第百三十八話 「神破進化」 Divine Overload
深淵。
ここはダンジョン最終領域。光も音も思考も、神域の圧力に浸され、通常の因果すら揺らぎ始めていた。
連戦に連戦を重ね、血と魔力と意志が交錯する。
その中で、選ばれし者たちは“神”へと至りつつあった。
***
「見える。……神の輪郭が」
ルイの声が低く落ちる。
六翼が展開し、光輪と黒き尾が同時に揺れる。
背後に現れたのは、彼の影から生まれた、もう一人の黒き自我。
完全同化したマタタビの力が、彼に“影主”をもたらした。
「**天魔大天使**」
その瞬間、ルイの周囲にいたモンスターたちの心臓が**同時に破裂した**。
恐怖に意識が追いつく前に、全てが塵に変わる。
***
芦屋神祖が静かに笑みを浮かべる。
「ほうら……見てみぃ。ワシの粘性が、星になったわ」
かつてのスライム体が剥がれ落ち、代わりに現れたのは、星光を帯びた**神粘核体**。
名は――**変生の粘神**。
* 概念捕食:敵スキルを物理的に“喰らい”習得
* 群知融合:あらゆる思考を即時並列処理
* 領域自己増殖:神粘核が自律的に世界構造を侵食
彼の存在はもはや“神”を超え、宇宙の深層情報に指をかけ始めていた。
***
「ククッ……アカン……アカンて……!」
ドーマンが狂気と歓喜の間で肩を震わせた。
吠えるように叫ぶ。
「先に神になられちゃあ、オレが見劣りするだろ!!」
その叫びに、芦屋神祖の神核が応える。
二者の融合――霊魂レベルでの統合が始まる。
「オレ様も共に……神を超える!!」
融合完了。現れたのは――
**魔禍螺旋**、その正体は新たなる破壊神。
* 神格融合スキル《否定の泡》:存在そのものを“キャンセル”する泡を撒き散らす
* 世界構造そのものに“殺意”を反映させる
ドーマンは笑う。自分がようやく“神の土俵”に立てたことを。
***
黒髪をなびかせ、三つ目が常時展開された十尾晴明。全身が輝き
尾は十二尾へ進化。黒髪は白髪に
掌に封じられた呪文核が脈動を始める。
「この術理で、神界さえも編み直してみせよう」
進化後の名は――**神晴明**。
* 術式構築速度:1,200式/秒
* 結界解析:3次元空間と並列展開で同時制御
* 応用:時間断絶・星霊召喚・因果遮断
「理を凌駕した術……これが、“陰陽神”」
その言葉と同時に、空間ごと一層が別の位相へと切断された。神晴明の“世界”に置き換えられる。
***
そんな神々の進化を目の当たりにしながら、ルイは微笑む。
「……俺だけ、まだ一段下か」
六翼を広げたその姿は、確かに**大天使格**。
神ではないが、それでも確信がある。
「ハデスぐらいなら、もう普通に倒せるな」
魔道書は完全にダンジョン構造とリンク。
アイテム生成率・敵の出現パターン・魔力の循環すら制御下にある。
ルイは、ダンジョンそのものの“管理者”になりかけていた。
* 経験値取得ボーナス+500%
* スキル習得率+900%
* 戦闘演算領域展開中
もはや“成長”という言葉では足りない。
これは進化ではない――**運命の破壊と再定義**。
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一方、ポンタはついに九尾へと到達。
同時にスキル《ポンタポイント》を覚醒。
* 還元率50%:取得経験値の半分を仲間に分配
* モンスターを「ポイント素材」として変換可能
* 実際にネット通販で「聖剣デュランダル」を注文お取り寄せ
「……うん、わけわからんけど強いってことだね」
ぽんぽんと尾を揺らしながら、ポンタが意味不明なまま暴れていた。
***
一つ目小僧と南無三も、ある“気配”に触れ始めていた。
「ひょっとして……合体すれば、神格、届くかもだもん」
ルイが静かにうなずいた。
「可能性はある。だが、決めるのは――お前たち自身だ」
南無三は拳を握る。
ルイもそれを肯定するように目を細めた。
「神になる覚悟は、戦いの中にしかない。……選べ、お前たちの未来を」
***
「さあ――始めるぞ」
六翼を震わせ、ルイが魔道書を大きく広げる。
全階層の地図が瞬時に描き出され、ボスと資源が標的として浮かび上がる。
「まずはダンジョンを“刈り取る”」
「そして次は――神々だ」
六翼の背に黒き影、神晴明とゴッドスライム、ポンタ、一つ目小僧、南無三。
この瞬間、\*\*新たなる神殺しの群れ《ディバイン・スレイヤーズ》\*\*が静かに歩き出した。
その先には、封印された堕天の王――
父・ルシファーの救出という、最後の“神の檻”が待っている。




