第百五十二話 「響天の奏者」 The Celestial Virtuoso
魔道書の中に溜め込まれた素材は豊富だった。
ポンタポイントを駆使し、神器の材料に足る資源を揃える。
そして、ついに――
南無三、一つ目小僧、ハーメルン。
三者の融合が始まる。
***
融合の瞬間、空間が軋み、魔力の奔流が巻き起こる。
彼らの自我は混ざり合うが、決して消滅するわけではない。
すべてが統合され、一つの意識として昇華されていく。
そして、新たなる存在が誕生した。
「……性別は女性タイプのようだな」
その姿は、まるで楽団の指揮者――だが、それだけではない。
神器として具現化したその武器は、多彩な楽器へと変化する。
バイオリン、エレキギター、フルート――すべての音の支配者。
さらに、指揮棒は瞬時にレイピアへと姿を変え、まるで舞うような剣戟を描く。
「調律完了……まずは、最初の一音を」
彼女が音を奏でる。
次の瞬間――
**アルゴネメシスが吹き飛んだ。**
***
同時に、ルイたちは異常なバフを受ける。
**「全ステータス5倍、持続時間30分」**
「……これは、流石にチートすぎる」
音の魔力による影響は、敵を吹き飛ばすだけでなく、戦場全体の流れを支配する。
攻防一体――まさしく究極の補助能力。
「今は、エレキギター形態……ヘッドバンキングしながら弾く!」
音の衝撃が空間を切り裂き、旋律の波動が敵を飲み込んでいく。
アルゴネメシスの腕が千切れ、脚も砕け落ちる。
「……再生能力が効いていない?」
深淵の怪物ですら、彼女の音の力の前では法則が崩壊する。
「流石に、準備中にいきなり攻撃するのは失礼かもしれんが……」
だが――
そんなの知らん。
ルイは確認するために、今までにないほど脚を回転させ、発勁を打ち込んだ。
その一撃が、戦場に新たな波紋を生む――。




