核に触れた証。**
一撃。
正確無比な、到達。
光はしばらくそのまま持続し、やがて、静かに消えていった。
ルイは掌を下ろし、眉をひそめながら低くつぶやく。
「……マジか。テイムして嬉しかったの、人生で初めてかもな。」
それが、**十九回目の打撃。**
いつもなら、一撃。
遅くとも、二撃で終わるはずだった。
これほど深く潜る相手に出会ったのは、初めてだ。
だが、確かに感じる。
手応え。核心への接触。そして――
**従属の気配。**
かすかに笑みを浮かべながら、ルイは静かに身構える。
光の余韻がまだ残る中、
その存在は、確かに――**意志を屈服させられつつあった。**




